【日立製作所】 第6弾 : 流通BMS策定期からのノウハウと実績を持つ日立が業務プロセスの最適化を支援

株式会社日立製作所
産業・流通システム事業部
流通システム本部
第二システム部
チーフプロジェクトマネージャー
大木昇 氏

 

 流通業界の標準EDIとして、2009年10月に完成版がリリースされた「流通ビジネスメッセージ標準(流通BMS)」。流通市場が急速に変化を遂げている11年、小売業を中心に導入が加速し、その流れは卸売業者やメーカーにも波及している。
 そこで今回、策定期から長年にわたって流通BMSの普及に努め、日立トータルEDIソリューション「REDISuite(レディスイート)」を通して導入を支援している日立製作所の取り組みを、産業・流通システム事業部の大木昇氏に聞いた。

 

 

製配販の連携でトップダウンによる流通BMSの導入が加速

 

 経済産業省の流通システム標準化事業以降、着実に普及が進んでいる流通BMS。11年5月19日に開催された「第1回製・配・販連携フォーラム」で導入に向けた動きが加速している。製・配・販連携フォーラムとは、小売業、卸売業、メーカーを代表する企業15社が参加し、各社経営トップのイニシアチブのもと、SCM(サプライチェーンマネジメント)の抜本的な改革を目指して実現したものだ。15社のメンバーで構成されたワーキンググループでは、流通BMSの推進に関しても議論され、フォーラムにおいて発起人15社と賛同企業の計49社による「流通BMS導入宣言」が発表された。

「従来は、情報システム部門を中心とした現場では導入の意思を強く持っていましたが、経営トップまでメリットや意義が伝わりにくかったことから、導入のピッチが上がらなかったことは確かです。しかし、10年に発足した製・配・販連携協議会が、トップダウン型で導入を進めていくことを宣言したことから、普及に弾みが付くことは間違いありません」と大木氏は語る。

 

 流通システム標準普及推進協議会によると、同会会員の流通BMS導入状況は、導入済み企業と導入予定企業を合わせて、小売業で110社、卸売業・メーカーで170社(12年2月1日現在)。事業者全体の数から見ると決して多いとはいえないが、ここ最近で多くの大手小売業が流通BMSの導入に踏み切ったことがきっかけとなり、関連する卸売業やメーカーにも波及し始めている。

「大手小売業は独自EDIを早期に確立し、個別のデータ交換によって取引を行ってきた経緯があります。独自EDIは、競争力の源泉となる独自の物流システムとひもづいているため、容易に切り替えることができませんでした。しかし近年、物流システムのアウトソーシング化が進み、物流業務の独自性が薄れてきたので、EDIの標準化に取り組む小売業が急速に増えています」(大木氏)

 

 

小売業各社のベストプラクティスを集約した流通BMSで業務プロセスを最適化


 流通BMSの導入が加速する一方、ミクロレベルで見ると導入までにいくつかの課題が存在することも確かだ。小売業は業務プロセスが個別最適化されているケースが多く、流通BMSを導入すると既存の業務プロセスを変えなければならない場合も少なくない。大木氏は「現状の業務プロセスを変えてしまうことによる業務への影響にも考慮が必要です。また、流通BMS導入だけでは効果が薄く、経営トップからコストと見なされやすいことも導入の障壁になっています」と分析する。

 

 日立では、こうした悩みを抱えている小売業に対し、業務プロセスの改善や、業務の標準化を支援する方針でアプローチ。それぞれの企業が置かれている状況や悩みなどを徹底的に分析し、最も効果の現れる方法で流通BMSの導入を支援している。

「流通BMSの導入効果は、伝票業務やラベルの有無、伝票を発行する単位などでも大きく異なります。そこで日立では専門知識を持つエンジニアが、導入企業のEDI業務を詳細に分析し、最適な方策を提案しています」(大木氏)

 

 流通企業にとって、流通BMSの導入は、現在の業務プロセスを整理し、効率的なプロセスに改善するきっかけとなる。大木氏は「流通BMSは、小売業各社が集まり、最も効率的な手法を標準化したベストプラクティスモデルです。ですから、ビジネスプロセスの整備過程にある小売業は、効率的なビジネスプロセスに一足飛びに追いつけるものと考えています。単純にEDIの視点で捉えてしまったら、大切なチャンスを見過ごすことになりかねません」と指摘する。

 

 卸売業やメーカーにとっても、流通BMSによる標準化が進むことで得られるメリットは少なくない。「現状は取引先である小売業の要望に応じて流通BMSに対応している卸・メーカーがほとんどです。一方、流通BMSに対応していない小売業とは従来通りの手順で対応しており、取引先に応じて手順を変えなければならない複雑さが運用を煩雑にしています。今後は、流通BMSが普及し独自手順で取引する小売業がなくなれば、卸・メーカー側も流通BMSのみで取引が可能となり、管理負荷の軽減と、業務プロセスの収れんが進んでいくはずです」と大木氏。

 

 

ハード・システム・SI・運用をワンストップで提供する日立の「REDISuite」

 

 EDIシステムの研究・開発を長年にわたってけん引してきた日立は、06年度に実施された流通BMS標準化事業の共同実証プロジェクトに参画。プロジェクトで蓄積してきたノウハウをもとに開発した、日立トータルEDIソリューション「REDISuite」を07年から提供している。導入用途に応じて、サーバタイプの「HITREDI/Manager」と「HITREDI/Server」、クライアントタイプの「HITREDI forクライアント」、SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)タイプの「REDISuite SaaS」の4種類をフルラインアップし、ニーズに即した流通BMSの導入を支援している。

「お客様の業務プロセスの洗い出しから、標準化に向けた改善方法の提案、システムの導入までトータルに支援できることが日立の強みです。システム本体だけでなく、サーバやストレージといったハードウェアから、システムの構築、導入後の運用・サポートまですべて日立で提供できるため、対応窓口が分散することもなく、わずらわしい手間もかかりません。ハードウェアの故障時も、国産ベンダーならではの迅速な対応で、待ったなしの受発注業務の停止を最小限に食い止めます」(大木氏)

 

 流通BMSの導入では、既存システムとの連携も課題となるが、「REDISuite」では豊富なオプション機能によってスムーズな連携を実現。「発注情報と出荷情報を突き合わせることでエラーを早期発見しデータ精度向上を実現する、ASNチェックオプション。伝票レス導入に伴い必要となるスムーズな伝票検索を実現する、伝票検索オプション。流通BMSの特徴でもある引継項目をシステムでサポートし既存システム改修軽減を実現する、流通BMS項目引継オプション。流通BMSの標準仕様だけでなく、オペレーション負荷の軽減を目指すオプション機能が揃っています」(大木氏)。また、従来のレガシーEDIやWeb-EDIなどにも対応しているので、現状のEDIを維持したまま「REDISuite」を導入し、タイミングを見ながら流通BMSに切り替えることも可能だ。

 

 12年2月現在、「REDISuite」の導入実績は小売業や卸売業合わせて約160社。卸売業を中心にサーバ型やクライアント型の採用が進む一方、小売業を中心にSaaS型の導入が急速に増えている。日立では今後、メーカーへの導入も積極的に進めていきたい考えだ。最後に、大木氏は「流通BMSが普及してきたとはいえ、導入が進んでいない業界も多数あることから、あらゆる業種・業界にアプローチしていきます。流通BMSの導入に関して、自社で手が付けられないといったお客様に対しては、現状の業務分析や課題点の洗い出しからお手伝いし、どこまでを標準化するといった難しい判断についても、業務とシステムを熟知したエンジニアがサポートします。そして、システムの導入から導入後の運用まで全面的にバックアップし、どんなことがあっても最後まで徹底してお付き合いさせていただきますので、安心してお任せください」と強調した。

 

 

※REDISuiteは、日立製作所と日立システムズが提供する流通業向けEDIソリューションの総称です。

 

 

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