返品削減、廃棄ロス削減など第1期の集大成を発表 ~製・配・販連携協議会 総会/フォーラム~

 2014年7月4日に製・配・販連携協議会の2013年度の活動と成果を報告する総会とフォーラムが青山ダイヤモンドホール(東京都港区)で開催された。総会では「返品削減に向けた取り組み」「賞味期限の年月表示化」「商品情報授受の効率化」をテーマに3つのワーキンググループ(WG)が1年間かけて実施してきた活動の成果を報告。パネルディスカッションでは経営トップ5人が登壇し、「製・配・販連携のビジョン実現に向けて」をテーマに意見を交換した。

 

3年間の活動を高く評価

 

 主賓挨拶では前年同様、経済産業省商務流通保安審議官の寺澤達也氏が登壇し、3年間の活動が確実に成果を挙げていることを評価した。中でも廃棄ロスに向けた賞味期限の見直しに関するニュースが日経新聞のトップ記事として扱われたのと同時に、朝日・読売・毎日の全国3紙でも取り上げられたことについて「世間からの注目度が高い」と指摘。賞味期限の年月表示の拡大にも期待を寄せた。

 さらに3年計画で進めてきた現在の活動をベースに新たな取り組みが始まることに期待を寄せ、「経済産業省も事務局に加わり、活性化に貢献したい」と述べた。

 

 続いて主催者挨拶に立った流通経済研究所の上原征彦理事長も、3年間の協議会の活動を評価。その上で「社会的要求が変化し、少子高齢化やオムニチャネルといったマーケット以外の対応も課題になっている。製・配・販の3層は競争と連携の2つを意識しながらマーケットに対して協調の動きをしていくべき」と語った。

 

 

第3WG報告(商品情報授受の効率化)

 

 第3WGでは、三菱食品 情報システム本部長補佐の榎本猛氏が「商品情報授受の効率化に向けて」と題して報告した。

 商品情報には①商品マスタ情報②商品画像情報③商品品質系情報――の3つがある。現在はいずれもフォーマットがばらばらで、授受方法が決まっていないことが問題になっている。そこでWGでは、製・配・販における商品情報の授受を効果的に行うために実態と意識調査から始め、商品マスタ情報・商品画像情報・商品品質系情報でそれぞれの課題解決のための検討をした。

 商品マスタ情報は大手の場合、既存の業界商品情報データベースの活用が進んでいる一方で、提供の段階でフォーマットや方法が各社で異なっている。商品画像情報についても取引先ごとに画像規格が異なり、ガイドラインがあるにも関わらず認知度が低いのが現状。商品品質系情報もフォーマットが各社で異なり、業界ルールも曖昧だった。

 

 これらの課題を解決する方策として、WGは方向性を検討。商品マスタ情報については製・配・販3層で共有化できる基本項目については業務での活用を前提に、適切なタイミングで情報を授受する運用を推進することを提言した。その中で榎本氏は「流通BMSの商品マスタ・メッセージを活用することも1つの方向性」と指摘した。

 

 商品画像情報については、流通システム標準普及推進協議会や日本加工食品卸協会が策定済みの商品画像運用ガイドラインの普及推進を通して共通化していくことを提案した。榎本氏は「画像情報種別を確認した上で、可能な限り標準に沿ったものを適切なタイミングで授受する方策を検討することが重要だ」と述べた。

 

 商品品質系情報についても「商品情報授受標準化会議(PITS)」で制定されたものを協議会として採用し、既存商品データベース事業者およびeコマース事業者に対してPITSの対応・採用を呼びかけていくとした。

 

 最後に榎本氏は「商品マスタ情報はどの企業も力を入れている重要な情報だが、整備や管理に工数がかかる。これを効率化して迅速化していくことは重要だ。製・配・販それぞれの企業財産を3層で分断せず、効率的に連携することで価値が高まっていく」と述べて報告を終えた。

 

 

経営トップによる「戦略会議」を設置

 

 製・配・販連携協議会の今後の運営体制について、流通経済研究所専務理事の加藤弘貴氏が説明。正式発足から3年が経ったこれまでの成果を受けて、協議会の継続運営が合意に達し「これから3年間の期限を設けて活動を継続する」と語った。

 新たな運用体制案のポイントとして、参加企業を現行の43社から増やすこと、運営体制として経営トップによる「戦略会議」を設置することと、WGを従来のテーマ別から品目別(加工食品、日用雑貨)に再編することなどを挙げた。

 

 

パネルディスカッションを実施

 

 WGの報告に続いて、明治大学大学院教授・流通経済研究所理事長の上原征彦氏をモデレーターに、経営トップ5人による「製・配・販連携のビジョン実現に向けて」 と題したパネルディスカッションを実施した。

参加したパネリストは以下の通り。

イトーヨーカ堂社長・最高執行責任者(COO)戸井和久氏
花王カスタマーマーケティング社長竹内俊昭氏

コカ・コーラカスタマーマーケティング社長 井辻秀剛氏

コメリ社長 捧雄一郎氏

三菱食品社長 井上彪氏

 

 

 上原氏はパネルディスカッションの冒頭、①店頭情報の共有②流通BMSによる標準化③透明で合理的な取引④廃棄ロス⑤災害対策――の5つを挙げ、5人のパネリストに対して意見を求めた。

 

三菱食品 井上氏
第1WGの報告を聞き、加工商品だけで800億円以上の返品額の削減効果が出ることに、改めて感心した。配送効率化についても成果が出つつあることを実感している。今後については製・配・販の連携がこれまで以上に重要になる。ここに来て急速に生活者のライフスタイルが変わってきたことが背景にある。生活者の変化を敏感に感じているのは小売業だと思うので、合理的な取引を実現するためにも小売業と連携してギャップを埋めていきたい。

 

コメリ 捧氏
流通BMSが短期間で普及し、標準化への意識が高まっているように、これからは標準化、全体最適化がますます重要になってくる。廃棄ロスをなくすためにも、JANコードの体系を明確にすることも大切だ。例えば、段ボール箱1個のJANコードを個別商品のJANコードで読み取ると誤差が出てしまう。さらに個別はコストもかかってしまうので、川上から川下まで全体最適を進めていくことが欠かせない。また、ライフスタイルの変化で主婦をターゲットとしたチラシの効果も薄れつつある。働く女性を対象とした戦略も今後は必要になってくる。

 

コカ・コーラカスタマーマーケティング 井辻氏
納品期限を3分の22残しから2分の1残しにすることによる食品ロスの削減効果を検証した意義は大きい。こうした既成概念を変えるような試みをこれからも継続していきたい。

 

花王カスタマーマーケティング 竹内氏
花王では、協議会の発足前からサプライチェーンの最適化も返品削減の取り組みを進めていたが、単体での取り組みには限界があった。製・配・販の3層の連携でそれが大幅に加速したので、今後も継続して全体最適を図っていくことが大切だ。流通BMSへの取り組みも積極的に進めており、花王では180社と取引して成果が出ている。返品は加工食品に比べて日用雑貨では出にくいが、商品の入れ替え時期の意思決定を早め、過度な競争はやめて全体最適を図ることで流通BMSのような成果が出ると考えている。今後3年に向けて協議会への参加企業を拡大することで、新たな成果が現れることを期待したい。

 

イトーヨーカ堂 戸井氏
これまでの活動で流通BMSを普及させ、納品期限を3分の2残しから2分の1残しに移行できたことは評価したい。イトーヨーカ堂は流通BMSを14年6月時点で220、同12月までには350、15年12月までに500社を目指していく。グループ各社も15年度をめどに400社、さらには百貨店にも拡大していきたい。納品期限の見直しも加工食品では結果が出ているが、競争しながら協働体制を築いていくことには不透明な部分が多く、課題が残る。変化する客層については慎重に対応していきたい。例えばシニアといっても、元気なシニアとそうでないシニアもいるからだ。

 

 

 最後に上原氏は、「流通とは何か」「どんな業界でどうなっていくか」などについて広い視点からの意見を求めた。

 

三菱食品 井上氏

消費者の買い物行動が変化している。ネット対応も当たり前になる中では、製・配・販3層で情報を分断して持つのは効率が悪い。今後は垣根を越えた連携が必要になる。

 

花王カスタマーマーケティング 竹内氏

IT(情報技術)化が進み、情報が豊富になった。その中で3層が連携し、店頭の強み、ITの強みを利用すれば流通は変わる。生活者の変化を競争と協働のバランスを維持して対応していきたい。

 

イトーヨーカ堂 戸井氏

トラックの配送問題など小売の課題は山積だ。その中で連携や情報共有の重要性は高まる。環太平洋経済連携協定(TPP)などのグローバル化に対応していくためには、3層の連携ももちろん、業界団体との連携も重要になる。

 

コメリ 捧氏

DIY・住宅関連の分野は食品や日用雑貨に比べて取り組みが遅れており、流通の近代化とイノベーション(技術革新)を進めていかなければならない。IT分野では、オムニチャネルとビッグデータの活用が鍵を握る。欧米はカード払いが8割なのに対して日本は現金払いが8割。カード化を進めるためにはID-POSデータも重要になる。マスタについては物流専用マスタがあればトラック不足や配送効率化に貢献できるのではないか。

 

コカ・コーラカスタマーマーケティング 井辻氏

製・配・販の共通のターゲットは消費者である生活者だ。当社はメーカーとして消費者とどう対峙し、メーカーが消費者に対するストレスをどう発散するかが課題になっている。消費者と直接対面している小売業との連携によってそのストレスが解消され、問題提起へとつながるのではないか。これからも過剰サービスに走ることなく必要なものを提供してきたい。

 

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