【ヤクルト本社】 小売からの流通BMSに対応要請に即応できる体制を整備

株式会社ヤクルト本社
業務部 計算センター 所長
石川 康 氏

 

株式会社ヤクルト本社
業務部 計算センター
石毛 祐樹 氏

 

 流通BMSは小売業だけでなく卸、メーカーと、流通三層間のビジネスプロセスをシームレスに接続して、業務の効率化と高度化を目標としている。各業態の小売業が流通BMS導入を進めているが、それに呼応して、卸、メーカーも流通BMS対応をはじめている。そこで今回は、大手メーカーの取り組みとしてヤクルト本社を紹介する。同社における流通BMS導入の取り組みはまだ初期段階だが、すでに小売3社との対応を完了し、さらに大手2社との接続も先方の要請があり次第、対応を行う予定としている。

 

 

EOSの見直しの一環として流通BMSに対応

 

 世界30ヵ国以上で販売を行うヤクルトグループ。日本国内だけで毎日800万本もの乳製品を販売する同社の物流は、4万人のヤクルトレディによる宅配が中心の販売と、約5万店の量販店を通じた販売とに大別される。現在も、ヤクルトレディの宅配が主体の同社において、量販店チャネルの売上比率は2割程度ではあるが、今後の拡大を見込む重要な販売チャネルと位置づけている。

 

 ヤクルト本社がEOSの構築と取り組み始めたのは1980年代の初め。メインフレームをベースに第一世代のシステムスタートし、2003年には第二世代となるUNIXベースの新量販店システムを導入してきた。しかし、このシステムが更新期に差し掛かる中で、取引先の追加・変更や帳票デザイン、Web-EDIへの対応といった、さまざまな要求への柔軟な対応、また、EOSに関わる業務の自動化、省力化といった課題が浮き彫りになってきた。そこで、2年ほど前から第三世代となる量販店取引システムへの見直しを開始し、その一環として流通BMSへの対応を進めることとなった。

 

 

システムのわかりやすさを重視して製品を選定

 

 UNIXベースの量販店システムを見直しする中で、課題となったのがサーバーのスムースな更新が難しいという点だった。 「従来のサーバーを新サーバーに移行するには、同じメーカーの製品でありながらレガシーEDIの移行作業にかなりの負荷がかかるだけでなく、ソフトウエアのライセンス料金も高く、移行費用が大幅に上がってしまうことが分かリました。そこで、複数のベンダーさんの提案を検討した結果、Windowsベースのシステムで、ユーザックシステムの『EOS名人.NET』採用を決定しました」と業務部 計算センター 所長の石川康 氏は説明する。

 

 同製品の採用はヤクルト本社が初であり、不安も少なくはなかったと思うが、「前例がない分、システム構築に当たっては、お互いに意見を出し合い、共に創り込んでいけたというメリットの方が大きかったですね」と石川氏。

 計算センターの石毛祐樹 氏も、「実際、導入および移行にかかるコストは半減し、導入後もWindowsベースのため、運用・管理やメンテナンスのかなりの部分を自分達で行える点もメリットでした。特に、システムの分かり易さを評価しました」と強調する。

 

 流通BMS対応に取り組む上で、製品選定についてのアドバイスを石毛氏に尋ねると、「まず、製品選定の前に社内の方針と課題を明確にして、そのテーマに確実に対応してくれるパートナーを選択することでないでしょうか。そして、とにかく使いやすい製品を選択することです。特に自社にとって本当に必要な機能が使いやすくて業務に合わせて融通が利く、柔軟性の高い製品を選択することが大切です。いくら機能が豊富な製品でも、使わない限り宝の持ち腐れになりますから」と語ってくれた。

 

 

現状は3社への対応だか先方の要請に即応できる体制を整備

 

 導入製品を決定したのは2008年秋。実際のシステム構築は2009年の年初にスタートし、現在も、第三世代となる量 販店取引システムの構築を進めている最中で、6月には本稼動を開始する予定だ。このうち流通BMSへの対応作業については、実質、2週間弱で終了したとい う。現在、流通BMSの対応を完了している小売は、CGCジャパン、西鉄ストア、成城石井の3社だが、さらに、イオン、ダイエーとも仕様を確認している段 階にあり、先方の要請があり次第、テスト稼動をスタートさせたいとしている。

 

 「今回、流通BMSに対応したことの最大のメリットは、通信速度の向上です。最近は、当日に発注して当日に納品し てくれという要求も少なくありませんから、通信にかかる余計な時間は業務の大きなロスでした。特に大手の要求に応えるのはかなり厳しいのが現状です。も し、1時間もかかる通信の最後にでもエラーが発生したら、目も当てられません。これも数時間が数分へと大幅に短縮されたことで、その後の業務効率に大きく 貢献してします」と石川氏。

 

 「現在、約200社とJCA手順による取引を行っていますが、通信速度の遅さや専用モデムの調達・保守の苦労(大 手メーカーの撤退)などため、JCAには将来的な不安を感じています。現状、第三世代の量販店システムへの移行途中であり、システムに手を入れるよい機会 でもあり、小売さん側がOKを出してくれれば、すぐにでも流通BMSの対応を拡大していきたいですね。対応先が増えれば増えるほど大きな効果が見込めるわ けですから、要請に即応できる体制を整備していきます。」と石川氏は強くアピールする。

 

 

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