【西友】 取引先とWin-Winの関係を築くための経営基盤となる流通BMS

合同会社西友
情報システム本部 バイス・プレジデント

平林 浩美 氏

 

 「Saving people money so they can live better(お客様に低価格で価値あるお買物の機会を提供し、より豊かな生活を実現する)」をミッションに、全国で368(2011年12月現在)のスーパーマーケットを展開する西友。米ウォルマート・ストアーズ・インクの一員である同社は、グループのスケールメリットを最大限活用するため、2010年より受発注システムの統合刷新に着手。その一環として流通BMSを採用し、2011年初頭より導入を進めてきた。2011年12月現在70社の取引先が流通BMSへの移行を終えており、今後も接続先を順次拡大していく方針だ。そこで同社情報システム本部 バイス・プレジデントの平林浩美氏に流通BMS導入の狙いを聞いた。

 

 

取引先とのコミュニケーション力強化を目指して流通BMSを採用

 北海道から九州まで日本全国に店舗ネットワークを張りめぐらし、食料品から衣料品、住居用品まで幅広い商品を取りそろえた売場運営を行っている西友。「価格」「鮮度と品質」「品揃え」「利便性」の4つをバランスよく提供することを目指し、営業力と商品調達力の強化に取り組んでいる。02年に米ウォルマート・ストアーズ・インク(以下、ウォルマート社)と業務提携した同社は、ウォルマートグループのスケールメリットを活かすため、商品の販売・仕入・在庫状況などのデータを管理する店舗システムを刷新し、03年から07年にかけて全国の店舗に導入を終えた。また、受発注状況、販売状況、在庫状況などを共有するための情報共有システム「リテールリンク」をウォルマート社から導入し、在庫ロスのない最適な販売管理体制を敷いている。

 

 一方で、メーカーや卸売業者などとデータをやり取りする受発注システムは、旧西友が構築した既存環境を継続して利用してきた。店舗システムの導入を終えた西友は08年、ウォルマート社の完全子会社化に移行する機会に合わせてシステム体系を西友コードからウォルマートコードに刷新し、同時に流通BMSに移行することを決断する。システム統合と流通BMS導入の狙いを平林氏は「取引先とのコミュニケーション力強化」と語った。

 

 「西友のミッションである『Saving people money so they can live better』を推進するためには、ウォルマート社のシステム体系と統合し、そのスケールメリットを最大限に活用することが不可欠であるというのが経営トップの方針です。一方で、日本の消費者ニーズにマッチした売場作りを推進していくためには、お取引先様とのコミュニケーションを密接にし、両者の価値を相互に高めていかなければなりません。当社がシステム体系を変更するということは、お取引先様に既存の受注システムの変更を迫ることになります。そこで、そのシステム体系の変更に合わせて、両者がともに成功するために日本のビジネスに適した流通BMSを導入することが最良であると判断しました」

 

 

受発注システム体系変更と合わせて流通BMSに移行

 システム体系変更に合わせて流通BMSへの移行を決断した西友は、2010年春から取引先を対象とした説明会を実施。システム統合や流通BMSのメリットを訴求しながら理解を求めた。説明会は東京・赤羽の本社に関東近郊の取引先を一同に集めて実施したほか、地方の取引先に対しては営業拠点単位で個別に巡回したという。

 システム体系の変更は、西友が必ず実現しなければならないミッションでした。そのためには商品コード、取引先、マスターなどの統合によって得られるメリットを説明しながら協業体制の強化を訴求しました。さらに両者のコラボレーションを成功させる最適な接続オプションが流通BMSであることを説明し、システム体系変更との同時導入をお願いしました。将来的に流通BMSへの移行を考えているのであれば、システム体系変更と同時に導入してしまうほうがわずらわしい手間を最小限に抑えることができます。流通BMSを採用することで、JCA手順で行っていたシステムの運用負荷が軽減でき、受発注スピードの高速化が実現することも合わせて強調しました。取り扱う商品アイテム数が多い西友は、日々大量のデータを扱うことになりますが、インターネット回線を利用することでデータ交換にかかる時間も一気に短縮されます」

 

 システム体系変更は、2011年2月から本格的にスタートした。西友では約1000社ある取引先を3つのグループに分け、第1フェーズでは加工食品、住居用品、ベーシック衣料などを扱う取引先を中心とした300社に対して新システムへの切り替えを進めた。その300社のうち70社が流通BMSへの移行を終えている(2011年12月現在)。 EDIシステムは、自社でサーバーとシステムを調達する自社構築型と、ITベンダーが外部に構築したサービスを利用するASP型の2種類を用意。流通BMSに移行した70社の取引先のほとんどがASP型を利用してデータ交換を行っているという。交換メッセージの種類は、発注、ASN(事前出荷明細)、受領、買掛、値札作成(ファッションアイテム)の5つとした。

 

 

西友の将来成長に向けたシステム基盤の設備が実現

 マスターの統合やデータ交換スピードの向上など、システム体系変更と流通BMSの導入によって得られた効果は大きい。将来的にはITコストの削減なども実現する見込みだ。しかし西友ではこうした成果以上に、西友およびウォルマートグループの将来成長に向けたIT基盤の整備が実現したことにこそ、最大の価値を見いだしている。「西友の経営スタンスは、取引先とWin-Winの関係を築くことが根底にあります。そのため、自分たちだけがメリットを享受するような方法はとりません。日本の流通に最適化された流通BMSの導入価値は、取引先と共に、よりよい商品を、より効率的に調達し、最終消費者であるお客様に提供することができるというところにあります。まさに『Saving people money so they can live better』の実現を目指す、我々の経営基盤に合致したものであると言えます」

 

 西友は今後、第2フェーズとして、ファッション衣料やデイリーフードを中心とした300社に取引先システムの導入を推進し、同時に流通BMSへの移行を呼びかける方針だ。そして2012年中には第1フェーズと第2フェーズを合わせた600社の20%以上が流通BMSに移行することを目指している。平林氏は「第1フェーズでは、まだ、時期尚早ということで流通BMSへの移行に至らずにJCA手順を選択した取引先からも、流通BMSに移行したいという声を聞いています。今後、他の大手流通グループが流通BMSへの対応を進めていくことを考えるなら、早期に移行することが得策であることは間違いありません。そのためにも流通BMS協議会には、対外的な広報活動や成功事例の紹介を積極的に進めていただくことで、流通BMSの普及を加速させていただくことを期待しています」と語った。

 

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