製・配・販連携協議会 総会/フォーラム

 製・配・販連携協議会の2012年度の活動と成果を報告する総会とフォーラムが、2013年7月12日、明治記念館(東京都港区)で開催された。フォーラムでは、加盟43社で構成したワーキンググループが、それぞれのテーマに定めた「サプライチェーンのための情報連携」「返品の削減に向けた取り組み」「日付情報等のバーコード化」に関する進捗状況や成果を報告。さらにアマゾンジャパン社長のジャスパー・チャン氏が特別講演を行った。

主催者挨拶、2012年度の製・配・販連携協議会の活動概要報告

 

 開会の挨拶に続き、経済産業省 商務流通保安審議官の寺澤達也氏が主賓挨拶を行った。寺澤氏は製・配・販の連携による取り組みを高く評価。「組織の成長、政策の実現のカギは3年目にあると言われる中で、3年目を迎える製・配・販連携協議会もこれからが正念場。日本経済の発展のため、新たな価値創造に期待している」と語った。

 

 続いて、流通経済研究所の上原征彦理事長が、主催者挨拶を行った。上原氏は流通の新旧交代が始まり、現在は顧客に近づく流通にシフトしつつあると指摘。「ICTの意義も変化し、従来の個別仕様のシステムから、全体を標準化する流れが進んでいる。製・配・販の連携もその流れの中で対応を進めていくべき」と強調した。

 

 

サプライチェーン効率化のための情報連携ワーキンググループ 報告

 

 サプライチェーン効率化に向けた情報連携ワーキンググループでは、座長のユニー執行役 IT物流本部本部長 兼 情報システム部部長の角田吉隆氏が「製・配・販による情報連携の現状と課題、方向性について」と題した報告を行った。

 ワーキンググループの目的を角田氏は「返品削減、配送最適化の実現に向けた情報基盤のあり方を検討することにある」と語り、「そのためには情報の開示・共有の実態と、サプライチェーンを効率するための課題を明らかにしなければならない」と強調した。

 昨年度のデジタル・インフラ検討ワーキンググループでは、情報の種別を「実績情報」と「計画情報」に区分したうえで実績情報に着目。小売業からPOSデータを集め、効果検証シミュレーションを実施したところ、生産・在庫・出荷管理を大きく改善できる可能性があることがわかった。「そこで今年度は第2ステップとして、参加各社にアンケートを実施して現実的な課題を明らかにし、今後の方向性を検討することにした」と説明した。アンケートに回答した企業数は、小売業が14社、卸売業が8社、メーカーが9社に上ったという。

 

 まず実績情報については、小売業POSデータ、小売業在庫データ、卸売業の販売データ・在庫データの3つに着目。1つ目の小売業POSデータは、製・配・販の間で広く共有されているが、メーカーと卸売業は在庫・配送の物流分野に活用できていないことがわかった。また、小売POSデータの開示方法やフォーマットは個社ごとに異なり、卸売業やメーカーが、複数のPOSデータを扱わかなければならないことから「今後は流通BMS等の標準EDIでデータ送受することや、共通のシステム基盤を整備することが課題」と述べた。

 

 次に小売業在庫データに関しては、大手小売業では重要取引先に対して開示は進みつつあるが、現状では限定的で、小売業在庫データは誤差が多いと認識している小売業が多いと指摘。一方、卸売業やメーカーでは小売業在庫データを把握することに有効性を感じていることから「小売業在庫データを公開するよりよい方法を検討するとともに、情報システムのあり方を検討すべき」と強調した。

 

 卸売業の販売データに関してはメーカーへの開示が進み、補足率も高まっている。一方で在庫データは加工食品の分野ではそれほど進んでいない実態がある。一方、メーカーでは在庫データの入手によって、出荷予測の精度が向上し、在庫の削減や生産計画の最適化が実現すると認識していることから「卸売業の販売データと同様に、在庫データの共有と連携を進めていくべき。ただし、商品コードや取引先コードの標準化や、EDIによる情報送受のあり方を検討することがこれからの課題」と指摘した。


 続いて角田氏は、計画情報の連携について話を進めた。計画情報のうち、新商品導入時の発注情報、販売促進時の発注情報、商品カット情報の3つに着目。新商品導入時の発注情報は、確定発注を1週間以上前、発注予定を3週間以上前に通知する小売業が多く、業態や企業によって異なる現状を紹介。今後の課題として「卸売業はメーカーへの発注量を確定する前、メーカーは生産数量の確定前と物流センターへの在庫配分確定前に小売業の確定発注や発注予定を把握することが重要。その通知方法は定型フォーマットで電子化することが望ましく、流通BMSなどの標準EDIによる発注予定データの活用も検討していくべき」と語った。販売促進時の発注情報に関しても、計画情報と同様に利用できるタイミングでの情報連携が必要との認識を示した。同様に、商品カット情報も商品カット日の4週間以上前に通知する小売業が多いことを述べ、卸売業については在庫調整・在庫調整のタイミングでの情報連携が必要との認識を示した。

 

 以上のような情報連携の実態を踏まえたうえで角田氏は、今後の方向性として、「製・配・販の取引企業間が互いの業務プロセスを理解することが重要で、各企業で営業部門と物流・情報部門との連携がスムーズに行われる体制を整備すべき」と語った。ただし、情報連携は生産・在庫・配送に係る意思決定のタイミングで行われるのが理想だが、業種・業態によってタイミングは異なるため、特性に応じた対応が必要であるとアドバイスを送った。

 

 今後の検討課題として角田氏は、「POSデータなどの標準EDI(流通BMS)を通じた送受をどう進めていくかが重要」と指摘。「小売業のPOSデータは、個別化が進んでおり、卸売業・メーカーは利用しにくい状況にある。流通BMSには、POS売上メッセージが標準で用意されているので、標準EDIによる送受を検討していってはどうか。発注予定メッセージについても流通BMSでは定義済みであることから、同様のメリットが享受できる」と語った。

 


日付情報等バーコード化ワーキンググループ 報告、返品削減ワーキンググループ 報告、アマゾンジャパンによる特別講演

 

 日付情報等バーコード化ワーキンググループでは、「日付情報表示の標準化による配送効率化に向けて」と題して、座長のイオングローバルSCM取締役営業統括部長の橘良治氏が報告を行った。

 

 昨年度の配送最適化ワーキンググループでは、「納品トラック待機時間の実態と改善方法について」をテーマに取り上げた。その中で今後の検討課題として「棚卸し作業の効率化」が挙げられたことから、1つの具体策として「段ボールに表示される賞味期限などの日付情報に関する標準化、バーコード化の意義を整理することにした」と橘氏は目的を明らかにした。

 

 橘氏はサプライチェーンの日付管理の現状、段ボールへの賞味期限の表示方法、課題、解決策などを明らかにしたうえで、実現した場合の期待効果として、目視による確認時間の短縮、荷降ろし作業の効率化、作業精度の向上などを挙げた。

 

 そして、課題解決の手法として日付情報などのバーコード化の意義と標準化の必要性を強調。流通業界におけるガイドラインを設け、製・配・販でこの取り組みを推進していくことに意義があると語った。ワーキンググループではすでにガイドラインを策定済みで、今後はガイドラインの普及がカギになるという認識を示し、「事務局を通して流通BMS協議会の会員団体にガイドラインを紹介し、対応を呼びかけるなどして業界全体への普及を促進していく」と語った。

 

 返品削減ワーキンググループでは、座長のイトーヨーカ堂執行役員物流部長の飯原正浩氏が、「返品削減に向けた取組みの進捗について」報告した。

 返品削減は、製・配・販連携協議会の初年度から取り組んでいる継続的テーマであり、今年度は、各社の返品削減計画の情報共有とパイロット・プロジェクトの取り組みを推進する実行フェーズにあると紹介した。

 協議会参加各社はすでに返品削減目標と削減方法を記した実施計画書を作成しているが、その中で、アサヒビール、国分、ユニーの計画書を紹介するとともに、製・配・販の多くが参加するパイロット・プロジェクトの進捗状況を報告。「今後もパイロット・プロジェクトを進めていくととともに、効果が得られた手法は参加企業にも横展開していく。そして、返品削減の取り組みは、協議会外の流通業全体に拡大していきたい」と展望を述べた。

 

 ワーキンググループの成果発表の後は、アマゾンジャパン社長のジャスパー・チャン氏が登壇。「Amazon顧客第一のビジネスモデル」と題した特別講演を行った。講演では、物流や新サービスなどの最新の取り組みなどを網羅的に紹介。13年後半には小田原に世界最大規模のフルフィルメントセンター(物流センター)を開業し、より迅速な配送体制を強化していくことを明らかにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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