【伊藤忠食品】 サーバ・サーバ間のプッシュ型通信で発注データの即時受信が実現

伊藤忠食品株式会社は、酒類・食品の卸売を主要事業とする総合商社だ。伊藤忠グループの一員として、酒類・食品の卸売とそれに伴う商品の保管、運送ならびに各種商品の情報提供、商品流通に関するマーチャンダイジング等を主とした事業活動を展開している。

 

事例のポイント

・サーバ・サーバ型の自社システムを構築
・プッシュ型通信により発注データの早期取得が可能になり、出荷作業の効率化が実現
・物流ラベルの標準化実証を検討中
・預かり在庫の標準化実証を検討中

 

導入概要

食品スーパー7社との間で流通BMSを導入
 伊藤忠食品では、2008年12月現在、2007年の共同実証で接続したイオン、平和堂、ユニーの3社に加え、近商ストア、ベイシア等、4社のスーパーを加えた合計7社との間で流通BMSを導入済みだ。今後、イズミヤとも流通BMSによる運用を開始する予定という。現在、7社のスーパーとは、「発注」「出荷」「出荷梱包」「受領」「請求」「支払」「返品」の7種類のメッセージを交換している。


運用の柔軟性と自由度の高さを求めて自社サーバ型を採用
 伊藤忠食品は、サーバシステムを自社で構築し、各スーパーとはサーバ・サーバ型で接続している。自社でシステムを構築した理由を、伊藤忠食品 情報システム部 竹腰雅一部長は「根本的な思想として、各スーパーと直接取引がしたかったから」と明かす。


 「ASPを利用すると、間にASP業者が間に入ることになる。すると、当社とスーパーの間のデータが固定長に近い状態になり、結果的に自由度が損なわれることを危惧した」(竹腰氏)と自社サーバのメリットを強調した。


 システムの構築に要した期間は最初の実証参加時で約6カ月。その後のスーパー追加については、約1カ月で導入できたという。「追加時、スーパーの担当者と直接顔を合わせたのは1回のみ。いったん導入してしまえば、追加はかなり楽になるだろう」と竹腰氏は話す。

 

 

導入効果

標準化によって変換プログラムの運用・管理が楽になった
 メッセージが標準化されたことで、変換プログラムの開発と維持管理の手間やコストの削減につながっている。伊藤忠食品では、今までスーパー個別のEDI仕様に対応するために数千にもおよぶ変換プログラムを開発して運用・管理していたが、流通BMSによって100本前後まで削減できたという。また、新しいスーパーとの間でBMSを導入する際も、個別に調整する部分が少なくなり準備期間が短縮できている。


受信時間の前倒しが実現
 高速なインターネット回線を利用することで送受信にかかる時間が短縮され、受信時間の前倒しが実現したことも大きな効果だ。「サーバ・サーバ間のプッシュ型通信により、スーパーが発注データを準備した瞬間に卸側が受信できるようになった。その結果、納品のリードタイム短縮につながっている。あるスーパーとの取引では、今まで受信からピッキングまで50分程度要していたが、わずか数分で終わってしまう」と竹腰氏は効果の大きさを実感している。


 また、受注データの受信時刻が前倒しされた結果、業務効率も向上した。「以前は朝8時にデータが届いていたものが、今では朝6時に届いている。社員が出社した時点で発注データが手元にあるため、出荷作業に素早く取りかかれるようになった」(竹腰氏)。

 

 

今後の課題

物流ラベル及び預かり在庫の標準化実証をスタート
 伊藤忠食品では、現在、ユニーと共同で物流ラベルの標準化を進めている。「新しい物流センターを2009年の1月、2月に立ち上げる予定なので、それに合わせて実証を始めたい。また、同じ時期にイオン、近商ストアとは預かり在庫の実証を始める予定だ」(竹腰氏)。


電子証明書の簡易的な公開を期待
 今後の流通BMSに期待することとして、電子証明書更改の簡素化を挙げた。「電子証明書は有効期限が3年間で、当社とスーパーが同時に更新する必要がある。対象となるスーパーが少なければ手作業でも何とかなるが、これ以上増えると手間がかかって仕方ない。今後、電子証明書の簡易的な更改の仕組みが実現することを期待したい」と竹腰氏は話している。

 

 

 

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