【シジシージャパン】 CGCグループ共通インフラとして推進

シジシージャパン
ビジネスサポート事業部
草留正樹氏

全国の中堅・中小スーパーマーケットが加盟するCGC(Co-operative Grocer Chain)が、「流通ビジネスメッセージ標準(流通BMS)」をグループの新たなEDI(電子データ交換)標準に採用した。本部であるシジシージャパンでは、加盟社や取引先に積極的な導入を呼びかけている。同社ビジネスサポート事業部の草留正樹氏に、流通BMS採用の狙いや効果、今後の展開などについて聞いた。

 

 

課題の解決から経営革新へ

 全国の中堅・中小スーパー224社、3355店舗(2008年10月現在)を擁するCGC。商品を集中購買することで仕入れコストを抑えるなど、資本提携のない複数の企業が“協業”することで成長を遂げてきた。
情報システムについては、20年前にJCA手順を基にしたCGC独自のメッセージ標準を策定。その後も、各地の加盟社の代表で構成する「情報システム戦略委員会」を中心に、共有システムの開発など協業でのメリットを追求してきた。

 

 しかし、「CGC標準から外れた業務はファクスなど手作業で対応せざるを得ず、時間的なロスやミスの原因になっていた」と、草留氏は語る。時代とともに経営環境も大きく変化し、「足りないメッセージ種やデータ項目を追加する必然性にも迫られていた」(草留氏)という。
 プライベートブランド商品の開発・販売も行っているCGCは、業務の改善・効率化のほかにもトレーサビリティー(生産履歴の追跡)への対応など、「安心・安全」の仕組みづくりも求められている。そのためには、仕入れから販売までの情報を、迅速・的確に把握できるインフラの整備が不可欠だ。

 

 こうして流通BMSの採用を決めたCGCだが、その狙いは課題の解決にとどまらない。流通BMS導入により情報伝達の迅速化やデータ管理の精度向上を促進し、仕入れ、在庫、粗利、売り上げなど単品管理の実現を目指している。EDI比率を高めれば月次決算から週次決算への移行も可能となり、業務プロセスも安定化・スピードアップし、素早く的確な経営判断につながる。CGCは流通BMSに、こうした戦略的経営を支えるインフラとしての役割を期待している。

 

 

導入後まもなく大きな効果

 グループとして推進を決めたCGCだが、加盟社・取引先が一斉に流通BMSへ移行するのは難しい。そこで、情報システムを扱う関連企業に依頼し、加盟社と取引先を結ぶ「CGC-EDIセンター」を設置。同センターでJCA手順と流通BMSの相互変換を行い、両方式が併存する移行期間の取引業務が混乱しないようサポートしている。
 こうした支援体制もあり、流通BMSへの切り替え開始から一年半あまりが経過した08年10月末現在、導入実績は加盟社七社、取引先百79社にまで拡大。「実稼働を始めた取引先からは、『取引相手が多いため、標準があると助かる』などの声が多い」(草留氏)と、滑り出しは順調のようだ。

 

 具体的な導入効果も表れている。例えば、ある加工食品卸との間では、発注データの受信にかかる時間が40分から2分に短縮。出荷確定データの送信も20分が1分に短縮された。通信時間の短縮により、作業時間にゆとりが生まれ、納品精度も高まったという。
 また、ある加盟社では、月間40万枚使用していた伝票の完全ペーパーレス化を実現。月間160万円のコスト削減に成功した。さらに、データに陳列情報を追加し、店舗別・陳列順に各店配送を実施。陳列作業の効率化も実現できたという。流通BMSの導入を単なる通信手段の変更などととらえず、従来からの課題解決の契機にした好例だろう。

 

 

 

普及加速へ取り組みを強化

 流通BMSの普及加速に向けた取り組みも活発だ。例えば関東地区にある共配センターは、加盟社の負担を減らすため、シジシージャパンが物流と決済をまとめて行っている。そこで、共配センターを利用する取引先とのやり取りを流通BMSに変更。加盟社からJCA手順でデータが送られてきた場合、流通BMSに変換して取引先に送っている。
 対象となる取引は、洋日配商品(デザート、乳製品など)、和日配商品(豆腐や納豆など)、加工肉(ハム、ソーセージなど)。来春には、グロサリー(加工食品・日用雑貨など)まで対象を広げる予定だ。共配センターを利用する取引先は中小規模の日配品メーカーが中心。取引先数が多いため、センターの業務負担は大きく、効率化が課題だった。また、一般的に日配品はグロサリー品と比べて完納率が低く、数の不足や破損などが発生してしまう。イレギュラーな業務は手作業での対応になるため、時間的なロスやミスの原因にもなる。

 

 それだけに、日配品の取引を流通BMSに切り替えることで、大きな業務改善・効率化が期待できる。また、加盟社共通の取引先への流通BMS普及をシジシージャパンが率先して推進することは、加盟社に流通BMSへの切り替えを促すことにもつながるだろう。
草留氏は、「課題として残されているメッセージ種の標準化など、さらなる充実に期待したい」と語る。「現状では、流通BMSより優れた標準が出てくるとは思えない」と、一層の普及拡大に意欲を見せる。

 

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