【日立製作所】 第8弾 : 流通BMSの価値を最大化する流通・物流ソリューション

株式会社日立製作所
産業・流通システム事業部
流通システム本部
第二システム部
チーフプロジェクトマネージャー
大木昇 氏


 いよいよ本格的な普及段階に突入した流通BMS。日立製作所は、経済産業省の主導による流通BMS策定プロジェクトに実証段階から参画し、流通BMSの価値を最大化するノウハウを蓄積してきた。そして現在、EDIソリューション「REDISuite(レディスイート)」を始めとするソリューション群を多数用意し、小売業・卸売業の業務をワンストップで支援している。そこで今回は小売業本部、店舗、物流、卸売業それぞれの業務に変革をもたらす日立製作所の流通・物流ソリューションについて紹介する。

 

 

 

多入実績と膨大なノウハウを元に、適切なソリューションを提供

 

 流通BMSを導入するメリットのひとつに、業務プロセスとデータ形式の標準化がある。これによって流通事業者は、個別仕様に対応する必要がなくなり、業務の効率化やコスト削減が一気に進む。インフラの共有化によって、小売業はサービスや接客など本来の業務に専念できるというのが流通BMSの考え方だ。同社では、こうした小売業独自の販売戦略を支援するために、数多くのソリューションを提供している。同社産業・流通システム事業部の大木昇氏は「小売業向けシステムの開発と導入支援を通して蓄積してきた膨大なノウハウを持つ日立なら、個々の事業者の強みにマッチしたソリューションを柔軟に提供できます」と強調する。

 同社の特徴的な流通・物流ソリューションを本部、店舗、卸・物流の3つの視点で見ていく。

 


小売業の本部事務を「量販店向けMDテンプレート」と「マートレス分析」で支援

 

 まず、小売業の本部業務を考えてみよう。流通BMSでデータの標準化が行われると、商品マスター登録の効率化が進む。同社の日立トータルEDIソリューション「REDISuite」を使えば、膨大なデータの取り込みもワンクリックで済むため、Microsoft Excel®データを手作業で取り込むといった作業からも解放される。

 

 しかし、標準化だけでは多くの小売業が課題としている「MD精度」までは解決できない。どれだけ内部で精度の向上を図ったとしても、新人バイヤーと百戦錬磨のベテランバイヤーでは発注精度にばらつきが出るのは明らかだ。同社はこうした課題を解決するために、独自のソリューションとして「量販店向けMDテンプレート」を提供している。このMDテンプレートは、業界のノウハウを集約したMDの業務フローを30種類以上用意。利用者は、あらかじめ用意された業務フローに機能を追加したり、削除したりしながら、自社の戦略にあった業務フローを短時間に構築できる。

 

 「例えば企画特売業務の場合でも、商品マスターを取り込んだ後、商品計画、在庫情報、前年実績、販売予測などを参照しながら、発注数を決定するだけ。担当者の経験やノウハウの差で起こるMD精度のばらつきは、大幅に小さくなります」(大木氏)

 

 次の問題が大量データの分析だ。小売業の本部では店舗単位の売上を日々チェックしているが、複数店舗を抱えている小売業の場合、膨大なデータの分析には長い時間がかかる。例えば、時間帯別に店舗ごとの売上実績を見たい場合、従来は膨大なPOSデータの分析に一晩かかるため、結果が分かるのは翌日だった。しかし、情報戦略が求められる現在では1日のタイムラグが命取りになりかねない。こんな悩みには同社の情報活用ソリューション「マートレス分析」が有効だ。マートレス分析を使えば翌日まで待たなくても、時間帯別の軸を分析者が自由に追加してリアルタイムにドリルダウン分析を行うことができる。その日の売上実績を詳細に分析し、翌日の発注量を調整することで、販売機会損失の防止が実現するというわけだ。大木氏は「マートレス分析は、日立の高速DB検索技術を駆使したソリューションです。ビッグデータの活用が生き残りのカギとなる中、お客様の会員情報や購入履歴などを活用し、よりアクティブな販売戦略を打ち出すことができます。実店舗だけでなく、インターネット店舗の情報も合わせて分析できるので、販促効果を高めるアプローチとしても有効です」と強調する。

 


小売業の店舗業務を「タブレット生鮮発注システム」で効率化

 

 次に店舗のオペレーションを考えてみよう。流通BMSでは09年に標準化の対象がグロサリー、アパレルから生鮮品まで拡大された。しかし、生鮮発注には特有の業務処理が必要となるため電子化へのハードルは高く、現在も電話やFAXによる発注に甘んじている小売業も少なくない。しかし電話やFAXによる発注は聞き間違い、読み間違いといった人為的なミスが発生しやすく、誤発注の原因となりやすい。また、発注業務や検品業務にも時間がかかり、サービス向上や接客の効率化といった本来やるべき業務に集中できないのが現状だ。

 

 こうした課題を解決するため、同社では売場からタブレット端末で発注可能な「タブレット生鮮発注システム」を提供している。タブレット生鮮発注システムは、発注台帳をそのまま電子化したもので、売場で在庫棚を確認しながら正確に発注業務を行うことができる。使い方は簡単で、店舗では本部であらかじめ作成された管理画面を見ながら発注数量を入力するだけ。過去の実績を画面上で参照できるので、売れ行きがいい商品はより多く、売上が少ない商品は少なめにと、状況に応じて発注量を変えることも簡単だ。検品作業もタブレット端末を使った伝票レス簡易検品で、生鮮食品特有の煩雑な伝票処理も発生しない。

 

 店舗運営でもうひとつ課題となるのが陳列業務の効率化だ。流通BMSで検品レスは実現するものの、本部から送られてくる棚割図は数字やコードばかりでわかりにくい。しかし「タブレット生鮮発注システム」なら棚割図をタブレット端末上にビジュアル表示するので、陳列内容も一目瞭然だ。

 「売場の盛りつけ写真を携帯電話からメール送信すれば、タブレット端末から盛りつけ例まで参照できるので、成功店舗の横展開も簡単です」(大木氏)

 

 

卸・物流業のコスト削減を実現する「REDlSuite」の多彩なオプション機能

 

 卸売業の場合、小売業からの要望に応じて流通BMSに対応するケースが多い。流通BMS対応のEDI化をはかるなら、できるだけ手間をかけず、低コストでシステム化したいのが本音だ。「REDISuite」は卸売業向けに3つのバリエーションを用意。専用サーバを利用する「HITREDI/Server」、PCベースの「HITREDI forクライアント」、さらに自社で資産を持たずサービスとして利用する「REDISuite SaaS」から用途に応じて選ぶことができる。

 しかし、いずれの導入パターンにおいても、システム改修コストがネックとなる。特に小売業から送られてくる発注情報は、卸売業が業務を行ううえで使わない項目が含まれていることも多く、その改修費はばかにならない。REDISuiteではこうした悩みを解決する機能として「項目引継機能」をオプションで提供している。この「項目引継機能」を使えば、小売業者から送られてきた発注情報から、必要な項目だけを基幹システムに取り込み、事前出荷情報を送信する際には、REDISuiteが蓄積した発注データ情報を自動的に付加して小売業に返送することが可能だ。その結果、既存システムの改修負担は格段に少なくて済む。

 

 一方、物流センターでは、事前出荷情報と発注情報のエラーが問題となるケースが多い。データが届いているのに商品がない、あるいは商品があってもデータがないといったトラブルは物流センター共通の悩みだ。REDISuiteでは、「事前出荷情報チェック機能」をオプションで用意。事前出荷情報と発注情報をシステム内部で自動的に突き合わせ、異なる場合は差異情報を取引先に送信することでデータ精度の向上を支援している。その結果、検品作業の効率化や在庫精度の向上が実現し、物流センターの業務は飛躍的に改善される。

 

 「日立ではグループの物流ソリューションを結集した「Logistics Library」により、物流の計画(診断・プランニング)、建設、開発、運用までを総合的に支援するソリューションを用意しています。物流に関することも日立にお任せください」(大木氏)

 

 

小売業のPDCAサイクルをカバーする日立の流通・物流ソリューション

 

 REDISuiteが基盤となっている同社の流通・物流ソリューションによって、標準化された流通BMSに基づく小売業のPDCAサイクルがすべてカバーできることがわかる。同社では今後も継続的なシステム強化を通して流通BMSの導入促進を支援していく構えだ。大木氏は「流通BMSが多くの小売業・卸売業に拡大していくことで、日立としてもニーズに即したシステムや機能が追加しやすくなります。そのためにも、流通BMSがインフラとして定着するまで、粘り強い姿勢でサポートし続けていきます」と強い思いを語った。


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この記事は、リテールテックJAPAN 2012 の日立ブースのステージで紹介された内容をもとにインタビューを行い、制作しています。ステージの映像はこちらでご覧頂けます。

動画ライブラリー(製品・ソリューション紹介)

 

記事中で紹介されている製品の詳細はこちらでご覧いただけます。

日立トータルEDIソリューション「REDISuite」
物流ソリューション「Logistics Library」


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