日本加工食品卸協会 2013年度情報システム研修会

 日本加工食品卸協会(日食協)は、加工食品流通の近代化・効率化に関する調査研究などを通じて、加工食品の安定供給と国民生活の向上への貢献を目指している。10月25日に開催した会員企業による情報システム研修会では、流通BMS普及の進捗状況、製・配・販連携協議会の活動状況、卸事業者向けのマスター管理システム、食品業界におけるビッグデータの活用や日食協の事業活動報告など、様々なテーマの講演が行われた。

 

開会挨拶

 日本加工食品卸協会 情報システム研究会 座長
 伊藤忠食品 情報システム企画部 部長
 竹腰雅一氏

 日食協情報システム研究会の竹腰雅一座長は、流通事業者の情報システム部門が現在抱えている問題に「消費税の8%対応」があると話し、同氏が所属する伊藤忠食品でも、来年4月に向けてシステム対応に着手し始めていることを紹介。また、日食協が行っている流通BMSの普及活動にも言及し、「現在は、運用ガイドラインに対する追加要求(チェンジリクエスト)の提案と、納品明細書の標準化に対する提案を行っている」と述べた。

 

 

日食協 事業活動報告

 日本加工食品卸協会 専務理事
 奥山則康氏

 日食協奥山専務理事はまず、来年4月に迫った消費税増税に対する協会の対応方針を説明した。続いて、公正取引委員会による「物流センターを利用して行われる取引に関する実態報告書」について、センターフィーの負担に関する話題を取り上げた。「センターフィーの実態を把握し、負担要請の際の行動プロセスの在り方を探っていくとともに、物流センターを利用した場合の取引価格の把握と是正を進めていく必要がある」と今後の展望を語った。

 

流通BMS協議会 活動報告

 流通システム開発センター 研究開発部 主任研究員
 坂本真人氏

 卸・メーカーの流通BMSの導入実績は推計で5,800社を超え、すでに普及期に入っている。そこで流通システム標準普及推進協議会(流通BMS協議会)では今年度、適用範囲の拡大に向けた活動に取り組んできた。大きな活動の一つが「標準外利用の実態把握と対策検討」だ。

 導入企業数が増えた結果、個別の標準外利用のケースが表面化してきた。こうした状況について流通システム開発センター研究開発部の坂本真人氏は「初期段階で流通BMSの仕様から漏れていたものや、企業間で取り扱いをあいまいにしてきたものが、標準外利用として表に出てきた段階。現在は、流通BMS協議会の事務局がユーザーに対して実施したヒアリング調査を基に、標準外利用に関するガイドラインを作成してホームページ上に公開している。導入企業にはこのガイドラインを参考にしてもらうとともに、今後も実態調査を続けながら新たな事例を報告していく予定だ」と述べた。

 

 流通BMS協議会は並行して普及活動も継続しており、今年度も普及推進説明会を東京・大阪以外の地方で開催するほか、来年3月に開催予定の「リテールテック2014」では流通BMS専用のソリューションゾーンを設け、関連製品を紹介していく計画を明らかにした。

 

 続いて導入支援活動も紹介。食肉、アパレル、菓子など、流通BMS関連の標準化や普及促進関連に携わる各種会議体に対して導入を呼びかけていることや、正会員団体が主催する各種セミナーなどに講師を派遣していると報告した。「説明会開催のご依頼があれば全国どこへでも伺うので、ぜひお声がけを」と呼びかけた。

 

 また、普及促進に当たり、業界を超えた企業間情報交換インフラの標準化を2012年度から取り組んでいることを紹介。坂本氏は「銀行業界を対象に、流通BMSの商流情報と、全銀システムを経由する決済情報を連携するための研究を始めた。流通業界の枠を超えて、通信インフラが統合できれば、中小企業も含め、さらなる効率化が望める」と強調した。

 

 銀行業界との情報連携に関する検討内容としては、昨年度は「技術・制度」と「EDI情報欄の活用」の2つをテーマに設定。マッピングは提示済みのマッピング案をベースとし、EDI情報欄については既存の20桁から140桁繰り返しとすることが決定した。

 

 今年度は、実証に向けた実現方法と、ニーズに反映させるためのEDI情報の活用方法の2つを検討している段階で「流通業と銀行業界による検討会とワーキンググループで実証を進めていく」と坂本氏は計画を明らかにした。具体的には、流通システムと銀行システムの間にASP型の「金融EDIセンター(クローク)」を設け、EDI情報欄を介してメッセージを交換するイメージを描いているという。

 


製・配・販連携協議会 活動状況

 流通経済研究所 専務理事
 加藤弘貴氏

 製・配・販連携協議会の活動状況について、流通経済研究所加藤弘貴専務理事は「正式発足から3年目を迎え、ワーキンググループ(WG)の活動も活発化してきた」と述べ、これまでのWGの成果を報告した。

 12年度は「返品削減」「日付情報等バーコード化」「サプライチェーン効率化のために情報連携」の3つがテーマに設定された。返品削減WGでは、前年度の活動で加工食品の返品実態を把握するとともに、加工食品の納品期限を現在の「2/3残し」から緩和する方向で見直すこと、終売プロセスや新商品導入プロセスにおける業務連携の推進、返品時の取引条件の明確化などを提言してきた。

 

 13年度は製・配・販各社における返品削減実施計画を作成・共有し、パイロットプロジェクトとして「加工食品の納品期限の見直し」「商品入れ替えプロセスの見直し」の2つを実施したことを紹介した。

 

 日付情報等バーコード化WGでは、「荷卸し作業の効率化」に注目し、その具体策として段ボールに表示する賞味期限などの日付情報の表示方法の標準化と、バーコード化するためのガイドラインの作成を実施。加藤氏は「関連業界団体や取引企業、関連ベンダーに対してガイドラインを紹介することで取り組みを呼びかけながら普及を推進していく」と語った。

 

 情報連携WGでは、WGの参加企業を中心にアンケートを実施して、情報連携の実態と課題を把握することを本年度のテーマとした。大手小売業、卸売業、メーカー合わせて31社の回答をまとめたところ、「実績情報」と「計画情報」の2つに対して現状と課題が見えてきた。この結果を受けて加藤氏は「今後の課題として、POSデータ等の標準EDIを通じた送受や、計画情報の内容項目に関するガイドラインの作成、事例の共有、情報連携・業務連携モデルの開発が見えてきた」と語った。

 

 

卸向け商品DBのWeb検索システムと食品業界におけるビッグデータの活用

 ジャパン・インフォレックス 社長 西田邦生氏
 富士通 流通ビジネス推進統括部シニアマネージャー 宮澤哲也氏

 

 食品加工業の課題となっている商品マスターの標準化・合理化を解決する手段として、ジャパン・インフォレックス社長の西田邦生氏は、Web検索型商品情報サービス「Inforex TREASURE」を紹介。公開情報のみを抽出した商品情報(公開マスター)と画像情報に、インターネット経由でアクセスできるという。「初期投資が不要で、ネット通販ができる程度のスキルがあれば誰でも利用可能なサービスだ。必要な情報をCSVファイル形式で出力し、自社商品マスターへアップロードすることにより、入力業務の軽減が図れる。さらに、約200万件の商品データから必要な情報を探し出したり、不足している情報やあいまいな情報を確認したりできるので、問い合わせ業務が削減できる」とメリットを解説した。

 

 続いて富士通ビジネス推進統括部シニアマネージャーの宮澤哲也氏が、「ITやマーケティングの分野で注目を集めるビッグデータだが、食品業界での活用も現実味を帯びている」ことを指摘。食品業界での活用事例として、基幹システムのクレンジング処理の高速化、サプライチェーン向け大規模バッチの高速化、マネジメントサイクルの高速化といった具体例を示した。さらに、今後高速分析の活用が期待される分野として「営業・販促活動の見直し」、エリアやターゲットを絞り込んだ「マイクロマーケティング」、現場のセンサー機器の情報やログ情報などを含めた需要予測・生産計画・在庫計画などの立案による「サプライチェーンの最適化」の3つを挙げた。

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