流通システム開発センター
理事
森 修子 氏
流通システム開発センター
データベース事業部
次長
銅直 正 氏
デジタル化やネット化が進み、さまざまな商品が国内外で販売されるようになってきた。商品・取引が国際化するなか、商品を、他とダブらないユニークな番号で特定するGTIN(国内ではJANコードと呼ばれている)を、国際ルールに則って管理・運用する必要性が増している。国際標準の流通システムを推進するGS1に、日本の代表機関として加盟する流通システム開発センター(国際的にはGS1 Japanとして活動)は、2019年10月にGTINの付番と番号に紐付く商品情報の管理を簡易化するデータベースサービス「GS1 Japan Data Bank」を開始した。サービス開始の背景や概要を、流通システム開発センター 理事の森修子氏と、同 データベース事業部 次長の銅直正氏に聞いた。
世界の潮流はGTINの一元管理
事業者と商品を識別するJANコードは、国際的にGTIN(ジーティン)(Global Trade Item Number)と呼ばれるが、近年はGTINの正当性がより求められるようになってきた。その背景にあるのがネット取引の拡大だ。参加プレーヤーが増加して取引商品が多様化した結果、商品は国や地域を超えて販売されるのは当たり前となり、GTINの利用も拡大している。
プレーヤーが増えるとGTINの管理運用においても、思わぬ間違いが起こりやすい。例えば、小規模な中間業者が何も知らずに適当なJANコードを勝手に作って流通ルートに乗せてしまったり、特定事業者の店舗内だけで通用するインストアコードを貼り付けた商品を誤って外部のルートに流通させてしまったり、といったことが発生する。このような間違いによって、商品の取引において、混乱や無駄が生じてしまう。
こうした背景もあり、商品の仕様に責任を持つブランドオーナーが、自社の商品に一つ一つ番号を割り当てるGTINは、国際的にその重要性が高まり、商品の「身分証明書」として機能することが期待されている。ある商品のGTINが、GS1(ジーエスワン)から発行を受けた正当で有効なGS1事業者コードから割り当てられたものかどうか、さらにGTINの基本的な属性情報を確認したいというニーズが高まっている。
これまで各国のGS1加盟組織は、9ケタ(または7ケタ)の事業者コードの貸与ならびに管理を行ってきた。残りの3ケタ(または5ケタ)の商品アイテムコード部分は事業者が割り当てて、GTINを設定し管理している。
森氏は「GS1事業者コードだけでなく、個々の商品アイテムコードの設定からGTIN発行までを各国のGS1がサポートし、一つ一つのコードについて最低限の基本的情報も収集し管理し、参照できるようにしていく、というのが世界的な潮流であり、GS1全体のあらたなミッションになっています。そこで、日本でも取引を円滑にし、必要な情報をいつでも参照可能にするため、GTINを含めた各種コードの情報を集約して管理するGS1 Japan Data Bankサービスを新たに構築しました」と説明する。
国際的には、GS1が各国で発番されたGS1事業者コード、商品識別コード(GTIN)、ロケーションコード(GLN(ジーエルエヌ))などのGS1識別コードの基本情報を網羅した「GS1レジストリープラットフォーム」の構築を進めている。世界の事業者がGS1レジストリープラットフォームにアクセスすることで、自分の手元にあるGTINやGLNの情報が正しいかを参照できるというものだ。例えば、GTINの場合ならオンラインや実店舗の小売業者、卸売業者などが新たな取引先の商品を扱う際、ブランド名、商品名、商品画像などを商品の特定に必要な情報を参照しながら、その正しさを確認することが可能になる。
「流通システム開発センターでもすでにGS1事業者コードの情報は、日々GS1レジストリープラットフォームに提供しているので、最新データを参照できます」(森氏)
商品の基本情報を登録するだけでJANコードを自動発行
2019年10月にリリースした「GS1 Japan Data Bank(略称:GJDB)」は、GS1の日本の代表機関である流通システム開発センターが、GTINの設定や管理の負担軽減を主な目的として、国内の中小規模の流通事業者に対して開始したサービスだ。商品メーカーに商品情報を登録してもらい、それを業界全体で共有しながら、世界に情報を発信していこうというコンセプトで構築されている。
一番のメリットは、事業者(商品メーカー)のJANコード(GTIN)の付番が簡単になることだ。従来、事業者がGTINを付番してバーコードに印刷するまでには、9ケタ(または7ケタ)のGS1事業者のコードが貸与された後、事業者自身が3ケタ(または5ケタ)の商品アイテムコードを設定し、データの正しさを判別する「チェックデジット」を計算してから13ケタのコードを生成しなければならなかった。そこからバーコードをバーコード生成ソフトで作成してラベルプリンターで印刷するか外部業者に発注して印刷するステップを踏むのが一般的だ。
GJDBならGS1事業者のコードが貸与された事業者は、専用のポータルサイト「My GS1 Japan」にアクセスして、商品名、商品説明、分類などの基本情報を登録するだけで商品アイテムコードが自動生成され、さらにチェックデジットの計算も不要になる。商品情報を確定後、GJDB関連のデータベースに公開すると、バーコード画像の生成と画像データのダウンロードが可能となる。
データベース事業部 次長の銅直正氏は「事業者自身がGTINを生成する従来の方法は、ミスが発生しやすく、悪意がなくても間違えてしまうケースが往々にして見られました。チェックデジットの計算も面倒で、特に中小事業者からは負担を減らしたいという声も聞こえてきます。GJDBならすべて自動で設定するので、手間もかからず、ミスも起こりません」と強調する。
登録した後も、「My GS1 Japan」にログインしてGJDBにアクセスすれば、いつでも自社のGTINの付番状況や基本の商品情報が確認できる。商品情報のデータは「GS1レジストリープラットフォーム」とも連携し、世界各国あるいは日本国内で、それぞれGS1組織と契約した商品情報利用者が参照することになるため、広く自社商品をPRすることも可能だ。
自社が販売するすべての商品の情報を登録しておけば、GJDB内でGTINの番号が正確に管理されるため、新たに付番する際もGTINが重複することはない。「付番ミスは、中小の事業者だけでなく、大きな事業者でも起こります。例えば、たくさんのGS1事業者コードをお使いいただいている事業者の方が、うっかり、GS1事業者コードのうち1桁を間違えて、結果的に自社には貸与されていない領域を使ってGTINを作ってしまう、などのケースがあります。こうしたミスも、常にGS1事業者コードの使用状況を確認しているGJDBで防ぐことができます。
また、企業の買収や合併があった場合でも、関係する事業者が、それぞれで管理していたGS1事業者コードから作られたGTINの情報をGJDBに登録していただいていれば、合併などのあとも、引き続き問題なく情報を管理することができます。」(森氏)
商品データベースとの連携で商品マスターの管理が効率化
GJDBのもうひとつの特徴は、流通システム開発センター(GS1 Japan)に関連する国内外のデータベースにシームレスに連携できることにある。GJDBと連携予定の国内のデータベースは、JANコードと付随する商品情報を一元的に管理する商品データベースの「JICFS/IFDB」と、訪日外国人向けの商品情報を提供する「多言語商品データベース」の2つだ。JICFS/IFDBは、POSシステムやEOSなどの導入運用に必要な商品マスターや、小売業と卸売業間のオンライン受発注処理で利用される商品情報など、作成負荷が大きい商品マスター情報を収集/整備し、JICFS協力会社経由で、誰もが低コストで迅速に正確な商品情報を得られることを目的としたものだ。
「小売事業者の多くが困っているのが商品マスターのメンテナンスですが、JICFS/IFDBでは、商品メーカーおよびJICFS/IFDBと連携している業界商品DB(FDB、プラネット、OTC医薬品、JD-NET)や卸売業、小売業から収集した商品情報をJICFSの整備基準に沿ってメンテナンスしています。メンテナンス後の商品情報は小売業、卸売業、メーカーの流通三層で広く利用されています。将来的には、業業界商品DBからの商品情報の収集(連携)については、順次、JICFS/IFDBからGJDBに移行していく予定です。」(銅直氏)
2019年10月のリリース以来、GJDBの登録企業は400社を超え、すでに5000アイテムを超える登録があるという。現在は新規の中小の事業者の登録が中心だが、今後は大手の事業者にも拡大していく考えだ。情報の登録や利用の利便性を高めるための機能も、いくつかのステップに分けて順次追加しながら、国内の商品情報の交換にまつわる課題解決に貢献することを目指すという。有効なGS1事業者コードを貸与された事業者なら、登録料は無料(バーコードシンボルの作成は件数により一部有料)。興味のある事業者は、流通システム開発センターのホームページで確認して欲しい。
「GS1 Japan Data Bank(GJDB)」の詳細はこちら