流通団体によるクラウドEDIサービスの設立で流通BMS普及を促進 ~キーマンが座談会で語る~

日本スーパーマーケット協会
専務理事
大塚 明氏

日本スーパーマーケット協会
情報システム委員会
委員長
神藤 信弘氏 (株式会社ヤオコー 営業企画部 システム管理担当部長)

 

経済産業省 商務流通グループ
流通政策課長
(併)流通・物流政策室長
佐合 達矢氏

 

 普及段階に入ったといわれる流通BMSだが、JCA手順からのスイッチングコストの負担やITリテラシーの不足など障壁もあり、普及が思うように進んでいないという現実もある。こうした状況を変える取り組みの一つとして、このほど日本スーパーマーケット協会(以下、JSA)では、他の流通団体とも連携して流通BMSのクラウドEDIサービスを立ち上げ、流通業界に向けて広く利用を呼びかけていく方針だ。

 そこで、JSAから、専務理事の大塚明氏と情報システム委員会の委員長を務める神藤信弘氏、そして流通BMSの普及を支援する経産省から、商務流通グループ 流通政策課長の佐合 達矢氏の3名に、クラウドEDIサービス設立の狙いと意義、流通BMS普及に向けた期待などについて座談会形式で語ってもらった。

 

 

キーワードは「競争は店頭、インフラは共有」

 

— 今回のクラウドEDIサービス設立の狙いについて教えていただけますか。

 

大塚氏

 前提の1つとして、日本の小売業、特に食品スーパーマーケットが生き残っていくには何をなさねばならないか。それがセンター設立のベースにあります。かつてのように人口が増加し、購買意欲が高かった時代には、企業の生き残りは難しい作業ではありませんでした。しかし、人口減や高齢化が進み世帯構成の変化、そして経営環境が激変する中、日本は「モノ不足」から「モノ余り」時代を経て、今や「モノ離れ」への時代へと突入しています。一方で、日本のチェーンストアが誕生した時代が高度経済成長期であったため、小売チェーンは急成長しました。同業社との競争はもとより、生産者・メーカーとも対峙する関係にすらあったのです。そのため対外的には流通全体を巻き込む情報共有の必要性を説いても実態は名ばかりです。EOS発注にしても、フォーマットの標準がなかったものですから、1000通り以上ものフォー マットが乱立している状況で、大きなロスが生じていました。

 

 小売業はドメスティックなもので、ローカルな影響が支配します。しかし、そのバランスは変化しています。グローバル化の観点からも、このような大きなロスを抱えたままでは、日本の小売業の生産性は上がらず厳しいものになります。また、小売業は戦いの場を店頭に置くべきで、それ以外のインフラに近いものは共有し、コストは分担することが良いです。これがJSAのスタンスです。インフラがインフラである条件として最も重要なのが、標準化されていることになります。ところがコンピューターのレガシー化の問題などで解決できないでいる企業も多いです。そこで、J手順が使用できなくなることを啓蒙し、流通BMSによる業界標準に移行することを推奨する中で、昨年から経済産業省の肝煎りで「製・配・販」の3層連携による流通効率化への取り組みが開始されたのです。業界の機運が高まる中にあって、JSAとしてもコストを気にすることなく、気軽に参加できる仕組みを創るチャンスだと考えたのです。

 


共通基盤でコスト削減して経営をイノベーション


— 流通BMSの普及を支援する経産省のお立場から、どうお考えでしょうか。

 

佐合氏

 企業経営の中で競争領域と非競争領域を明確に分けることは難しいことですが、製・配・販で生産、在庫情報等が共有出来れば流通の効率化が実現します。流通BMSもその一つでこれにより取引の共通基盤ができれば、お互いのコストを削減できて、本当の意味での注力すべき競争領域に経営資源を投入できるようになる、これは間違いないことだと思います。

 またその結果、小売業本来の経営のイノベーションにつながっていくことになれば、非常に好ましいことと言えます。もちろん、それは単に商品価格を安くするという経営を進める方もおられると思いますが、それだけではなく、消費者のニーズに応えるきめ細かなサービスを実現したり、得られた利潤を使って製造小売り垂直型の形態を目指すなど、経営の視点から様々な可能性が考えられる。
 そのための情報基盤ともいうべきものをしっかりと構築して、広く利用できるようにしていくため、JSAがリーダーシップをとって取り組みを進めることは高く評価したいと思います。

 

— 海外の流通業のサプライチェーンを比較すると、日本は合理化の余地が大きいとお考えですか。


佐合氏
 海外との比較で日本の流通構造が非効率だとは一概には言えませんが、ただ、投資家目線で見た経営指標を考えると、投資収益率は小売りも、卸も、メーカーも総じて低いのは事実です。もちろん、この一点をもって日本企業の経営が海外企業に劣っているとは思いませんが、海外企業に学ぶべきことも多く、また、改善の余地がある以上、取り組みは進めなければならないでしょう。こうした点を解消する意味からも、フォーマットの共通化はその第一歩となると思います。

 


クラウド時代に標準化は避けられない命題


— 流通BMS導入の必要性は理解するが、やはりハードルは高いと考えている企業に向けて、踏み切る後押しとなるようシステムの観点からお話しいただけますか。


神藤氏

 情報システム委員会として流通BMSの普及に取り組んでいる立場からすると、今はIT業界が大きな転機を迎えているという背景があります。どういうことかと言えば、情報システムを自社で所有する時代は終わりを迎えるだろうということです。ハード/ソフトを含めたシステムはクラウドに移行して行きます。この流れは止まりませんし、企業規模の大小に関わらず進みます。

 これを前提に考えた時、我々が取り組むべきことは共同化や共同利用をいかに進めるかということになります。その際に最適なものは標準化であり、避けて通ることはできません。業界で決めた形にデータの構造を含めて統一することが、すべての効率を向上させ、利用者もITベンダーも短期間かつ低コストで環境を構築できるチャンスになる。その第一歩が流通BMSだと考えています。受発注だけでなく、マスターも含めて標準化が必要ですし、それができなければ日本のIT業界の将来も危惧されるくらい大きなイベントだと思っています。


 これまで標準化については、総論賛成ということで必要性は理解していただいているので、あとは各論のところで情報システム委員会として個々の企業の悩みを聞いたり、今回のクラウドEDIサービスのように、一つの推奨の形を提示するなどして、サポートしますので、一社でも早く流通BMSの導入に踏み切って頂きたいと思います。

 

 

消費者の変化に近づくため、流通BMSの大きな役割を担う

 

大塚氏
 日本の消費者の求めるモノは、「量」から「質」へと変化し、そして今では「質」からも卒業し、商品のもつ「理由(わけ)・こだわり・物語」を求めています。自分自身の価値観に合った商品、サービスを求める時代となっており、そこでは、チェーンストアであっても個店、個店が異なる動きをすることが求められています。これからはどれだけお客さまに近づくことが出来るかが重要になり、われわれ小売業に突き付けられているテーマといえます。そのために売り場が実現しなければならないのは、店舗ごとの品揃えであり、その実現にはロジスティックスが重要になり、ロジスティックスを成り立たせるためには情報が不可欠になります。効果的な運用するために流通BMSは入り口であり、大きな役割を担うと考えています。


佐合氏
 実際、投資を個々の企業がそれぞれ個別のシステムを作っていては、社会全体で見れば重複投資となり、巡り巡ってサプライチェーン全体にコストが添加されることにもなります。社会的にも大きな損失でしょう。これに対して共通基盤が広がりネットワークとなれば、スケールメリットを生み、確実に導入コストが下がります。特に、従来であれば個々の投資が難しかった中小の企業には大きなメリットです。本来必要のない独自コストに経営を縛られること無く、将来のビジネスの可能性や選択肢を増やすことにつながります。その意味からも流通BMSの導入は大きな意義があります。


— クラウドEDIサービスが目指す方向と利用を想定するユーザー層について教えてください。


神藤氏
 主な対象としているのは10-20店舗程度を展開されている中小チェーンです。そうした企業では専任のシステム担当者がおらず、ITの知識も不足しがちなところが少なくありませんし、流通BMSの導入に当たってもケアが必要となります。そのためクラウドEDIサービス設立のパートナーとなる企業の選定には、流通BMSの導入、システム構築の実績はもちろんですが、参入のハードルをできるだけ低くできるような取り組み、そして全国をカバーする体制を持ち、取引先に向けた説明会のサポートなど、きめ細かなサービスを提供できる点を重視しました。

 

 

他業界にも広く利用を呼びかけて、すそ野を拡大

 

— 実際、どの程度の導入コスト低減や利用が見込まれるのかについて教えてください。

 

大塚氏
 前述のように中堅企業の中には専任のシステム担当者がいないこともあります。それでも容易かつ充分に低コストで利用できるよう、センターのサービスは強く配慮しています。コストは個々の企業で異なるので一概に言えませんが、価格を含めたセンターのサービス体系がサービス事業者の標準的なものになっていくのではと自負しています。  参加企業数の目標ですが、目的はすそ野をできるだけ広げることにあるので、オール日本スーパーマーケット協会とも協同で、卸売業、メーカーにも広く利用を呼びかけるほか、他の流通団体との連携も考えています。また、流通BMSに対する理解を深めてもらうためにも、日本全国で普及説明会を積極的に開催していきます。


— 最後に流通業界に対するメッセージをお願いします。

 

大塚氏
 健全な競争のためにインフラの質と確かさを追及していきたいと思っています。インフラが確保できていれば、企業は商品やサービスの質の向上に注力でき、成熟度の上昇も飛躍的に向上するはずです。そのために業界としてまとまることが大切であることを強調しておきたいと思います。3月11日の東日本大震災後より、流通業界の生活インフラとして果たした役割は、生活者の方々から高く評価戴いたわけですが、もっともっと消費生活を豊かにするという意味において、業界が一つになることが重要です。その観点からも是非、気軽にサービスの利用を検討していただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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