インボイス制度の「登録番号」、申請はe-Taxで!  ~国税庁のキーマンに訊く~(パート3)

国税庁
消費税室 軽減税率制度対応室
総括課長補佐
兼 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室
加藤 博之 氏

 

一般財団法人流通システム開発センター
流通システム標準普及推進協議会
事務局長
坂本 真人 氏

 

 これまで、「インボイス制度におけるシステム対応はどうすれば良いか」と題し、2回にわたって、インボイス制度におけるシステム対応の基本的な考え方から注意すべきポイントの詳細について説明してきた。
 今回は、2023年10月1日のインボイス制度の導入に先立ち、2021年10月1日より開始されるインボイスの記載事項の一つである「登録番号」の申請等について、国税庁消費税室の加藤博之氏に登場いただき、坂本真人氏とともに、事業者サイドの疑問に対する回答も含め、基本的な考え方及び留意点等について改めて語ってもらった。


(注)本文中での意見等に関する部分は、各人の所属した・所属する組織の公式な見解等ではありません。

 

 

「登録番号」と「登録申請」の基本的な考え方

 

坂本氏
 今回は、来年10月(2021年10月)から受付が開始される「登録番号」の申請について、少しお話を伺えればと思います。

そもそも適格請求書発行事業者としての「登録番号」とはどういうものでしょうか。

 


加藤氏
 インボイス制度において、「買い手」は仕入税額控除を適用するためには、インボイスの保存が必要となり、インボイスには、現行の区分記載請求書として求められる記載事項のほか、「適用税率」、「消費税額等」と売り手の「登録番号」の記載が必要となります。

 「登録番号」の構成については、これまでも説明会等で説明してきましたとおり、法人番号を有する課税事業者であれば「T+法人番号」(※法人番号の先頭に「T」(アルファベットの「T」を付ける)、個人事業者などそれ以外の課税事業者であれば「T+13桁の数字(新たな固有の番号)」となります。

 

坂本氏
 法人番号を有する課税事業者であれば、事実上、「登録番号」を認識できるということですね。そうなると、改めて何か手続が必要となるのでしょうか。

 

加藤氏
 課税事業者の方がインボイスの「登録番号」を取得するためには、「登録」を受ける必要があります。そして、その「登録」を受けるためには所轄税務署長に対し「登録申請」を行う必要があります。「登録申請」を行っていただいた後、税務署における審査を経て、「登録」され、「登録番号」等が通知される(税務署から「登録通知書」が交付される)仕組みとなります。

 

坂本氏
 「登録番号」の取得には、「登録申請」が必要ということですね。ちなみに、「登録申請」はe-Taxでも行うことができるのでしょうか。

 

加藤氏
 もちろん、e-Taxで「登録申請」を行っていただくことができます。e-Taxでの「登録申請」であれば、「登録申請書」(紙)を提出いただく場合に比べ、「登録番号」の通知を受けるまでに要する期間が短縮されることが想定されますので、課税事業者の皆さまにはe-Taxでの「登録申請」がより利便性が高いのではないかと思います。

 

坂本氏
 e-Taxで「登録申請」ができるのは便利ですね。ところで、この「登録申請」ですが、期限はあるのでしょうか。

 

加藤氏
 期限というものはありません。ただ、インボイス制度が導入される2023年10月1日から「登録」を受け、インボイスを交付することができるようにすることを想定するのであれば、原則、2023年3月31日までに「登録申請」を行っていただくこととなります。

 

坂本氏
 要すれば、インボイス制度導入のタイミングで、インボイスを交付することができるようにしておくためには、まずは、2023年3月31日までに「登録申請」を行い、「登録」を受け、「登録番号」を取得することが重要ということですね。

 

 また、「原則」ということで、確か、例外があったと記憶しています。2023年3月31日までに「登録申請」を行うことが困難な事情がある場合には、2023年9月30日までに「登録申請」を行うことで、2023年10月1日から「登録」を受けることもできると認識しています。

 

 

「登録通知書」の交付を受ける前に「登録番号」を記載できるのか

 

坂本氏
 インボイス制度導入後、2023年10月1日以降に「登録申請」を行う場合について、事業者の方の疑問も含め、少し考えてみたいと思います。具体的なイメージを持ってもらうため、例えば、2023年10月7日に行った取引に係る請求書等の記載事項について考えることとし、売り手である課税事業者の方が2023年10月3日に「登録申請」を行い、10月7日時点で「登録通知書」の交付がない状況であることを前提に考えたいと思います。
 そのような場合、2023年10月7日に行った取引に係る請求書等に「登録番号」と同じ内容の記載をすることは許容されるのでしょうか。


加藤氏
 まさに注意が必要なケースですね。先ほどもお話があったとおり、インボイスを交付できるのは、「登録」を受けた課税事業者です。したがって、ご指摘のようなケースでは、「登録」が済んでいないことが想定されますので、取引の相手方に混乱を生じさせないためにも、「登録番号」と同じ内容を請求書等に記載して交付することは避けることが基本ではないかと思います。

 

坂本氏
 懸念はわかりました。では、仮に交付してしまったとしたら、どのような混乱が想定されますか。結果として、取引の時点(10月7日)で「登録」が済んでいることも想定されますが。

 

加藤氏
 もちろん、取引の時点(10月7日)で「登録」が済んでいるとすれば、結果として混乱は生じないかもしれません。しかしながら、取引の時点で「登録」が済んでいなかったとすれば、買い手はその取引についてインボイスを保存することができず、仕入税額控除の適用ができないこととなります。売り手は、その旨を取引の後に買い手に伝達することとなり得るため、売り手・買い手双方で混乱が生じることが懸念されます。

 

坂本氏
 要すれば、「登録」のタイミングがいつか、ということが重要ということですね。「登録申請」を行ったタイミングと「登録」のタイミングにズレがあることに注意が必要ということですね。

 

加藤氏
 そうですね。ちなみに「登録」のタイミングについては、先ほど説明した「登録通知書」の中で、「登録日」としてお伝えすることとなります。事業者の皆さまにおかれては、「『登録申請』を行った日」や「『登録通知書』が交付された日」ではなく、この「登録日」をしっかりと認識していただきたいと思います。

 

坂本氏
 ところで、先ほど、「e-Taxで登録申請を行うことができる」とのお話がありました。その場合であっても、「登録日」と「『登録通知書』が交付された日」にズレが生じるのでしょうか。

 

加藤氏
 先ほどの説明が必ずしも十分ではなかったので補足します。「登録申請」をe-Taxで行っていただいた場合、「登録通知書」は電子的に交付を受けることができます。他方、「登録申請書」(紙)を提出いただいた場合、「登録通知書」は「紙」で交付されます。

 

 一般的には、e-Taxで「登録申請」を行っていただいた方が、「紙」で行っていただく場合と比較して、ご懸念のタイムラグ(「登録日」と「『登録通知書』が交付された日」のズレ)が小さくなると考えられます。

 

 したがって、そのような観点からも、e-Taxによる「登録申請」を行っていただくことがより良いのではないかと思っています。

 

坂本氏
「登録申請はe-Taxで!」ということですね。

 

 

公表サイトの活用

 

坂本氏
 インボイス制度導入後、仕入税額控除を適正に適用する観点から、インボイスの交付を受けることができる仕入れとそうでない仕入れについて、区分して管理することが重要であると理解しています。

 

 この点について、事業者の皆さまもよく認識している様子であり、それ故に「取引相手(仕入れ先)から交付された請求書等がインボイスとしての記載事項を満たしているか確認するための事務が増える」との声が出ているのも事実です。

この点について何かアドバイスはありますか。

 

加藤氏
 先ほども説明したとおり、インボイスは、現行の区分記載請求書として求められる記載事項のほか、「適用税率」、「消費税額等」と売り手の「登録番号」の記載が新たに必要となります。多くの事業者の皆さまの実務を考えれば、「登録番号」以外の記載事項については、現状でも何らかの確認をしているのではないかと考えられます。

 したがって、インボイス制度導入後の新たな事務負担の軽減を考えるうえでは、とりわけこの「登録番号」の確認作業をいかに効率的に行うことができるかということが重要なのではないかと思います。

 その観点から言えば、今後、国税庁HPにおいて、「登録番号」や「登録年月日」等、「登録」された事項の一部(公表項目)を確認することができる「公表サイト」を用意する予定です。

 

 この「公表サイト」では、「WEB-API」の機能を設け、システム上の連携によるデータ授受を可能とする予定です。

 

坂本氏
 要すれば、公表項目に係るデータ等を自社の業務システムの中に取り込むことで、「登録番号」に係る確認作業を自動化することも可能になるということですね。事業者サイドからすれば、これは非常に重要なことだと思います。何万もある請求書や請求データの一つ一つについて、そこに記載されている「登録番号」を確認する必要はあるが、それを人海戦術的に行っていくということはおおよそ現実的ではないと思っていました。ところで、「Web-API」機能を利用するに当たって、具体的な手続きなど留意点はありますか。

 

加藤氏
 「Web-API」機能については、事前にアプリケーションIDの発行手続を行っていただくことになりますが、どなたでも利用できるようにしたいと思っています。

また、そのIDの発行手続についても、既に「法人番号公表サイト」の「Web-API」機能利用のためのIDをお持ちの方はそのIDで利用できるようにするなど、できる限り使いやすいものとしていく予定です。

 

坂本氏
 この「公表サイト」に係る各種機能を積極的に活用することで、インボイス制度導入による事務作業の負担は大きく軽減される可能性があるということですね。事業者サイドは、こういった機能を活用するためのシステム対応も視野に入れながら、早めに準備を進めるということが重要ということですね。

 流通BMSとしても、「登録番号」をメッセージの項目に追加する必要があると考えており、現在、インボイス制度の運用を考慮した改訂を検討・調整中です。改訂内容が定まり次第、早めに公表していきたいと思いますので、事業者の皆さまにおかれましても、各種手続やシステム改変について、余裕を持ったスケジュールを立てていただきたいと思います。

 

 

 

 

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