【ちふれ化粧品】 取引先の要望に対応できる流通BMS環境を、最小限のリスクで構築

株式会社ちふれ化粧品
業務統括本部 物流管理部
副部長
奥田 良和 氏

 

 約40年前、100円化粧品からスタートし、現在も高品質で適正価格の「正しい化粧品」を送り続けるちふれ化粧品。全国の有名百貨店、スーパーマーケット、ドラッグストアなどを主要取引先とする同社は、流通BMS用のPCサーバーを導入し、2011年秋から大手流通事業者とデータ交換を開始した。流通BMSの導入によって同社は、通信コストや伝票コストの削減を実現している。現在、流通BMSでデータ交換を行っている取引先は2社だけだが、2012年中にはさらに3社が加わる予定だ。

 

取引先のJCA手順廃止に伴い、流通BMSへの対応が急務に

 

 1947年創業のちふれ化粧品は、68年に日本を代表する消費者団体の全国地域婦人団体連絡協議会と提携して「ちふれ化粧品」を開発。以来、誰もが安心して使え、手に入れやすい価格の化粧品を全国の消費者に提供している。現在の取引先は300社を超え、量販店、ドラッグストア、百貨店の3つで売上全体の9割におよぶ。販売ネットワークは、量販店、ドラッグストアを合わせて約1万1000店舗、百貨店を含む対面販売240店舗、直営店10店舗を全国に展開し、現在も販売ネットワークの拡大を進めている。

 

 ちふれ化粧品が従来型EDIで受発注業務を行っている取引先は、全取引先の半数にあたる約150社で、その内訳は自社受信が約130社、VAN業者経由の受信が20社となっている。通信プロトコルは、JCA手順、全銀TCP/IP、Web-EDI、百貨店系オンラインなどさまざまだ。

 

 従来型EDIでは、モデム、TA、ルーターを経由して、ホスト環境上に構築した基幹システムにデータを転送し、受注・出荷処理を行っている。こうした中、主要取引先の1社である大手流通事業者が、2012年末までに既存のJCA手順から流通BMSへの完全移行を表明したことから、ちふれ化粧品においても流通BMSへの対応が急務となった。

 

 

役員会で流通BMSのコスト削減効果を丁寧に説明して説得

 

 流通BMSの導入にあたり、ちふれ化粧品は数社のベンダーにシステム化の提案を依頼。その中から、初期費用をなるべく低くすることと、開発を最小限におさえることに重点を置いてベンダーの選定を行い、ユーザックシステムの「EOS名人.NET」の導入を決めた。導入にいたるまでには、役員会での説明に半年の期間をかけ、最終的な決裁を受けている。経営層にとって、流通BMSの導入は新たな投資となるため、慎重にならざるを得ない。導入担当者にとって乗り越えるためのハードルは決して低くないが、導入を推進した業務統括本部では営業部隊の支援を受けるなどして、決裁までに4回の説明を行っている。

 

 「役員会では、なぜ流通BMSでなければならないのか、なぜ今取り組むべきなのかを丁寧に説明しました。最終的に、流通BMSの将来性や、経費削減のメリットなどが理解され、ようやくゴーサインが出ました」(奥田氏)システムの開発は、2011年8月からスタート。約2カ月の開発・テスト期間を経て、2011年11月より大手流通事業者と流通BMSによるメッセージ交換を開始した。通信手順は、既存業務の流れを変えないことを考慮し、データを定期的に取得しにいくJX手順を採用している。

 

1社との取引で年間270万円のランニングコストを削減

 

 流通BMSの導入により、ちふれ化粧品は通信コストの削減と、伝票コストの削減を同時に実現した。流通BMSに対応した大手流通事業者とは、それまでVAN事業者経由でデータ交換を行っていたが、流通BMS導入によってVANの委託費用を払う必要がなくなり、月間20万円強、年間にすると約250万円の削減効果が現れている。また、複写式の伝票がなくなった結果、年間で20数万円のコストが削減される見込みだ。伝票レスは、伝票作成に関わる間接コストの削減にもつながるため、効果はさらに高まると見ている。

 

 「通信コストや伝票コストなどの削減により、初期投資は2年程度で回収できる見込みが立ちました。今後2社、3社と取引先が増えても大がかりなコスト増にならないため、費用対効果が上がっていくことは間違いありません」(奥田氏)

 

 その他、システム化によって取引先の要望に迅速に対応できるようになり、取引先との関係強化が実現している。また、インターネット回線による通信時間の短縮によって受注処理計上の早期化が可能となり、出荷作業の開始が早まった。

 

 ちふれ化粧品ではその後、ホームセンター1社と流通BMSによる受注メッセージの交換を開始。2012年3月現在、流通BMSでデータ交換を行っている取引先は2社となっている。2012年中にはさらに3社が加わり合計5社となる予定で、今後も取引先の要望に応じて随時対応範囲を拡大していく考えだ。また、将来的にはホスト上の基幹システムからJCA手順で実行しているデータ交換の領域を切り離し、システム全体の運用効率や安定性を高めていく構想を描いている。

 

 流通BMSの導入を検討している卸・メーカーは少なくないが、流通に関わる事業者として最も気をつけるべきことは、リスクを最小限に抑えた導入だ。手段を誤ってしまうとシステムに障害が発生し、お客様に商品が届かないという最悪の事態を招くことにもなりかねない。ちふれ化粧品ではこうしたリスクを最大限考慮した結果、既存のシステムに手を加える領域を極力減らす手段を選択している。VAN事業者とのデータ交換のインターフェースをそのまま流通BMSでも利用する考えだ。そのため流通BMSメッセージをデータベースとして保持し、データ変換機能の扱いやすさをパッケージソフト選定基準とした。こうした考え方は、流通BMSの導入を考えるすべての流通事業者の参考になるだろう。

 

 最後に奥田氏は「経営層の説得は、担当者にとってハードルの高い作業となりますが、丁寧に説明することで理解は得られると思いますので、情報収集を万全にして前向きに取り組んでください」とメッセージを送った。

 

 

 

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