【髙島屋】 基幹システム更改のタイミングで流通BMS導入  全店舗の在庫情報、リアルタイムに把握

髙島屋
IT推進室
室長

津田 芳雄 氏

 

 日本を代表する老舗百貨店の髙島屋は、経済産業省が主導する流通BMSの共同実証に2006年から参画。09年3月に「流通BMS百貨店Ver1.0」がリリースされたのを機に、流通BMSによるデータ交換を開始した。以後、流通BMS取引を順次拡大し13年6月現在で300社以上の取引先とデータ交換を行っている。
 導入の結果、在庫がほぼリアルタイムに把握できるようになり、販売機会ロスの回避などを実現した。流通BMS導入済みの公開企業数が8社(13年6月現在)と、対応がなかなか進まない百貨店業界で、同社が先行できた背景には、基幹システムの再構築というチャンスがあった。

 

 

金額ベースで約80%の取引先が対応

 老舗百貨店ならではの良質なサービスを継承しながら、時代にマッチした新しい価値を提供し続ける髙島屋。現在、国内に20店舗を展開するほか、シンガポール、台湾、中国にも進出し、収益力の向上に努めている。

 

 同社が流通BMSに取り組んだのは、経産省による流通システム標準化事業が始まった06年までさかのぼる。日本百貨店協会の一員として06年度からの3年間で、アパレルと婦人靴を中心に26種類の流通BMSメッセージの策定に関わり、環境の整備に協力してきた。そして09年に始まった共同実証には、小田急百貨店、丸井の2社と共に参加。09年3月に「流通BMS百貨店Ver1.0」がリリースされたのを機に、流通BMSによるデータ交換を開始する。その後も共同実証および標準メッセージの検討を継続し、現在はアパレル、婦人靴、食品ギフトに関する27種類のメッセージを標準化した「流通BMS百貨店Ver2.1」に基づいてデータ交換を行っている。

 

 「全体のお取引先様約4000社のうち、買取仕入れのお取引様が約2000社ある中で、流通BMSに対応しているお取引先様は約300社です。お取引先様のほとんどは大手の卸売業者やメーカーで、金額ベースに換算すると買取仕入れ額の約80%に達します」と津田氏は説明する。

 

 流通BMSに取り組む直接のきっかけとなったのが、同社基幹システムの再構築だった。フロント系のPOSシステムやオンラインショッピングシステムを時代の変化に柔軟に対応できるよう最新のシステムに刷新したうえで、約30年来、メーンフレームで運用していたバックエンド系の会計システムや利益計算システムをオープン系システムに移行するタイミングと歩を合わせ、商品コード体系の再構築と仕入れの電子化に踏み切る。

 

 「システム再構築の流れの中で、流通BMS百貨店Ver1.0がリリースされたことから、百貨店業界で唯一の標準仕様、流通BMSにかじを切ることにしました」(津田氏)

 


 流通BMSに切り替えるに当たり、取引先に対して説明会を実施。09年と10年の2年間で約1300社に理解を求める。しかし、説明会では「本当に業界の標準になるのか?」と不安視する声が聞かれたことから、導入に意欲的な取引先を中心に個別訪問をしていく。

「09年当時は流通BMSを認知しているお取引先様が少なかったことから、『経産省がお墨付きを与えた百貨店業界で唯一の標準仕様だから安心です』と詳しく説明しました。また、お取引先様から情報を提供していただくことで、当社からも売上データが即座にお返しできるとメリットを訴えました。お取引先様訪問は、商品を仕入れるバイヤーでなく、法人営業の担当者やIT推進室のスタッフが担当し、無言のプレッシャーを与えない工夫もしています」と津田氏は苦労の一端を明かす。

 

 

導入で紙伝票削減、情報取得スピードアップ

 流通BMSに対応している取引先とは現在、3種類の接続方式を用いてデータを交換。大手の卸・メーカーとはサーバー同士を直接接続しているほか、中規模・小規模の取引先はサーバー型やPCクライアント型のパッケージを導入している。

 

 「お取引先様の多くは安価なPCクライアント型のパッケージを採用しています。当社推奨のパッケージを選択することで、簡単かつ低コストで導入できるので、お取引先様にも大きな負担をかけることはありません」(津田氏)

 

 


 流通BMSに対応していない取引先とは、百貨店専用のEDIフォーマットである「百貨店eマーケットプレイス(emp)」を用いて仕入れの電子化を実現しているほか、FAX OCRを利用して納品提案書をOCRで読み取り、デジタル化したデータを自動的に基幹システムに取り込んでいる。「FAX OCR環境を用意することで、納品伝票はすべて撤廃されました。ただし、OCRの読み取りチェックは人手を介しているため、瞬時にデータが取り込める流通BMSと比べてタイムラグが生じます。FAX OCRはあくまでも暫定処置であり、お取引先様には流通BMSへの移行を呼びかけています」と津田氏は語る。

 導入効果は、紙の伝票削減と情報取得スピードの向上の2つに現れている。今までパンチで打ち込んでいた仕入れ情報が電子化されたことで情報伝達が前倒しされ、全店舗の在庫数がほぼリアルタイムに把握できるようになった。また、本部から全店舗の仕入数や在庫数が把握可能となり、販売機会ロスが低減。粗利情報も翌日には把握できるので、意志決定の迅速化につながっている。

 

 

あらゆる顧客接点からサービスを提供する「オムニチャネル」を構想

 百貨店業界全体で見ると、流通BMSを導入済みの公開企業数は8社、導入予定の企業が2社(13年6月現在)と、決して多くはない。その原因を津田氏は「多くの百貨店の場合、メリットは理解していても、長年かけて最適化してきた独自のEDIがあるため、早急に切り替えるのは難しい。総論は賛成でも各論で二の足を踏んでしまう状況です」と分析。そのうえで「単独での導入はハードルが高いので、仕入れシステムの更改などのタイミングを見て切り替えてほしい。すでに導入を終えている企業も、後から続く百貨店のために標準外利用は避け、標準化を維持していくことが大切です」とメッセージを送った。

 

 髙島屋では次世代のIT戦略の柱として、店舗、通販、インターネットを問わずあらゆる顧客接点を通してサービスを提供する「オムニチャネル」を構想している。リアル店舗とインターネットなど複数のチャネルから、同じ商品がいつでも買えるようにすることで、付加価値を高めていく構えだ。津田氏は「多くのチャネルに対応するだけでなく、豊富な知識に基づく商品説明や、バラエティーに富んだ品ぞろえなど、百貨店ならではの品質を確保することが重要です。そのためには、情報の一元管理やビッグデータの活用といった技術要素が欠かせません。分析に利用するデータは、POS情報や業務情報といった内部データから、SNSの情報や位置情報といった外部データまで多岐にわたります。今後はビッグデータの分析手法をブラッシュアップしながら、商品開発、品揃えの強化、接客レベルの向上などにつなげ、百貨店らしさ、髙島屋らしさを追究していきます」と未来像を語った。

 

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