流通BMSの導入を支援し、普及を加速する「導入効果算定の報告書」第1回

 流通BMSは平成21年10月の基本形Ver1.3 リリースによってスーパー業界で利用できる環境がほぼ整備され、今後は流通BMSの本格的普及を目指す段階に進もうとしている。そこで課題となるのが、導入を検討する企業にどれだけ導入のメリットを具体的に示せるかという点だ。
 こうした声を受けて、経済産業省は昨年度に「流通BMSの導入による効果算定に関する調査研究事業」を実施、先ごろ報告書をまとめた。そこで今回から4回にわたって、報告書で示された効果算定のためのモデル式などを紹介し、流通BMS導入の具体的なメリットについて考えていきたい。第1回目となる今回は、報告書の概要を紹介する。

 


本格的な普及期を目指して流通BMS導入を検討する企業を支援

 

 今や流通BMSという言葉は日本の流通業で広く認知されるようになった。基本形Ver1.3の リリースによって、平成21年度までに基本的な標準化はほぼ終了したといえる。経済産業省でも、流通BMSのさらなる普及、促進を図るため、これまでの「標準」を流通業界に広く認知してもらうことを主眼とした普及推進活動から、今後の本格的な普及期を目指して、導入を検討しているユーザー企業を支援するための活動へと重点をシフトしている。

 

 そうした活動の一つが、昨年度に経済産業省事業として実施した「流通BMSの導入による効果算定に関する調査研究事業」だ。これは、流通BMSを導入検討している事業者から多く寄せられた、「本当に役に立つの?」、「導入効果はあるの?」、「また、どのくらい費用ががかかるの?」といった声に応えるものとしてまとめられた報告書だ。

 

 こうした声は特に、流通業界の多くを占める中小企業に多いため、この層への理解と普及推進を目指した施策となっている。同時に、「効果の見える化」によって、流通BMS導入の決定権を持つ経営層に、導入のインセンティブを示し、理解を深めてもらうという狙いも持つ。報告書に示された効果のモデル式などを活用することで、システム担当者が稟議を上げる際にも、説得材料として大いに役立つことが期待できるものとなっている。

 

 

導入効果を多くの企業で定量的に算定できるモデル式を提示

 

 「流通BMS導入による効果算定事業」による報告書では、効果のモデル式と共に、将来、流通BMSが標準として広く普及拡大した際に期待される効果についても言及している点が注目される。

 

 流通BMSの普及拡大は、日本の流通業全体の効率化につながり、直接的なコスト削減に留まらず、さまざまな業務効果をはじめ、新たなビジネスモデルの登場などにつながると期待されることが背景にあるためだ。

 

 ただし、流通BMSの導入は手段であって、決して目的ではない。あらゆるプロジェクトにも共通していることだが、流通BMSの導入を成功裏に進めるには、まずは流通BMSの導入目的・目標を明確にすると共に、必要な体制の整備からはじめることが肝要だ。そのためにも、何を目指し、その結果どんな効果が得られる(期待できる)のかという目標を設定しておく必要がある。

 

 だが、流通BMSは従来のJ手順の延長ではなく、業務プロセスを含む新たな受発注の標準化であるため、多くの企業にとって、導入効果を事前に算定する作業は困難といえる。また、すでに導入を行った企業の事例を、そのまま自社の状況に当てはめられるとは限らない。その点において、「流通BMS導入による効果算定事業」の報告書は、経済産業省という公の機関が実施し、導入効果を多くの企業で定量的に算定できるモデル式を提示した点に大きな意義があるといえる。

 

 

通信手順、業務改革、普及拡大の3分類で効果算定モデルなどを提示

 

 今回の報告書は、流通BMS導入を行った企業に協力してもらい、導入効果についてアンケートとヒアリングを実施した。アンケート・ヒアリングの対象は大手小売り21社、大手卸6社の合計27社。

 

 報告書では、流通BMSを導入レベルで3段階に分けて、各段階に応じた導入効果を整理している。※報告書で使われている図表を使って解説(説明)

 


E1:「流通BMS 標準通信手順を導入することによる効果」8項目(流通BMSのEDI環境に切り替えることで得られる効果)

 

E2:「流通BMS標準に合わせて業務改革をすることによる効果」19項目(流通BMSの導入に伴い、社内業務や業務システムを改善することによって得られる効果)

 

E3:「流通BMSが普及拡大し、通信インフラとして利活用される際に期待される効果」10項目

(今後、業界としての活動や、流通BMSとての標準化を実施した後に得られる効果)

 


 上記のうち、特に注目されるのは、E1とE2の一部の項目で効果算定モデル式が作成され、実際に自社の状況に合わせてモデル式を適用できることだ。例えば、標準通信手順の導入による効果として、中には9割を超える作業削減効果を見込むモデルや、業務改革においても3/4の削減を見込むモデルなどが提示されている。こうしたモデルは、流通BMS導入を検討しながらも、その効果を明確に見切れていないために踏み切れずにいる企業にとっては、とても興味深く、決断を後押しするものとなるだろう。

 

 次の2回目では、3段階の流通BMSの導入レベルに基づいて示された、主な効果算定のモデル式について紹介していく。

 

 

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