【東海漬物】 流通BMSの早期検討・着手により、取引先からの要望にもスムーズに対応

東海漬物株式会社
経営企画室
室長

野尻 雅文氏

 

経営企画室
主事

村上 修司氏

 

経営企画室
主事

大村 昌司氏

 

経営企画室
主任

西川 和寿氏

 

「きゅうりのキューちゃん」「こくうまキムチ」などの漬物商品でおなじみの東海漬物。大手・中堅スーパーマーケットとの直接取引比率が高い同社は、流通BMSの重要性を早くから認識。2010年には流通BMS対応EDI(電子データ交換)パッケージを導入し、大手スーパーマーケットと流通BMSに基づくデータ交換を開始した。現在、流通BMSでデータ交換を行っている取引先は大手スーパーマーケットを中心に5社にのぼり、通信の安定性や通信時間の削減などで成果を上げている。

 

 

 

直接取引の小売店が多い業務特性上、流通BMSの早期対応が急務に

漬物王国として知られる愛知県で、1941年に誕生した東海漬物。創業以来、野菜を素材とした、ごはんに合う、コクとうまみのある高品質な漬物を提供してきた。現在は「純日本品質」をブランドスローガンに、日本の食卓に新たな価値を提案することを目指している。ロングセラー商品の「きゅうりのキューちゃん」は62年の誕生から今年で50年。伝統の味を守りながらも消費者の嗜好に合わせて「かつおだし風味」をリリースするなど、バリエーション拡大にも余念がない。近年は、国産白菜100%を使用した「こくうまキムチ」が代表商品に成長し、「プチこくうま」と合わせてキムチのカテゴリーでトップシェアを獲得している。

 

創立以来、卸業者との取引と並行して小売店との直接取引を積極的に推進してきた同社は、20年以上前から日本チェーンストア協会(JCA)が定めたJCA手順に基づくEDI化を進めてきた。同社経営企画室 室長の野尻雅文氏は「直接取引している小売店の数が数十社あります。そのため取引先との受発注業務のシステム化は早い段階から進めており、EDI化率は売上高ベースで40%に達しています」と説明する。

 しかし、従来型のEDIは取引先ごとに異なるフォーマットに対して個別のシステム対応が必要となり、構築や導入後の運用面で多大な負担がかかっていた。また、電話回線を利用するため、通信速度も最大9600bpsが限界で、データのやり取りに時間がかかる。経営企画室 主任の西川和寿氏は「小売店の発注のタイミングが重なってくると、データの受信が集中し、通信が混み合うことがありました」と振り返る。

 

 同社が流通BMSに関心を持ち、導入に向けて調査検討に入った時期は2009年からと、メーカーの中でもかなり早い。その理由を野尻氏はこう明かす。

「09年10月に流通BMSのVer.1.3がリリースされ、それをきっかけに流通BMSの導入が小売店に本格的に拡大することが予測されました。小売店との直接取引が多く、EDI化率が高い当社の場合、小売店からいつ流通BMS対応の要請が寄せられるかわかりません。当時は作業負担もコストもまったく見当が付かなかったことから、準備だけでも早く進め、いつでも対応できるようにしておく必要があると考えました」

 

 

流通BMS対応EDIパッケージを基幹システムと同一プラットフォーム上に構築

 

本格的な導入に備えて早くから準備を進めていた同社は10年5月、取引先のひとつである大手スーパーマーケットから流通BMS対応の要請が寄せられたことをきっかけに本格的な導入に着手。中核となるシステムとして、データ・アプリケーションの流通BMS対応B2Bサーバー「ACMS B2B」を採用した。システム構築のポイントについて経営企画室 主事の村上修司氏は「運用負荷の低減や、シームレスなデータ連携を考慮した結果、別途PCサーバーを立てるのではなく、基幹システムと同一のプラットフォーム(メインフレーム)上に組みこむことを選択しました」と語る。

 

 流通BMSの導入は経営層の理解もあり、比較的スムーズに進んだ。「経営層は、我々が危機意識を持って臨んでいることに対して、十分に理解を示してくれました。ただし、今後流通BMSに対応する取引先が増えるにあたり、すべての開発を外部ベンダーに委託しているとコスト高になることから、2社目以降は原則自社内でシステム化対応していくことを条件に了承を得ました」(野尻氏)

 

流通BMSのノウハウ取得に関しては、導入が初めてということもあり苦労は絶えなかったという。経営企画室 主事の大村昌司氏は「特にデータのマッピング作業で苦労しましたが、1社目の導入時に開発パートナーから流通BMSの基本からデータフォーマットに関することまで詳しく教えていただきながら覚えていきました。そして2社目、3社目と導入先が増えるごとに理解を深め、現在も継続してノウハウを蓄積している段階です」と説明する。

 

流通BMS対応の取引先拡大に期待

同社は10年9月に1社目の大手スーパーマーケットと流通BMSによる取引を開始して以降、取引先の要望に応じて順次対応を進めてきた。そして12年8月現在、大手スーパーマーケットチェーンを中心に5社と流通BMSによるメッセージ交換を行っている。

 

 導入の効果については、通信機器(モデム)の保守業務から解放されたほか、通信品質の向上と通信速度の高速化が実現するなど、一定の成果が得られた。

「従来のJCA手順では、通信が混み合う時間だったり、相手先が話中だったりすると、データ交換のスケジュールに遅延が発生していましたが、流通BMSに移行してからは瞬時にデータ交換が終了するため、余裕を持って作業ができるようになりました」(村上氏)

 早期導入が実現したことに対して、経営層からの評価も高く「流通BMSという言葉が、流通業界に浸透していない頃から調査を進め、早い段階で対応できた先見性については経営層から評価の声が届いています」と西川氏は胸を張る。

 今後の方針については、取引先である小売店の要望に応じて流通BMSへの対応を順次拡大していく構えだ。11年の製配販連携協議会で大手スーパーマーケットが「流通BMS導入宣言」を発表以降、大手スーパーのイオンを筆頭に、流通BMSの対応を表明する小売店が増えていることから、同社においても導入スピードは加速することは間違いない。こうした状況を受けて野尻氏は最後にこうメッセージを送った。「流通BMSでデータ交換する取引先が増えていくことで、標準化のメリットが本格的に得られるようになります。そのためにも対応する小売店が早いペースで増えることを望んでいます。ただし、標準ルールから逸脱して特別対応が進むことがないよう、導入企業には業界で定められた標準を遵守して欲しいと思います。流通BMS協議会には流通BMSを導入することで私たちメーカーが得られるメリットについて、今以上に積極的にアピールしていただくことを期待しています」

 

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