株式会社日立システムズ 湘南センタ
産業・流通情報サービス事業部
流通第三システム本部
本部長
志村哲也 氏
株式会社日立システムズ 湘南センタ
産業・流通情報サービス事業部
流通第三システム本部
第一設計部 第3グループ
主任技師
會澤英之 氏
2009年10月の流通BMS基本形V1.3のリリースによって基本形と生鮮メッセージが統一され、標準化の動きが一本化された。これによりメッセージの利便性が向上し、今後の流通BMSの本格的な普及が期待されている。こうした中で注目されるのが、流通関連企業の流通BMS導入をサポートするSIベンダーの存在だ。必要性は分かっているが、実際の導入となると戸惑ってしまうという声も中堅・中小規模企業を中心に少なくない。
そこで今回は、国内屈指のEDIサービスを提供する日立システムズを取材、同社が提供する流通BMSソリューション「REDISuite(レディスイート)」の特長と共に、中堅・中小規模企業が流通BMS導入を成功させるために留意すべき点や、SIベンダー選びのポイントなどを聞いた。
流通BMSが中堅から中小規模のお客様にまで拡大 湘南センタを核にEDIサービスを全国展開
「流通BMS基本形V1.3リリースの影響はやはり大きく、今年に入ってから流通BMSの導入を検討したい、あるいは実際に導入するといったお客様がかなり増えています。特に、これまで小売大手に偏りがちであった流通BMSの導入例も、ここにきてSMBと呼ばれる中堅から中小規模のお客様にまで拡大してきたことが大きな変化で、私たちも確かな手応えを感じています」と流通第三システム本部の本部長 志村哲也 氏は力強く語る。
日立システムズは、1959年の創業以来、全国各地にデータセンターを展開し、さまざまな業種においてシステム構築・運用の実績を持つIT分野の草分け的な存在だ。流通業界に対しても、JCA手順の開始と同時期である1982年に、企業間のオンライン受発注システム「EOS」の構築・運用サービスを開始してEDIサービスを全国展開し、現在では小売業・卸売業を中心に2万を超える企業が同社のサービスを利用している。1986年設立の湘南センタは、このEDIサービスの中核拠点であり、国内屈指の設備、セキュリティ環境を備えたデータセンターを有している。
同社は、経済産業省が実施した流通BMSの共同実証プロジェクトに当初から日立製作所と共に参加。大手スーパー2社のEDIセンター機能を提供するなど、流通BMSの導入を常にリードしてきた。そうした実績とノウハウを持つ同社が2007年11月に日立製作所と共同で発表したのが、流通BMSソリューション「REDISuite」だ。
「現在、私たちが最も力を入れてアプローチしているのはSMBのお客様ですが、お客様によってITリテラシーが大きく異なり、専任のシステム管理者がいない場合も少なくありません。こうしたお客様に流通BMSを普及させていくには、いかに導入のハードルを下げられるかが問われます。REDISuiteは、自社導入型、アウトソーシング型、ASP型の3タイプをそろえ、どのようなお客様のニーズにも対応できるようにしています。流通BMSだけでなく、レガシータイプのEDI、WEB-EDIなど、従来サービスとシームレスに連携できることが大きな特長で、従来サービスとの互換性を保ちながら、流通BMSへの移行を短期間で行えるよう特に配慮しています」と流通第三システム本部 第一設計部 第3グループ 主任技師の會澤英之氏は解説する。
流通BMSを低コストかつ容易に導入し、高可用性を実現する「REDISuite ASP」
大きな投資をすることなく流通BMSをすぐに利用したいというSMBユーザーにとっては、やはり利用の中心はASPサービスとなるだろう。ASP型として提供される「REDISuite ASP」は、容易な導入を可能としながら、何よりも高い信頼性を併せ持つ点を特長としている。耐震設備、高度な冗長システム、自家発電装置等を備え、高いセキュリティによって守られる湘南センタの安心・安全な環境のもと、24時間365日監視、充実したヘルプデスクサービスによって高可用性を実現している。
「お得意先企業からの要望で流通BMS対応を迫られるお客様も、一気に完全移行するわけではなく、現実には旧来のシステムと並行稼働しながら移行を進めることになります。そのため当社のサービスは、流通BMSだけでなく、WEB-EDI、レガシー系の各種プロトコル(ebXML、JX、JCA、全銀Basic、全銀TCP)に幅広く対応しており、現状のお客様のニーズはもちろん、将来的なEDI構想まで含めた柔軟な対応が可能です。お客様は当社のサービスを利用することで、現存のシステムをほとんど変更せずに、お得意先様が希望する形態でのデータ交換を実現できます」と會澤氏。
導入や運用に見えにくく煩雑な部分を丁寧にサポート
中堅・中小規模企業が流通BMSの検討、移行を進めるに当たって悩む点は、既存システムにどのくらい影響があるのか、改修や追加項目の設計、インタフェースをどうするかといったことである。また、JCA手順からの変更となると、既存のEDI種別をマッピングする作業が大変であったとか、取引先とのネットワーク、セキュリティの環境設定作業に苦労したという話もよく聞く。さらには、旧来システムのドキュメントが紛失していて、途方に暮れたといった例もある。流通BMSに限ったことではないが、こうしたシステムの仕様や移行に関わる部分は、SIベンダーを選定し、実際のシステム構築を進めるまで分からないため、トラブルの元になりやすい点でもあるのだ。
「マッピングのような作業は、実は地道で労力の掛かる力仕事なので、敬遠されがちです。また、流通BMSへの取り組みも、小売業と卸売業との間ではそれぞれ微妙に異なりますから、多くの取引先を持つお客様の場合、その調整だけでも大変な手間です。SIベンダーを選ぶ際には、是非、こうした点を考慮して欲しいですね」と志村氏。
「われわれは、お客様とお取引先との間のスケジュール調整、テスト、セッティングなどを含め、システムとは直接関係の無い手間の掛かる作業についてもサービスをご用意し、お客様のご要望に確実に対応いたします。当社の強みは、メインフレーム時代からの手厚いサービスを基本として、こうした導入や運用に関わる見えにくく煩雑な部分を丁寧にサポートしてきたことにあると自負しています」
最近のインターネットデータセンター(iDC)は、サーバーを安定運用するためのファシリティと回線をセットで提供し、システム運用をオプションとして用意するものの、ユーザーが行うことが基本だ。これに対し、同社のサービスの本質はハード面以上にユーザーが望むことはできる限り何でも引き受けるというソフト面の充実にある。
「大切なデータを安全、確実に届けるというEDIシステムの提供だけでなく、運用管理を併せたトータルサービスを提供できるのが当社の大きな強みです。私たちは長年の経験から、お客様がどのような点に悩み、どのようなサービスを必要としているのかを熟知しています。コンサルティングを通じてお客様から情報を聞き出し、ご要望を可能な限り反映させたシステムを実現します」と志村氏は強調する。