【成城石井】 成長戦略の一環として流通BMSを導入 受発注インフラを強化し、業務効果を向上

株式会社 成城石井
管理本部 情報システム部 部長

岸圭司 氏

 

 こだわりの品揃え、ユニークな店舗展開で成長を続ける食品スーパーマーケットチェーンの成城石井。同社では、最新の物流センター設立に合わせて、流通BMS導入を決定した。
 現在、500社超える全取引先のうち半数を超える約300社もの企業との流通BMSによる取引を実現。これら受発注と物流のインフラの刷新により、受発注業務を大幅に効率化し、本部経理部門や取引先などの受発注に伴う業務負担の軽減を実現している。

 

 

店舗拡大に伴って受発注および物流インフラの強化が課題に

 直輸入ワイン、チーズ、自家製惣菜、生鮮食品、輸入菓子など、日本はもちろん、世界中から厳選した高品質の食品を取り揃え、こだわりの品揃えで急成長を続ける食品スーパーマーケットチェーンの成城石井。また同社は、駅構内の小スペース店舗やデパ地下への積極的な出店など、ユニークな店舗展開でも知られており、首都圏から東海、関西地区に70店舗(2010年4月1日現在)を展開している。

 

 同社における流通BMS導入プロジェクトは、成長戦略の一環として大久保恒夫代表取締役社長のトップダウンにより2008年春にスタートした。

 

 「店舗数および出店エリアの拡大戦略を進めるなかで、それを支える受発注および物流インフラの強化が課題となっていました」と同社管理本部 情報システム部の岸圭司部長は語り、次のように解説する。

 

 「当社の他社にはない特徴のある品揃えを強みとしており、各店舗の在庫コントロールはとても重要です。以前は受発注のみのデータ交換であり、取引先からの出荷情報をデータとして受信できず、バッチ処理で仕入れ確定していました。そのため、情報がリアルタイムではなく、店の単品在庫が的確に把握できないという問題がありました。納品情報も伝票などの紙でのやり取りであったことから、その処理が業務負荷となっていたのです」

 

 他店にない珍しい商品を扱う成城石井の取引先は、小規模の企業、生産者が多くを占める。そこで、従来はこうした企業向けには主に独自のWeb-EDIを利用していたが、そのデータの入力作業が負荷となっていた。

 

「こうした問題を解消するため、2009年春の新物流センターの稼働に合わせて流通BMSの導入を推進し、仕入れ確定の早期化と在庫情報の精度向上、受発注に関わる業務の効率化を目指してプロジェクトに着手しました」(岸部長)。

 

 

導入のメリットを懇切丁寧に説明して納得

 成城石井で流通BMSの導入プロジェクトがスタートしたのは2008年5月。的確な在庫コントロールを可能にする新物流センター設立に着手。同時に、流通BMSの採用によりフォーマットを統一し、各店舗と取引先間で、発注に加えて出荷や納品・返品などのデータをリアルタイムでやり取りできるシステムの構築を進めた。従来から同社の業務システム構築に関わってきた複数のベンダーと毎週ミーティングを重ねると共に、同年8月に取引先を集めた説明会を2回に渡り開催した。

 

 だが、同社の取引先は500社以上に上る。しかも前述のように小規模の企業、生産者が多くを占める。そのため流通BMSの導入に理解を求める作業が最も大変であったという。実際、岸部長をはじめプロジェクトのメンバーが数100社もの取引先に電話して、導入のメリットを懇切丁寧に説明し、説得を続けたという。

 

 「2009年3月に流通BMSをスタートさせた際の取引先は260社でしたが、大手を中心とした約30社に対しては流通BMS対応機能を自社開発し、残りの約230社についてはパッケージソフトの活用で対応しました。しかし、相手先のPCの環境もそれぞれ異なりますし、リソース不足やセキュリティソフトが引っかかるといった問題もあり、サポートに想定外の手間がかかりましたね」と岸部長は当時の苦労を振り返る。

 

 

リアルタイムでの在庫把握で、販売機会の損失防止と顧客サービスの向上

 流通BMS導入の効果は着実に現れている。その第一は受発注業務の効率化だ。受発注システムの運用に関しては、自社サーバーでの独自運用ではなく、富士通FIPの流通BMS対応EDIサービス「TradeFront/AE」を利用。これにより、スムーズな流通BMSへの移行を実現し、各店舗における受発注時の業務負荷を大幅に削減できた。

 

 また、受発注データに限られていた従来の環境から、新物流センターとの連携で、出荷・納品データについてもスピーディーにやり取りできるようになり、的確な在庫把握が実現した。販売機会の損失防止に繋がり、さらに、小規模の店舗が多い同社にとっては、限られたバックヤードのスペースが有効活用できるようになったことも大きく、品揃えのさらなる充実と共に顧客サービスの向上にも貢献している。

 

 「検品作業や伝票計上がセンター側で一括処理し、取引先ごとの支払伝票などを自動的に起票可能となりました。仕入れ伝票の確定作業が効率化され、ほぼ伝票レス処理も実現。これにより本部の経理部門の残業が大幅に減少しています。さらに、取引先さんでも、オンラインで仕入れ確定するため、請求書の発行

が不要となり、作業軽減と共にペーパーレス化が進んでいるといいます」と効果を説明します。


 

今後について岸部長は、「当社ではそれほど商品点数は多くないのですが、生鮮についても流通BMS対応を検討しています。ただし、流通BMSは利用者の拡大があってこそ、最大のメリットを発揮しますが、現状では、まだ十分にそのメリットを享受できません。個々の企業努力だけでは普及に限界もあるので、是非、業界全体を巻き込んだ動きを活発化させて流通BMSの普及を図り、本当の意味で流通に関わる企業のインフラとなってもらいたいですね」と語る。

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