【日立製作所】第9弾 : <事例>薬王堂 流通BMSの導入で、災害に強いEDIが実現

株式会社 薬王堂
管理本部
業務システム部 部長
坂本 篤氏

 

 東北を中心に142店舗を展開し、地域の健康で心豊かな生活の創造をめざすドラッグストアチェーンの薬王堂。これまで取引の98%をJCA手順でEDI化していましたが、老朽化が進んだネットワークの脆弱性が不安材料でした。そして薬王堂は、システム刷新と同時に流通BMSへの移行を決断。そのパートナーに日立を選びました。途中、震災で計画は遅れたものの2011年7月にカットオーバー。物流センターおよび取引先における業務の効率化、伝票レスのいっそうの強化、本部財務業務の軽減、そして災害に対するシステムの高い信頼性を手に入れました。

 


導入前の課題

1.大きな取引先では通信時間が約1時間30分もかかり、業務改善のネックだった。

2.取引の98%をJCA手順でEDI化していたが、脆弱なネットワークが不安。

3.JCA手順では店舗直送納品の紙伝票が根絶できず、煩雑な手作業が残っていた。

 

導入後の効果

1.通信時間が約1分と大幅に短縮され、物流センターも取引先も効率化を推進。

2.アナログ電話回線からインターネットへの移行により災害に強いEDIが実現。

3.流通BMSにより店舗直送納品の伝票レス化を実現。紙伝票をほぼ根絶できた。

 

 

株式会社 薬王堂
本社:岩手県紫波郡矢巾町大字広宮沢第3地割242番地1
資本金:7億9,930万円(平成24年2月末)
店舗数:142店舗(平成24年8月末 現在)
従業員数:1,401名(平成24年2月末 現在)
※パート・アルバイト8時間換算
ホームページ: http://www.yakuodo.co.jp/

 


「REDISuite」による流通BMS導入の経緯

 

●東北のドラッグストアチェーンを牽引する薬王堂

 創業1978年。東北におけるドラッグストアチェーンの草分けとして、岩手県を中心に東北5県に142店舗を展開する薬王堂は2012年で創業35周年を迎えました。

「ここまで着実に成長を続けてこられたのは『お客さまに喜んで戴ける店を作ろう』という経営理念を社員一人ひとりが地道に実践してきた結果だと自負しています」と語るのは、管理本部 業務システム部 部長の坂本篤氏。

 

 しかし薬王堂は、数年前からある不安を抱えながら店舗を運営していました。
「弊社は2000年のJCA手順の導入以来、取引額ベースで98%のEDI化を実現していました。しかし、年を経てネットワーク機器の老朽化が進み、刷新を図りたいと思っていました。その間、次世代を担うEDIがいくつか出ましたが、普及が進まずなかなか本命が見えてきません。日々通信障害を恐れる中、日立さんから流通BMS移行の提案をいただきました」。
 EDI:Electronic Data Interchange

 


流通BMSが通信時間の短縮とネットワークの信頼性向上、業務効率化を実現


●約1時間30分の通信時間が約1分に

 薬王堂は2009年、日立EDIトータルソリューション「REDISuite」による流通BMS移行プロジェクトをスタート。臨機応変に融通が利く点やコスト面を考えて、自社内へのシステム構築に着手します。そして2011年7月、ついにカットオーバー。当面は4社の取引先からスタートし、2013年2月までには取引額ベースで約80%にあたる32社に拡大します。

 「旧手順との一番大きな違いは、通信時間です」と坂本氏。

 

大手の取引先においては、1時間30分ほどかかっていた通信時間が約1分と大幅に短縮されました。流通BMSは発注データ作成完了と同時に相手先へデータが到着するので、相手先では発注データ着信を待つ必要が無くなり、システム稼働開始とほぼ同時にピッキングをスタート。物流センターへの着荷の前倒しも可能になりました。

「取引先さまからは大きな効率化を実現できましたとおっしゃっていただいています。物流センターのスケジューリングも、これでいっそうの改善が可能になります」。

 

●震災で高信頼ネットワークの重要性を痛感

 当初のカットオーバーの予定は2011年の3月。システム構築の詰めの最中、東日本大震災が発生します。

「11店舗が営業を停止。高田店は津波で跡形もなくなってしまいました」。

しかし薬王堂は、電気が止まり道路も寸断された中、震災の翌日からなんとか品物を集めて地域のために店を開きます。

「いつ、いかなる時でもお客さまのために店を開けなければならない。これは現場の人間の身にしみついていることですから」と坂本氏。

そして、電気の復旧とともにインターネットも回復し始めます。

「おおよそ1週間から10日でほぼ全店舗とインターネットでやりとりできるようになりました。この後かなり遅れてアナログ電話回線が復旧します。インターネットベースの流通BMSへの移行は、BCPの面でも正解だと感じました」。

BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)

 

●本部業務の軽減をきめ細かく支援

 流通BMSの導入は本部の業務にも改善をもたらしています。

「これまでJCA手順で伝票レス化を進めてきましたが、物流センターを通過せずにメーカーから直接店舗に納品される分については紙伝票をなくせませんでした」。

ところが、流通BMSなら店舗直送納品についても対応でき、これで紙伝票をほぼ根絶。

また、財務業務の大幅な効率化にも流通BMSは貢献しています。JCA手順では決済の都度、取引先からの請求データと計上データとの照合作業が発生していました。

「これにはかなりの人手を割いていましたが、流通BMSなら請求データは不要ですので、本部は手間のかかる照合作業から解放されます。取引先さまからも請求データを出す手間が省けるのはありがたいという言葉をいただいています」。

 

 

薬王堂の将来展望と日立のサポート


●今後、薬王堂にITが果たす役割

薬王堂の店舗には主力の医薬品、化粧品、日用品の他に加工食品、生鮮食品、下着やスリッパ、さらに電化製品まで並びます。ラインロビングの変化が著しいドラッグストアには、流通BMSはよりスムーズに商品を取り込むために重要な道具です。

「地域の声に応えて取扱品群は確実に広がっています。今後、流通BMSが業界にさらに浸透すれば、いままで持ち得なかったカテゴリーの導入もさらに容易になるでしょう」。

そして、地域の声にもっときめ細かく応えるために、薬王堂ではビッグデータ活用への取り組みを具体的にスタートさせました。

「これまで蓄積していただけの膨大なジャーナルを、現在データベース化しています。そこにお客さま情報をひもづけて、いつ、どういうサービスを提供すればお客さまに喜んでいただけるのか『見える化』できる仕組みづくりへ動き始めました」。

薬王堂のビッグデータ活用も日立が全力でサポートしています。

ラインロビング:特定の商品カテゴリーへの絞り込みにより専門性を高める商品戦略

 

●なぜ日立をパートナーに選んだのか

薬王堂は、流通BMS導入のパートナーになぜ日立を選んだのでしょうか。

「日立さんは流通BMS協議会のメンバーとして実証段階から参画されており、豊富なノウハウを蓄積されています。実際に先進的な事例をいくつも実現なさっていますので、とても心強いパートナーです」。

続けて坂本氏は、「震災という想定外のトラブルがあったものの、大きな問題もなくスムーズに移行できたのは日立のおかげ」とも。

「それに加えて、以前からのお付き合いをとおして正直に言いたいことを言い合える関係であったということも大きいですね」と坂本氏は語ってくださいました。

今後も流通BMS拡大を推進し、100%対応をめざす薬王堂。日立もそれに応えて、さらにきめ細かく支援していきます。

 

 

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