スーパー・百貨店・ドラッグストア・卸のキーマンが流通BMSの普及対策を徹底議論  ―流通システム標準普及推進協議会 2013年度通常総会―

 2013年5月9日、ホテルフロラシオン青山(東京都港区)にて、流通システム標準普及推進協議会 13年度 通常総会が開催された。総会では、前年度の事業報告と今年度の事業計画、さらに運営委員の選任について議事が行なわれた。第2部の座談会では、総合スーパー、スーパーマーケット、百貨店、ドラッグストア、卸から業界を代表するキーマン5名が登壇、「流通BMSをさらに普及させるためには何が必要か」をテーマに活発な議論を展開した。

 

スーパー・百貨店・ドラッグストア・卸のキーマンが登場

 本格的な普及期を迎えた流通BMSだが、業界によって若干の温度差が生まれつつあるようだ。なかなか進まない業界や企業では複雑な事情を抱えており、一方で普及が進んでいる業界でも今までになかった「標準外利用」といった問題が浮上し、悩みの種となっているという。座談会では各業界を代表するキーマンが、自社および業界の導入状況、導入で得られた効果、検討課題などを紹介し、さらに参加者からの質問に答える形で議論を行った。コーディネーターは流通BMS協議会事務局長の坂本尚登氏が務めた。参加したパネリストは以下の通り。

ユニー

執行役員 IT物流本部本部長 兼 情報システム部長

日本チェーンストア協会 ICT委員会 流通BMSプロジェクト座長

角田 吉隆氏

 

ヤオコー
営業企画部 システム管理担当部長
日本スーパーマーケット協会 情報システム委員会 委員長
神藤 信弘氏

髙島屋 
IT推進室 室長
日本百貨店協会 流通BMS 検討分科会 座長
津田 芳雄氏

ニュードラッグ

代表取締役社長

日本チェーンドラッグストア協会 業界標準化推進委員会 副委員長

染谷 信雄氏

 

国分

情報システム部長

情報志向型卸売業研究会(卸研) 研究委員会 座長

高波 圭介氏

 

 

5人のパネリストが一企業としての現状と、団体としての取り組みを紹介

 パネリストの5人は、流通事業者として自社の流通BMSに関わっているだけでなく、複数の事業者で形成する団体の中でも重要な役職を担っている。そこで前半は、パネリストたちがそれぞれ、自社の対応状況ならびに、所属団体の取り組みの2つの視点から紹介を行った。

 

◎ユニー 角田氏

東海地方を中心に約230の総合スーパーおよびスーパーマーケットを展開するユニーは、06年から行われた次世代標準EDIの共同実証から参加。現在、EDIセンター・物流センターを含めた社内システムはすべて流通BMS対応とし、150社の取引先と流通BMSによるデータ交換を行っている。今後、すべての取引をEDI化する目標を立て、1年先を目処に生鮮食品のEDI化・流通BMS化を進めているという。

大手GMSやスーパーが加盟する日本チェーンストア協会においては、「リーダー企業のほとんどは流通BMSに対応済み。未導入のスーパーにおいても導入意欲が高く、13年、14年中に切り替えるというコミットが取れている」と語った。また、近年のネットスーパーの拡大を受け、商品画像データ交換の標準運用に関する議論が活発となっていることも明かした。

 

◎ヤオコー 神藤氏

関東地方で食品を中心としたスーパーマーケットを展開するヤオコーは、12年から流通BMSの導入を本格化。グロサリー関連の取引先全60数社中、約9割の50社が対応済みで、残りの1割の導入も急ピッチで進めている。総菜を含めた生鮮食料品関係の取引先約160社に対しても順次切り替えを開始。「13年度中に取引先のほとんどを流通BMSに切り替えていく予定」と語った。

食品スーパーを中心に形成される日本スーパーマーケット協会においても、流通BMSの導入は積極的で、流通4団体※1では共同利用型の安価な流通BMSサービスを推奨し、システム面で導入のハードルが高い加盟会員を支援している。現在、加盟103社のうち流通BMSに対応しているスーパーは加盟会員の約30%にあたる34社。そのうち本共同利用型サービスを導入しているスーパーは8社。今後も中小のスーパーを中心に流通BMSの導入を呼びかけていくとした。

 

※1  日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、一般社団法人新日本スーパーマーケット協会、一般社団法人日本ボランタリーチェーン協会

 

◎髙島屋 津田氏

11年に創業180周年を迎えた老舗百貨店の高島屋は、06年の共同実証から参加し、09年3月に「流通BMS百貨店Ver1.0」がリリースされたのを機に流通BMSによるデータ交換を開始した。現在は約300社以上の取引先と流通BMSによるデータ交換を行っている。

日本百貨店協会では、共同実証終了後もシステム化推進委員会を立ち上げ、アパレルメーカーやITベンダーなども参加する分科会において、共同実証および標準メッセージの検討を進めてきた。そして09年12月に「流通BMS百貨店Ver2.1」をリリースし、現在は標準メッセージの維持更新と情報収集・共有を行っている。

 

◎ニュードラッグ 染谷氏

東京の新宿区、千代田区で9店舗のドラッグストアを運営するニュードラッグのEDIは、既存のJCA手順のみだが「次回のシステム更新で流通BMSに対応する予定」という。

日本チェーンドラッグストア協会では、会員企業に対して流通BMSの導入に関するアンケートをしているほか、セミナーを開催して啓発活動に努めている。また、導入を検討しているドラッグストアに対しては、日本スーパーマーケット協会などが推奨している共同利用型のサービスを紹介したり、流通BMSの導入事例を紹介したりしている段階で、「これから流通BMSの普及に向けて頑張りたい」と意欲を示した。

 

◎国分 高波氏

食品総合商社の国分では、08年から流通BMSを導入。12年11月末までに43社の取引先とデータ交換を行っている状況だ。13年6月末までには60社に達する見込みで「達成スピードは計画より早い」と語った。流通BMSのデータ量は、12年の1年間で520万データから920万データに増加。EDI全体のデータ量の約1割が流通BMSとなっている。

国分が参加する情報志向型卸売業研究会(卸研)では、今年度のテーマを「標準化」に設定し、「標準外利用」への対応を流通BMS協議会と共に検討。「標準外ではないが標準として定められていない納品明細書のレイアウトと、オフライン発注分の出荷データの作成が課題となっており、検討を進めている」と説明した。

 

 

コスト削減、業務効率化、サプライチェーンの変革など多彩な導入効果

 続いて、多くの流通事業者が気になる流通BMSの導入効果について紹介した。

 

 ユニーの角田氏は「物流センターの再構築と合わせて流通BMSを導入し、業務プロセス全体を整理した結果、サプライチェーンの最適化・効率化が実現した。流通BMSがなければ物流センターの再構築は困難だっただろう」と振り返った。また、新商品の入れ替わりが激しく、倉庫の在庫量がめまぐるしく変わるお菓子の発注業務においても時間短縮が実現し、配送業務も効率化されたという。

 

 ヤオコーの神藤氏は「通信時間の短縮」と「通信コストの削減」を挙げた。発注から納品までのリードタイムが数時間というタイトな作業の中で通信時間が1時間程度短縮され、卸でのピッキング作業にも余裕ができたという。日本スーパーマーケット協会全体としては、「共同利用型の流通BMSのサービスが、初期の導入コスト削減に貢献している」と語った。

 

 髙島屋の津田氏は、伝票の削減、事務処理の効率化、信頼性の向上などを挙げて「紙の伝票がなくなり、データ交換が電子化されたことで、在庫がほぼリアルタイムに把握できるようになった」としている。

 

 国分の高波氏は、情報システムの視点からメッセージフォーマットの統一による開発工数の削減、EDI開発のアウトソーシング化の効果を紹介。また、ペーパレスにより伝票代、プリンターのインク代、管理コストが削減できたと同時に、発注から納品までの時間短縮が実現したことを挙げた。

 

 

 流通BMSの普及に向けて「標準外利用」への対応が重要


 続いて行われたのが、参加者からの質問コーナー。アンケートで回収した質問に答える形で行われた。

 卸事業者から寄せられた「標準外利用にはどう対処するのか?」という質問に対してユニーの角田氏は「流通BMS協議会が用意している標準外利用の投書箱に『おかしいものはおかしい』と上げてほしい」と回答。さらに「日本チェーンストア協会としても流通BMS導入企業が集まる場でPRしていきたい」とした。

 

 ヤオコーの神藤氏も「小売店が知らずに標準外利用をしている場合もある。こうした場合は指導していかなければならない。意図的に標準外利用をしている悪質なケースでは流通BMS協議会の標準外利用の投書箱に上げていただく、また、直接小売りに伝えていただくことも必要」と語った。

 

 「卸とメーカー間のデータ交換はどうなっているのか?」という質問に対しては、国分の高波氏が「現状、日本加工食品卸協会の日食協フォーマットがあるが、今後小売との間で流通BMSが普及すれば、メーカーと卸間の流通BMS化は自然の流れ」と回答した。

 

 また、「流通BMS稼働後もJCA手順、Web-EDIなどが残るケースがあり、複数の手順を並行して動かしている状況は非効率ではないか?」という質問に対して、ユニーの角田氏は「流通BMSの効果について、情報システム部や経営幹部が懐疑的な姿勢を示している現状は否定できない。こうしたケースでは、物流センター長に流通BMSのメッセージを見せてほしい。SCMの観点からみるとそのメリットがかなり大きいことがわかる」と強調した。ヤオコーの神藤氏は「Web-EDIを導入する際も流通BMSに準拠したデータ交換フォーマットを用意することが重要。標準化によるデータ交換が最も効率が良いということになれば、商品原価そのものにいずれは反映される。負担をかけている会社とそうでない会社による差がいずれでてくると思う。取引上の条件がプラスに働かない方法を取り続けることは考えられない。早く着手することが大切」と語った。

 

 最後に「流通BMSの普及に向けて必要なこと」という坂本氏からの質問に対して、高波氏、染谷氏、津田氏の3人が答えた。

 

 国分の高波氏は卸全体のテーマとして「卸の中での啓発活動」を挙げ、「卸の営業担当者に対して流通BMSの教育を行うことで、取引先との交渉時から流通BMSを意識させていきたい」と語った。ニュードラッグの染谷氏は「日本チェーンストアドラッグ協会が実施したアンケートでは21社が導入済みまたは予定と答えている。流通BMS協議会の企業名公開数も8社となり、導入は間違いなく進んでいる。特に、業界の代表格であるマツモトキヨシが今年の1月に導入したことで、弾みがつくことは間違いない」と展望を示した。高島屋の津田氏は「百貨店業界は総論賛成だが、各論では二の足を踏んでいる。ハードルは高いが、基幹システムやEDIシステムの更改を機に、流通BMSを第一に検討してほしいと呼びかけていく」と語った。

 

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