EC 事例2021 ~実践企業に学ぶ売り上げ拡大への道~

変化捉え、好機つかむ

 新型コロナウイルスの感染拡大などを背景に、電子商取引(EC)で買い物をする消費者が急増した。生活様式が変わるにつれて、売れる商材にも変化が見られる。競争が激しさを増す中、ニーズの変化を捉え、成長の好機をつかむには、どのような戦略や対策が必要なのか。先ごろオンラインで開催したMJフォーラム「EC事例2021」には、EC事情に詳しい専門家が登壇。先進ソリューションの活用法や実践例などを幅広く紹介した。

 

 

スペシャルセッション

「BOTANIST」「SALONIA」の成功から紐解く、D2CブランドにおけるEC戦略

I-ne 取締役
販売本部 本部長代理 
伊藤 翔哉氏

サイト販売、試金石に

 当社の代表的なブランドである「BOTANIST(ボタニスト)」や「SALONIA(サロニア)」は、ECを活用したテストマーケティングにより大きく成長した。その成功モデルを「IPTOS(イプトス)」としてフレームワーク化し、新商品・新ブランドの開発に生かしている。

 

新たな商品のアイデアは日常的に収集している。全社員による定期的な提案のほか、独自開発の人工知能(AI)「KIYOKO(キヨコ)」を活用。交流サイト(SNS)などのビッグデータから消費者の潜在的なニーズを読み解き、新しいトレンドの着想を得ることで一歩先のブランド開発を可能にする。

 

 新たな企画が立ち上がったら小ロットで商品を開発し、ECでテスト販売する。ヒートマップによるランディングページの検証やCPA(顧客獲得単価)、LTV(顧客生涯価値)、口コミ、ZMOTなどの指標を評価。一定の基準をクリアした場合に限り、6万店舗を超えるオフライン流通網への展開など次のステップに進める。

こうした仕組みにより失敗のリスクを低減。定量的な評価に基づく判断で社員の納得感も得られる。オンラインで顧客を獲得することで、オフライン展開時にすぐに売り上げが上がる状況をつくれるのも強みだ。相互送客で徐々にシェアを伸ばしていく。

 

 

セッション

アウトドアブームの追い風だけじゃない!店舗 ✕ EC ✕ デジタル活用によるUNBY成長の秘訣とは?

フューチャーショップ 執行役員
セールス・マーケティング部 統括マネージャー
安原 貴之氏

語りたくなる工夫が鍵

 コロナ禍によりEC需要は増大し、売り上げも新規顧客数も伸びている。しかし、すべてのEC事業者が成長できているわけではない。競争が一層激しくなったことで、顧客に選ばれなければ購入してもらえない状況が強まっている。

 

 顧客に選ばれるには、どのような工夫が必要なのか。例えばアウトドアブランドなどを展開する「UNBY(アンバイ)」は、顧客とのデジタルコミュニケーションを重視。顧客が「つい語りたくなる」商品や店づくりを工夫してSNSでの露出を増やし、実店舗・ECへの訪問がさらに増える好循環を生んでいる。

 

 店舗側もSNSで最新情報などを発信。顧客からの質問に答えるなど積極的に交流を図り、ファンとなった顧客が自発的に語ってくれる環境を醸成している。実店舗での買い物時には公式アプリのダウンロードを案内。限定商品の先行販売など会員特典を手厚くし、「つい語りたくなる」仕掛けとして活用している。

 

 こうした実店舗、EC、アプリで相乗効果を生み出す仕組みを実現しているのが、当社の「futureshopomni‐channel」というプラットフォームだ。実店舗とECのポイントを共通化して顧客を統合。異なるチャネルを横断しながら一貫性のあるサービスや接客を可能にし、顧客のファン化を実現する。

 

 

 

セッション

[速報]メーカー販路DX最前線 EC・D2Cでデジタル販路に舵を切れ! ~ブランドのECモール直販戦略事例~

いつも アカウントグループ
グループマネージャー
石川 雅人氏

DtoC参入を支援

 拡大を続けるEC市場をけん引しているのは、楽天市場・AmazonなどのECプラットフォームだ。しかし、メーカー系企業は様々な事情からECプラットフォームに未出店の場合が多い。小売業頼みのEC展開では、ブランド力の低下が懸念される。自社商品に注力して販売してもらうのは難しく、値引き合戦になりがちだ。発送が遅いなど商品とは関係ないサービス面でブランド価値が影響を受ける恐れもある。商品を適切な価格で販売し、ブランド力を強化して利益を獲得していくには、メーカーによる直販(DtoC)への参入が不可欠だ。 

 

 当社が提供する「ハンロー」は、そうした課題の解決をワンストップで支援するサービスだ。商品を卸していただくことで、当社がオンラインでの販路を開拓し、ブランド公式店を立ち上げて運営まで実施。EC戦略の立案から販売方法の検討、クリエーティブ、広告、倉庫管理、配送、データ分析まで行い、売り上げ増と利益向上に貢献する。競合商品との併売がなく、ブランド単位で最適なマーケティングが可能。基幹システムの改修なども必要ない。

 

 当社は1万案件を超えるEC・DtoCマーケティングの支援実績がある。蓄積したノウハウを生かして、美容、健康、家電、生活雑貨、食品など、各領域の特色を捉えた最善の施策を展開する。

 

 

セッション

アプリ活用でEC売上を伸ばすための3Tips 〜DULTONやアンダーアーマーに学ぶ〜

ヤプリ マーケティング本部
和田 理美氏

アプリの強み生かす

 生活者の手のひらにあるスマートフォンをブランドへの入り口とするため、アプリの活用に力を入れる企業が増えている。アプリはウェブサイトに比べ接触頻度が高く、快適な動作やプッシュ通知などによる即時性に強みがある。

 

 こうしたアプリの特徴を生かしてECの売り上げを伸ばすポイントは3つある。1つ目は快適なUI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザー体験)をデザインすることだ。商品情報を素早く表示して待たせないなど、留意すべき点は多い。

 

 2つ目はユーザーごとにパーソナライズ化することだ。属性や好みに応じて最適な情報を配信する。3つ目はPDCA(計画、実行、評価、改善)を高速で回し、ニーズの変化に応じて進化を続けることだ。

 

 当社のノーコードアプリプラットフォーム「Yappli(ヤプリ)」は、こうしたポイントを押さえたアプリ導入を支援する。短期間で導入・アプリストア公開ができ、プログラミングの知識がなくてもブログを更新する感覚で運用できる。 

 

 簡単にログインできる仕組みなど、ECの支援機能も豊富にそろう。年間200件超のアップデートを実施しており、常に最新の機能を利用可能だ。サポートチームによる運用支援やユーザー会を通じたナレッジの共有なども実施している。

 

 

 

セッション

ワークマン、コーセーが実践するインスタ&動画コマース ~350社導入のビジュアルマーケティングプラットフォームvisumo活用事例~

visumo 取締役
井上 純氏

顧客集める“映え”重視

 消費者の目線はより「映える」コンテンツに向くようになった。鮮度の高い情報を得ようとSNSを「タグる」傾向が強まり、EC利用者の多くがビジュアル情報を意思決定に役立てている。

 

 ECサイトでも画像共有アプリのように写真を配置するとアクセス数が伸び、写真と関連する商品ページに誘導することでCVR(成約率)が高まる傾向がある。しかし、EC事業者が自ら用意できる素材は限られている。顧客やスタッフが撮影した写真などのUGC(ユーザー作成コンテンツ)を有効活用する視点が欠かせない。

 

当社はウェブサイトのコンテンツ充実を支援するビジュアルマーケティングプラットフォームを提供している。画像共有アプリなどから消費者が撮影した写真や動画を集め、ECサイトに掲載することが可能。画像の使用許諾を得る過程で商品サイズなどを確認し、画像と一緒に表示して購入の検討に役立つコンテンツにブラッシュアップするのも有効だ。UGCを活用する中で自社のアンバサダー候補を発掘するなど、ビジュアルの活用にとどまらない成果を上げている例もある。

 

 店舗スタッフが撮影した写真を直接ECサイトに投稿することも可能。ライブコマースの配信映像などもプログラミングの知識不要で手軽に掲載できる。

 

 

スペシャルセッション

生鮮ECプラットフォーム「クックパッドマート」の新発想

クックパッド 買物事業 本部長
水上 真介氏

買い物の理想を追求

 現代は共働き世帯が主流となり、週末にまとめ買いをして平日に買い足すといった買い物行動が多い。スーパーが遠くて買い物に行くのが大変という人や、ECを利用しても送料がかかる、受取時に在宅している必要があるなど、不自由さを感じる人もいる。

 

 あるべき買い物の姿を実現すべく、当社は生鮮食品EC「クックパッドマート」を展開している。こだわりの食材をアプリで注文し、あらかじめ指定した「マートステーション」(冷蔵庫)で受け取れるサービスだ。一品から送料無料で、利用者は指定時間内の好きな時間に受け取れる。

独自の流通の仕組みをつくることで送料無料を実現し、受け取り用の冷蔵庫を自社開発して鮮度の問題を解決した。温度管理を徹底するなど安全対策にも万全を期している。

 

 こうした取り組みの結果、700以上の販売者から産地直送の食材を新鮮なうちに食卓に届けられるようになった。現在、受取場所は約500カ所あり、販売者は販路拡大も期待できる。

 

 今後は、鉄道、コンビニ・ドラッグストア、マンションなど、日常の動線上に受取場所を拡大していきたい。レシピサービス「クックパッド」のデータと連携した買い物提案や、位置情報を利用した受取場所の案内などにも取り組んでいく。

 

 

 

<協賛>

フューチャーショップ、いつも、ヤプリ、visumo

 

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