流通BMS普及拡大で期待される効果「導入効果算定の報告書」第4回

 これまで、経済産業省がまとめた「流通BMS導入による効果算定事業」報告書から、流通BMSの通信手順導入効果と業務改善効果を取り上げ、効果算定のモデル式や成果を上げている企業の声などを紹介してきた。最終回となる今回は、今後、流通業唯一の標準として流通BMSが普及拡大し、社会的インフラとして利活用される際に期待される効果を紹介する。流通BMSがもたらすさまざまな可能性について検討してみたい。

 

 

流通BMS普及拡大で期待される効果

 

 報告書では、今後、流通BMSが普及拡大した際に期待される効果として、以下の4つの観点から効果を紹介している。

・「安心・安全の観点」

・「マーケティングや情報提供ビジネスの観点」

・「デジタルコンテンツ流通の観点」

・「他業界との連携や接続の観点」

 

 

トレーサビリティ情報の標準化で品質管理の効率化に貢献

 

 まず、「安心・安全の観点」では、「商品の賞味・消費期限や製造検査のデータを出荷データとして添付することで信頼性の向上に役立てる」、といった活用が調査アンケートのコメントとして寄せられている。さらには、商品の配送に関わるトレーサビリティ情報(入庫日、出庫日、賞味期限、倉庫やロケーションのIDなど)の標準化による品質管理の効率化などに役立てることも検討できる。

 

 トレーサビリティについては、GS1データバー利用への期待が寄せられおり、「商品の製造ロット番号をバーコード化して流通BMSで展開してみてはどうか」、「賞味・消費期限のチェックをGS1データバーでできれば良い」、といった声が寄せられている。また、これは流通業界だけで解決できる問題ではないが、昨今、大きな問題となっている食品トレーサビリティへの応用も、可能性として考えられるだろう。

 

 

新しいビジネスモデルの可能性も

 

 「マーケティングや情報提供ビジネスの観点」では、報告書は新しいマーケティング手法への活用やビジネスモデルの可能性について触れている。この中で、小売りは「棚割りデータとPOS情報の連携やコマーシャル動画への活用」を今後の期待として挙げており、一方の卸側は、「POSフォーマットを統一すると共に、小売りからのPOSデータ配信など、製・配・販3層でのデータ交換および共有されること」への期待を挙げる。

 

 小売りは棚割りデータとPOS情報が連携することで、データ分析や違ったサービスの提供につなげていけるのではないかといった声が挙がっている。

 

 現状はPOSデータに複数フォーマットが存在しており、かつファイルサイズが大きいため、卸側では手作業でのダウンロードやデータ処理が必要となり、多くの手間がかかっている。これもPOSデータのフォーマットが標準化され、流通BMSのオプションメッセージとして小売り側から送信されれば、POS情報の自動的な収集・分析が容易に行えるようになり、作業負荷を大幅に軽減できると期待している。

 

 マーケティングやビジネスへの具体的な活用としては、「広告代理店と連動した新商品のプロモーション、気象会社からの気象データ配信サービスなど」が挙がっている。また、「各地域店舗のさまざまな情報を収集して、需要予測に役立てる(ガソリンスタンド関係の情報収集でプロパンの残量を予測、天気情報の収集など)」といった活用のコメントが寄せられている。

 

 「デジタルコンテンツ流通の観点」では、「書籍などのコンテンツの電子流通による運送コストや時間の削減」、「ネット上でコンテンツビジネスを展開する企業への電子的な依頼と電子納品」などへの活用が考えられる。

 

 

金融業界との連携に大きな期待

 

 「他業界との連携や接続の観点」で、特に注目されるのは金融業界との連携だ。これについては、「金融業界と連携を早急に実現して欲しい」、「これまでの全銀手順をなくしたい」といった、多くの要望が寄せられており、その期待の大きさがうかがえる。銀行とのさまざまなやり取り(振込み、決済、企業間の支払いの相殺など)を、これまでの全銀手順と関係なく流通BMSで行えるようになれば、利便性の向上は大きいと考えているようだ。

 

 このほかにも、「電子政府との連携(監督官庁への電子申請など)」や、「チェーンストア/百貨店業界以外の業界(通販系、スポーツなどの専門店)への販路拡大のために、他業界への流通BMSの採用を働きかけて欲しい」といった声が挙がっている。また、国内だけでなく流通BMSを海外との取引に適応している企業も出ている。

 

 

CO2削減では効果算定のモデル式が作成

 

 最後に、今や企業活動に不可欠となった環境対策への配慮という観点から、流通BMSの導入によるCO2削減効果を紹介しよう。報告書では、紙伝票を廃止して伝票レス化することで、削減できるCO2の量を算定するモデル式を作成している。具体例として、流通BMSを導入により現JCA会員企業数の約70社が伝票レスを実施した場合、年間2,057トンのCO2削減が期待できると試算している。

 

 伝票レスは、CO2削減のみならず紙の削減や、第2回で触れたようにさまざまな経費削減につながる。環境問題への貢献をうたう企業では、ぜひ、積極的に取り入れたいものだ。

 

 これまで見てきたように、流通BMSは製・配・販3層の個々の導入企業それぞれに確実にメリットとなる。しかも、普及が進めば進むほど、個々の企業の導入効果が拡大することに加え、サプラーチェーンの全体にも大きな効果が期待できる。それだけに流通BMSの普及は業界全体の利益であり、社会貢献にもなるのだという高い理念を持って、積極的な取り組みを期待したい。

 

 

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