【日立製作所】 第3弾 : 「流通BMS」で取引先を含めた効率化とコスト削減を実現

株式会社ベイシア
流通技術研究所 所長
兼 IT推進部長
重田憲司氏

 

 流通業界では、新しいEDI(電子データ交換)規格である「流通BMS(流通ビジネスメッセージスタンダード)」の普及が本格化している。各社でそれぞれ異なっていたデータフォーマットを標準化することで、企業間のシームレスなデータ連携が加速し、日本の流通業界のインフラ強化が一気に進むと期待されている。

 チェーンストア大手のベイシアは、2008年8月から流通BMSへの移行を開始し、09年度には取引先75社とのEDIを完全に移行、10年度中には200社との接続を計画している。流通BMS導入にあたっては、実績豊富な日立流通EDIシステム「HITREDI」を活用して、短期かつスムーズな移行を実現した。

 


取引先と連携したインフラ改革で飛躍的に大きなコスト削減効果

 

 「Every Day Low Price(毎日この価格)」を徹底的に追求し、関東・東北・甲信越を中心に全国100店舗を展開するベイシア。「チェーンストアを拡大していくには、物流と 情報の両方が重要です。常に『物流&IT』をトータルで考えてきました」と重田氏は語る。

 同社が卸売会社との取引基盤を、流通BMSへいち早く移行することに決めたのは、Every Day Low Priceを実現するためのローコスト経営「Every Day Low Cost」のさらなる強化に不可欠だと判断したからだ。「従来は、当社専用のデータ交換システムを取引先に保有してもらわなければならず、EDI化が思うように進みませんでした。EDIが個別対応ではなく標準対応に変わることで、取引先にかかる負担を減らしながら、EDI化を一気に推進することができます」(重田氏)。

 EDI化が進めば、伝票レスが実現し、取引先も含め社内業務を大幅に効率化できる。また、ブロードバンド環境を利用して高速にデータ交換ができるため、通信費も削減し、物流も効率化される。
「つまり流通BMSは、『より安く売るためのインフラ』なのです」(重田氏)。

 

 「ベイシアさまではコスト削減をするために、さまざまな改革を積み重ねてこられました。さらに大きなコスト削減をするには、小売業1社での取り組みではなく、取引先との連携が必要です。多くの企業が協調することで、より大きなコスト削減効果を生み出すことができるのです」(日立)。

 

 

取引先の導入を促進する「ベイシアパッケージ」を用意

 

 流通BMSを導入するにあたって同社は、日立流通EDIシステム「HITREDI」を採用。「複数のベンダーから提案を受けましたが、日立は経済産業省の共同実証で事務局を務めており、実績とノウハウがあります。企業同士のデータ交換というのは大変地道なことなので、経験の積み重ねを持っていることを一番重要視しました」(重田氏)。

 

 すでに100社近くの取引先が流通BMSの利用を開始しており、2010年度中には、200社との接続を計画している。

 短期間でスムーズに移行できた理由のひとつは、取引先が流通BMSへ移行しやすくする「ベイシアパッケージ」を作ったからだ。これは、HITREDIを中核に、ラベル印刷など のしくみやプリンタをワンセットにしたパッケージで、ベイシアと日立、株式会社イシダ、株式会社サトーの4社が共同開発した。「ベイシアパッケージを使えば、取引先は試行錯誤したりすることなく、最小の投資で流通BMSへ移行できて、他の小売店とのデータ交換の道も一気に開けます。ベイシアパッケージは、標準化を拡大してインフラを強化すべきだという、業界全体に向けてのベイシアからの提言でもあるのです」(重田氏)。

 

 スムーズな移行を実現できたもうひとつの理由として、日立がEDI全般において豊富な実績を持ち、流通BMSについても、共同実証などで培った経験をナレッジ化していたことが指摘できる。「取引先にどの段階で何をやってもらわなければならないかという作業リストなども提供し、取引先がスケジュール通りに導入・拡大していくことをご支援させていただきました」(日立)。

 

 

 

大規模対応からASPまで多彩なEDIソリューションを提供

 

 流通BMSへの移行は、取引先にも大きなメリットをもたらしている。伝票レスになったことで、紙伝票の手入力作業がなくなり、伝票の仕分けや保管の手間もかからない。しかも、通信時間は大幅に短縮された。ある取引先の場合は、毎日1時間かかっていた発注データの受信が5分程度で終わるようになったのである。

 

 小売業にとって、「発注にかかる時間が短い」ということは重要なことだ。リードタイムが短くなれば、商品回転率が上がり、売れるものを早く仕入れることができる。余分な在庫を持たずに欠品を起こさない体制もつくれる。しかも、より鮮度の高い商品を提供できるのである。「集品力・集荷力が強化され、コスト削減をさらに推進する基盤ができました。当社は、既に販管比率20%以下を達成していますが、強化されたインフラを活用しながら、さらに、17%以下を目指していきたい」(重田氏)。

 

 現在、対象商品はグロッサリーと加工食品を皮切りに、生鮮品・日配品・衣類まで広がっている。今後は、小規模な取引先にも利用を拡大し、最終的にはすべての商品カテゴリーを流通BMSの対象にしたいと同社は考えている。

 「また、日立では、小売業、卸売業、メーカーさまに適切な流通標準EDIを提供できるソリューション『REDISuite』をご用意しています。実績・経験・技術・ノウハウに基づき、お客さまのご要望に応じたソリューションを提供してまいります」(日立)。

 

 卸売業界に新風を吹き込んだベイシアと日立は、今後も密度の高い協業を進め、流通BMSの普及に取り組んでいく。

 


※REDISuiteは、日立製作所と日立システムズが提供する流通業向けEDIソリューションの総称です。

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