「普及」から「活用」へ。第1回「流通4団体 流通BMS活用説明会」がスタート

 日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、新日本スーパーマーケット協会、日本ボランタリーチェーン協会の流通4団体では、2012年1月から7月にかけ、全国で「流通BMS普及説明会」を開催してきた。こうした努力が結実し、流通BMSは小売業のスタンダードな受発注形式となり、13年はいよいよ本格的な活用時期を迎えようとしている。流通4団体は、今年を「普及」から「活用」に向けた第2フェーズと位置付け、より実践に即した内容を訴求していく考えだ。その1回目となる説明会が1月25日、東京都港区のSCSK青山ビルで開催された。

 

スーパーマーケットの2020年を予測する「シナリオ2020」

 

 日本スーパーマーケット協会の大塚明専務理事は、同協会が10年先のスーパーマーケット業界の課題と展望をまとめた「シナリオ2020」に沿った基調講演を行った。同氏は「日本でスーパーマーケットが産声を上げて約60年。当初は、欧米に追いつき、追い越せを合言葉に近代化を進めてきた。しかし市場が成熟した今、日本のスーパーマーケットにお手本は存在しない。今こそ、後追い型のビジネスモデルから、未来志向のビジネスモデルに変革すべき」と語った。そして、日本人の消費動向は「画一化」の時代から「差別化」の時代を経て、一人ひとりが自己発見や自己実現を目指す「個性化」の時代に突入したことを指摘。こうした中で、小売業に重大な影響を及ぼす社会要因として、「顧客の変化」、「法令の新設・改廃」、「ITの進化」の3つを挙げた。

 


 その中でも、スーパーマーケットの未来を占ううえで避けて通れない要素が、「人口の減少」による環境の変化だ。日本の人口は急速に減り続け、35年までに約1700万人、55年までに約2100万人が減ると予測されている。その結果、単身世帯や高齢者世帯が増え、消費行動にも変化が現れるのは間違いない。こうした状況を受けて大塚氏は「成長を前提とした出店戦略や、数の論理に立脚した出店戦略は通用しなくなる。これからは「モノ」の消費から、「コト」の消費へと脱皮を図ることが重要」と語った。

 同氏はさらに10年後のスーパーマーケットに求められる要素として「脱コモディティー化」を挙げ、「生活を維持する消費から、楽しむ消費へと切り替えが進む中、物販と融合した新しいサービスや、地域を巻き込んだエリアブランドの確立など、新たな施策を通して消費の活性化を図っていくべき」とアドバイスを送った。

 

 IT戦略の重要性についても触れ、スマートフォンやデジタルサイネージなどの情報端末を活用した情報提供や、SNSなどのソーシャルメディアを利用した情報発信など、ITを活用したスーパーマーケットの未来像についてもイメージを示した。

 

 日本スーパーマーケット協会では、これまでの検討結果を業界における5つの課題と7つのミッションにまとめているが、厳しい経営環境を乗り超えるためには「標準化が重要」と大塚氏は改めて指摘。「自社の方法にこだわる時代は終焉を迎えた。インフラ基盤など、業界で共有できるものは標準化し、サービスの内容や、売り場戦略などで競争力を高めていくことが、20年に生き残っているための鍵となる。その意味でも業界標準の流通BMSを早期に導入し、スーパーマーケットを夢のある業態に再生するために、経営資源を集中してほしい」と語った。

 

 

セイミヤ、旭食品、イオングループが最新の導入事例を発表


 説明会では、スーパーの株式会社セイミヤ、食品卸の旭食品株式会社、GMSのイオングループが導入事例を発表した。

 

 茨城県と千葉県で12店舗のスーパーマーケット(SM)と、5店舗の大型スーパーマーケット(SSM)を運営するセイミヤでは、08年から基幹システムのダウンサイジング化に着手してきたが、その最後に残ったのがEDIの導入だった。導入前の課題について情報システム部部長の勢司秀夫氏は「モデムの保守、通信時間の長さ、従量課金による取引先への負担など、JCA手順の限界を感じていた」と振り返った。流通BMSについては、06年より流通サプライチェーン全体最適化促進事業成果報告会などに積極的に参加。「今回こそ、本気で標準化が進められているのではないか」という期待の下、流通BMSの導入を決断。ITベンダー9社の中から、初期費用、導入実績、サービス体制などを評価して、クラウド型サービスを導入し、11年8月から本稼働を開始している。

 

 12年10月現在、流通BMS対応している取引先は40社。流通BMS化率は25%だが、取引金額でみると50%以上を占めているという。導入効果については、通信時間の短縮や通信コストの削減、仕入伝票削減による消耗品コストの削減などを挙げる中、標準化の実現が最も大きな成果と勢司氏は指摘。「流通BMSが普及するにつれて、導入価値は高まっていくだろう」と語った。

 

 一方、卸からみると、JCAや全銀手順によるデータ交換は現在でも90%以上を占め、流通BMSやWeb-EDI化率は依然として低いと指摘。さらに、標準外仕様の問題をクリアしていくことも今後の課題と強調した。

 


 旭食品は、ホスト系で運用していた統合受発注システムから、EDI領域を「新集配信システム」として切り出し形で、07年に流通BMSに移行。12年12月時点で35社と流通BMSによるメッセージ交換を行っている。導入効果について情報システム本部 情報管理部部長の竹内恒夫氏は「取引先追加時の導入期間がJCA手順で約10日かかるところを、流通BMSなら4日間で終わる」と導入コストの低減効果を強調。また、リースで利用している伝票用プリンターの5年間の導入費、保守費の総額が、前回比で約2億5000万円削減できたことを語った。



 イオングループでは、12年12月末までに流通BMSに完全移行し、13年にはJCA手順のEDIシステムを停止する移行方針を掲げてきた。移行期間が終了した13年1月末時点で、流通BMSの完全対応を終えている企業はEDIによる取引先約2000社のうち約1400社、テスト中の企業約600社を合わせると、92.5%が予定通りの移行を終えた。イオンアイビス株式会社の北澤清氏は「未対応または現在状況を確認している取引先は約160社あるが、元々データ交換の量が少なく、FAXでも十分に対応できることから、ほとんど影響は出ていない」と語り、現在も流通BMSへの移行を呼びかけていると説明した。

 

加工食品卸協会が流通BMSの本格導入に向けて新たな取組みを開始

 

 一般財団法人流通システム開発センターの坂本真人氏からは、流通BMSの概要解説と、最新の普及状況の報告があった。それによると、流通BMSの導入企業名公開社数は、小売業で135社。卸・メーカーについてはITベンダーの導入実績から12年末時点で5232社が導入済みであるとした。

 


 説明会を締めくくる最後の挨拶には、一般社団法人日本加工食品卸協会の奥山則康専務理事が登壇。奥山氏は、流通BMSの導入状況を振り返り、小売業に実施したアンケート結果で「流通BMSに対応できる取引先(卸・メーカー)が少ない」という意見が多くを占めたことにショックを覚えたと説明。そして「立場上、卸は受け身に回ることが多く、積極的に流通BMSへの導入を訴えて来なかったことを反省している。ともすれば、個別対応を求める小売業に対して、対応能力があることを競ってきた一面も否定できない。13年はこうした姿勢を改め、日本加工食品卸協会として全力を挙げて流通BMSの普及に取り組む」と宣言した。

 具体的には、3点の重点項目をピックアップ。流通BMSの普及説明会や、各種イベントなどに積極的に出向き、導入事例の紹介などを通して、卸側から流通BMSの導入メリットなどを訴求していくほか、日本加工食品卸協会のホームページを通して参加会員の対応状況を公開していくとした。また、小売業の担当者と直接コンタクトを取る営業担当者に対しても、流通BMSに関する教育を実施。「営業担当者の理解を深めることで、小売業のバイヤーに流通BMSによる接続を要望していく」と決意を述べ、流通BMSの普及と活用を呼びかけた。