2012年度流通BMS普及推進説明会 in 東京  -標準外実例の解説と標準採用の効果-

 流通BMSの普及につれてクローズアップされつつある「標準外利用」問題。流通BMSの業務プロセスを利用していても、標準仕様の内容に沿わない標準外利用が増えると、小売側、卸・メーカー側の双方にとって不利益が生じかねない。そこで、今年1月24日に開催された流通BMS普及推進説明会では、流通BMS協議会が、標準外利用の状況と実際の実例を紹介。同時に、生活用品メーカーの花王グループと食品卸の伊藤忠食品が、それぞれの流通BMSの導入状況と標準外利用の実態について明らかにした。

 

 

調査で判明。「運用ルールがない」「意図的な」標準外利用

 

 導入企業が小売業で135社、卸・メーカーで5200社を突破した流通BMS(2012年12月現在)。普及が進むにつれて、小売業と卸・メーカーとの間で標準外利用の課題が浮上してきた。特に小売側で標準外利用が増えると、卸・メーカーが小売別の仕様となってしまうため、流通BMSの導入・運用に対する負担増が懸念される。流通BMS協議会が11年度の導入実態調査での指摘を基に追加で実態を調査したところ、標準外利用には「標準的な運用ルールがないもの」と、標準で決められているにもかかわらず「意図的に標準外の使い方をしているもの」の2種類があることが分かった。

 

 そこで現在、標準的な運用ルールがないケースについては、卸の業界団体が標準ルールの必要性について議論を進めている。一方、意図的に標準外の使い方をしているケースについては、継続して調査を実施。小売、卸・メーカーの認識不足によるものかどうかなどを改めて判断している状況だという。

 

 また協議会では12年度、標準外利用の調査・分析と対応策を検討することを目的に、支援会員の有識者によるタスクチームを編成。卸・メーカーへの調査を通して、現状の把握に努めている。さらに同協議会のホームページに「標準外利用投書箱」を設置し、積極的な情報提供を求めていることを明らかにした。

 

 今回の説明会では、今まで寄せられた標準外利用事例の中から、以下の9つを代表的な事例として紹介し、注意を呼びかけた。そして最後に「個々の企業によってすぐに対応できない事情があるなら、今すぐにとは言わないものの、小売と卸・メーカーの双方が流通BMSのメリットを早期に享受するためにも、既存システムの拡張や改修のタイミングを見て速やかに改めてほしい」と訴えた。

 

事例1 「自由使用欄」を利用したシステム制御

「自由使用欄」「自由使用欄半角カナ」「ラベル自由使用欄半角カナ」にシステムの処理が発生する内容がセットされているケース。卸・メーカーは、取引内容に対して個別の判断を強いられる。

 

事例2 「直接納品先コード」を納品先に合わせて変更

「直接納品先コード」に商談時に定めた納品先を入れず、小売の都合に合わせて変更してしまうケース。卸・メーカーは、手作業で変更しなければならない。

 

事例3 「取引付属番号」に「取引番号(発注・返品)」をセット

「直接納品先コード」に商談時に定めた納品先を入れず、小売の都合に合わせて変更するケース。卸・メーカーで再セットが必要となる。

 

事例4 欠品レコードの受信拒否

小売から注文を受けた卸・メーカーが、欠品レコードを送信すると、小売で受信エラーとなるケース。

 

事例5 「出荷梱包」のまとめ返信

小売からの発注情報が別々であるにもかかわらず、卸・メーカーが同一商品、同一納品先、同一納品日で受注した情報をまとめて返信してしまうケース。

 

事例6 「ITFコード」の半角スペース

ケース納品でない場合、小売が卸・メーカーに「ITFコード(集合梱包GTIN)」を標準仕様にない半角スペースで埋めることを指示するケース。

 

事例7 「最終納品先コード」の目的外利用

「最終納品先コード」に、小売が管理する「店舗コード」や「売場担当者コード」が入っているケース。

 

事例8 未使用の項目のXMLタグ

未使用の項目のXMLタグを入れたり削除したりすることでエラーになるケース。

 

事例9 商品区分の値を変更

「商品区分」のセット値を、卸・メーカーが「取引付属番号」を判断して勝手に変更してしまうケース。

 

 

花王グループでの標準外利用の状況と追加提案検討事項

 

 花王製品の販売事業を行っている花王カスタマーマーケティングの斎藤和志氏が、花王グループの流通BMSと流通外利用について説明した。

 花王グループは、06年に経済産業省の事業として行われた流通システム標準化事業の共同実証に参加し、07年から小売業2社と流通BMSによるデータ交換を開始した。その後も順次対応先を拡大し、12年12月現在で94社、売上構成比では29%の取引を流通BMSで取引きしている。今年も同様に拡大を続ける見込みで、1月末時点ですでに20社近くが対応を終えている状況だ。

 しかし、対応先の拡大が進むにつれて標準外利用も増加。12年12月の時点で9%の取引先で標準外利用が発生しているとのこと。その内訳について斎藤氏は主に3つあるとし「1つは既存の小売システムが変えられないために発生する別用途での利用。2つめは元々標準化されていないもの。例えばオフライン受注や納品伝票要請などだ。3つめは不要タグ、欠品行不要といった項目の解釈の相違によるもの」と実態を語った。

 

 こうした状況について斎藤氏は「現在は小売と卸・メーカーの双方が、社内システムや社内運用プロセスへの影響を避けるため、または解釈の違いのために、標準外利用を選ばざるを得ず、移行過渡期ならではの押しつけ合い状態」と分析する。

 

 流通BMSの真の目的である「日本の流通を強くする」を達成するうえで、標準外利用は今までの努力が水泡に帰してしまいかねない。「流通が変われるかどうかの過渡期にある今こそ、小売と卸・メーカーの協力が必要で、双方が標準化の意味を深く理解することが重要。特に、両者を取り持つ小売業のシステム担当者(ITベンダー)がキーマンになる」と斎藤氏は強調した。

 

 花王グループでは現在、経営トップの号令の下、標準化に対する社内勉強会を実施し、非効率性の解消に取り組んでいる。12年6月からは情報指向型卸売業研究会で「標準運用への提案と啓蒙」をテーマに掲げ、標準運用ルールにないものについては、流通BMS協議会に提案を策定してきた。また、3PL事業者を交えた勉強会では、物流プロセスの標準化について話し合いを進めている状況だ。

 

 最後に斎藤氏は改めて「流通BMSが標準インフラとなるように、製配販の業界を挙げて進化させていきたい」と語った。

 


伊藤忠食品の標準外利用対応状況と日食協の取り組み

 

 続いて、食品卸大手の伊藤忠食品の流通BMS活用事例について、同社情報システム部の竹腰雅一氏が解説を行った。

 伊藤忠食品も、06年の経産省共同実証事業に参加し、07年から4社の小売業と流通BMSによるデータ交換を開始。今年1月現在の流通BMS対応先は、33社に達している。同社は、流通BMSに対応したEDIシステムを「サーバー-サーバー型」モデルで構築しており、柔軟な運用体制を継続してきた。

 流通BMSの導入効果について竹腰氏は「取引先の小売業ごとに必要な個別プログラムの開発がなくなり、開発期間が3分の2に短縮した。また、電話回線からインターネット回線に切り替わったことで、通信時間の大幅な削減が実現。50分かかっていたデータ通信が、1、2分に激減した」と語る。

 

 しかし標準外利用も発生している。手書き発注に対して出荷データの送信を要求される、伝票レスになったが伝票と同じ納品明細を要求される、発注訂正内容が小売から発注メッセージとして送信されてくる、項目の標準外利用を要求される、といった事例を紹介。個々の要求に対応することで、開発工数の削減効果が出ない場合があることを説明した。

 

 発注データによらない受注分の出荷メッセージに対して竹腰氏は「手書き発注が必要な場合は、いつまでに廃止するのか期間を明確にしてほしい。また、リクエストがあるなら、小売からも中身をまとめたうえで何らかの仕様を示してもらえるとありがたい」と要望する。こうした前提条件を踏まえたうえで、「日本加工食品卸協会のEDIワーキンググループでは、発注データのないものに対する出荷メッセージの設定項目を独自に検討中」と説明、策定に向けた取り組みが進んでいることを明らかにした。

 

 

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