流通BMS協議会2012年度通常総会記念講演会 『流通効率化に向けた経済産業省の取り組み』

 2012年4月25日、ホテルフロラシオン青山(東京・港区)にて、流通システム標準普及推進協議会 12年度 通常総会(記念講演会、懇親会)が開催された。総会では、一般財団法人、流通システム開発センターの井上毅会長による開会の辞に続き、前年度の事業報告と今年度の事業計画、さらに運営委員の選任について議事が行なわれた。また第二部の記念講演会では、経済産業省 商務情報政策局の佐合達矢氏による記念講演が行なわれ、流通の効率化に向けた取り組みについて紹介された。

 

市場構造の変化は流通業界にとって新しいビジネスチャンス

 

 講演冒頭、佐合氏は、日本経済における流通業の位置づけを説明した。国内総生産(GDP)ベースでは製造業、サービス業についで3番目に大きな産業であり、全産業就業者の16.9%を占める流通業は、「我が国の経済にとって非常に重要な産業」であると指摘。市場規模は約135兆円で、コンビニエンスストアやドラッグストア、通信販売の売上高は増加しており、特にネット通販は音楽配信や電子書籍などのデジタルコンテンツ販売のプラットフォームとしても今後さらに拡大が期待できると語った。

 一方で、小売店舗数は1982年の172万店をピークに、25年間で約3分の2に減少しており、中でも個人店舗は129万店から57万店へと半分以下に減少している。それに比べ1店舗当たりの売場面積は年々、拡大する傾向にあり、佐合氏は「集客力を高めて、販売効率を高めることが求められている」と分析した。


 また佐合氏は、中・長期的な我が国の人口減少と高齢化の進行を、グラフを使って説明しながら、「高齢化が進むと市場規模が単に縮小するということではなく、購買力の高い団塊世代を始め、今までとは違った購買パターンが見られるのではないかと考えている。市場構造、年齢構成が変わっていく中で、消費者の求めるものも変わっていく。そこに、流通業の新しいビジネスチャンスがある」と述べた。
 急速に成長する中国やインドネシア、インド、ベトナムをはじめとするアジア市場について言及し、「こうした新しい市場に信頼される小売業として、精力的に展開している企業も少なくない」と語り、我が国流通業の海外展開の動向について説明した。

 

 

在籍データの共有やフォーマットの標準化でSCMを効率化

 その上で、「国内展開、国際展開に関わらず、人、モノ、サービスを適切なタイミングで、適切な価格で消費者に提供するという流通業の本質的な機能を効率的に実現するビジネスモデルが必要不可欠だ」と指摘。流通における「製・配・販」機能の最適な組み合わせが重要と語り、消費者のニーズに合わせ新しい市場を展開していく上で、「情報ネットワーク・共有システム」「物流ネットワーク」が流通業界のキーワードとなると分析した。そして、「欧米に比べ、日本の小売業は相対的に収益性が低い。サプライチェーンマネジメントに必要な販売在庫データの共有や、データフォーマットの標準化が業界全体に十分進んでいない」と現状の課題を提起した。


 こうした流通業の今後の展開に向け、佐合氏は10年5月に準備会合を発足させた「製・配・販連携協議会」の取り組みについて説明した。この協議会は、11年度に「返品削減」「配送最適化」「デジタル・インフラ検討」の3つのワーキンググループを設置。それぞれのワーキンググループの改善取り組み事例として、返品削減では、商品カットの次期を最大5週間ほど前倒しすることで返品を半減させたコンビニエンスストアの事例が、配送最適化については、大ロット配送を推進したことで月間約2,800台のトラックが削減できたというメーカーと卸の事例を紹介した。またデジタル・インフラ検討では、生産・在庫・販売情報などを集約する基幹システムを設け、メーカー、卸、小売が業態の垣根を越えてPOSデータを共有することで、サプライチェーン全体の効率化が図れると同時に、「商品の需給状況や在庫情報を把握することで、緊急時に支援物資の輸送を迅速かつ的確に行なうことができるようになる」と述べた。

 

 

流通効率化のキーポイントは、物流の交流化にある

 最後に、佐合氏は、流通BMS普及推進に関する経済産業省の取り組みについて報告した。現在、「流通BMS導入宣言」に参加している企業は50社に上り、中でも導入宣言した小売業28社の合計売上高は約12兆円で、売上高としては小売業の約25%のシェアを占めるに至っている。小売業28社の流通BMS「導入・拡大計画」では、11年12月時点で流通BMSを導入した取引先は累計約900件で、さらに流通BMSの取引の拡大を行ない、小売企業の取引先数を12年末までに累計約6600件、13年末に約7300件、14年末に約8700件まで拡大する予定で、「こうした取り組みを、経済産業省も一緒になって努力していきたい」と佐合氏は意気込みを語った。

 その上で佐合氏は「流通効率化のキーポイントとなるのが、物流の効率化だ。物流の効率化には物流拠点の集約化や共同配送などいろんな手段があるが、物流クレートの共通化・標準化も進めていく必要があるのではないか」と指摘。日本スーパーマーケット協会の実証実験における試算では、クレートのサイズの統一と、製・配・販による共同利用が行なわれることで、仕分け人件費・スペース効率が40%以上削減できるという実証結果が得られており、さらにCO2削減量は年間約2万㌧にも上ると経済産業省は試算しているという。佐合氏は「物流の効率化をどのように進めるかは難しい問題もあるかもしれない」としながらも、「業界の方々と連携しながら、物流自体の標準化にも取り組み、流通の効率化の推進を支援させていただきたい」と語り、講演を締めくくった。

 

 

 

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