【西鉄ストア】 新物流センターのかどうと新物流システムの構築で物流業務を一気に効率化

 

 株式会社西鉄ストアは、福岡県で鉄道事業を展開している西日本鉄道株式会社の100%出資によるスーパーマーケットだ。現在、福岡県に38店舗、佐賀県に1店舗の計39店舗を展開するほか、衣料品専門店、ホームセンター、西日本鉄道駅での売店なども運営している。

 

事例のポイント

・大小の小売業102社と流通BMSで接続

・商品代金未収のトラブル0件達成

・請求・支払いの取引先拡大と流通BMSの普及が課題

 

導入概要

専用物流センターと新システムの構築を目指してプロジェクトを発足

 流通BMSを導入する前まで、西鉄ストアでは、グローサリー部門のEOS稼働率が94%~96%で頭打ちを示していた。また、発注処理や電 送処理に時間がかかったり、商品代金の支払いに対する問合わせが頻発したりするなど、既存の情報システムでは物流業務に限界があることは明らかだった。 JCA手順によるEDIに対しても、通信時間とメッセージ機能の点で不満を抱えていた。


 そこで、2006年11月、新しい専用物流センターと、新システムの構築を目指して酒類・食品卸のヤマエ久野と タッグを組み、流通BMSへの切り替えの検討をはじめた。次世代のEDIを選んだ理由を、西鉄ストア 情報システム部 高橋雄一部長は「CGCグループのIT戦略会議に参加したのがきっかけ。社内説明を実施した結果、トップも標準化の重要性を認識し、社内の共通認識が得ら れた」と明かす。

 

新物流センターの稼働に合わせて流通BMSを本番運用

 プロジェクト発足以降、ASPとして指定したSBシステムズとリンネットと共に情報収集をしながら流通BMSの検討を本格化した。2007 年5月に取引先説明会を実施し、同8月にはテストを開始。新しい物流センターの稼働が始まる2007年10月末から本番運用に踏み切った。ASPを採用し たことで、100社以上にのぼる取引先との接続がスムーズに進み、わずか6カ月で運用がスタートできたという。


 導入に際して苦労した点は、取引先への普及説明だ。「お取引先への普及説明会は、1社あたり4回実施した。反応は “全くちんぷんかんぷん”なところから、前例がないことに対して拒否反応を示すところ、“待ってました”と歓迎してくれるところまで様々だった。当社の場 合、街のお豆腐屋さんといった小規模な取引先も多いため、ほとんどが流通BMSや標準化といわれてもピンと来なかったようだ」と高橋氏は当時の状況を振り返る。

 

 

102社と接続

 2008年10月現在、西鉄ストアの流通BMS接続取引先数は102社(118接続)にのぼる。流通BMSのメッセージ種は、「発注」「出荷(梱包)」「出荷(伝票)」「受領」「返品」「請求」「支払」の7種類。ドライを中心とする在庫DC(預かり在庫)では、前記7種類のメッセージに加えて独自フォーマットの「商品マスタ」と「在庫データ」も交換している。

 

 

 

導入効果

商品代金未収のトラブル件数がゼロに

 流通BMS導入前は、商品代金の支払いに対する問合わせが毎月平均で100件あった。主な原因は、EOS伝票への納品データ入力忘れや数量訂正ミス、手書き伝票・OCR伝票における単価違い、計算違い、伝票区分違いなどだ。その結果、振込から数日後には代金未収の調査に追われ、“余計な作業”に忙殺されることになる。
 「流通BMSの非EOSメッセージの利用で、紙の伝票を原則として廃止した。その結果、未収の問合わせが徐々に減り、2008年9月には0件を達成。以後、3カ月連続で0件を継続している(2008年12月現在)」(高橋氏)。

 

通信の高速化で発注時間に余裕が生まれた

 インターネットによる通信に切り替わったことで、従来30分以上かかっていたデータの送受信時間はわずか数分に短縮。店舗の発注締め時間を後ろにずらすことができた。「BMS導入前は、午前10時の開店から1時間後の11時が発注の締め時間だったため、商品の売れ行きも把握できないままバタバタと発注入力を行う状況だった。導入後の発注入力時間は、従来より1時間遅い12時。品出し作業の片付けが済んでから、余裕を持って発注ができるようになった結果、入力の遅れや発注時のミスがなくなり、発注精度も向上している」(高橋氏)と、効果を実感している様子だ。

 

伝票枚数は68%減を達成

 導入前の2007年9月に38万枚あった紙の伝票は、導入後の2008年9月には12万枚に減り、68%の伝票枚数減が実現した。同時に、支払明細印刷と発送にかかる作業時間も4分の1に短縮されている。返品についても返品データを流通BMSによって交換することで、返品伝票が廃止できたという。

 

 

今後の課題と展望

請求・支払の取引先拡大が目標

 現在、流通BMSの請求・支払データ交換に対応している取引先は、全102社中7社に過ぎない(2008年10月現在)。「すべての取引先に対応するべく、流通BMSの啓蒙と普及に力を入れていきたい」(高橋氏)。

 

使いやすい業務パッケージの登場に期待

 西鉄ストアでは、流通BMSに準拠した業務パッケージを数多く利用しているが、今後流通BMSを広く普及させるためには、更なる改良が必要であると考えている。「コスト、品質、サービス等を工夫した、敷居が低く利用しやすいパッケージの登場を期待している。そして、より多くの小売企業が流通BMSの導入にいち早く踏み切ることを願いたい」と高橋氏は期待を寄せている。

 

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