日経MJフォーラム ブランドメーカー直販時代が到来 「EC・D2Cで、デジタル販路チャネルへ舵を切れ! ~メーカー販路DXを実現する「ハンロー」とは?~」

 コロナ禍を背景に電子商取引(EC)需要が急増している。ブランドメーカーは消費者に直接商品を届けるD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)・ECへの取り組みを急いでおり、一流ブランドが大手ECモールへ出店する動きが盛んだ。成長分野は大手ECモール(ECプラットフォーム)であり、出店しなければブランド力が減衰する恐れがある。その一方でECモールに出店できない理由を抱える企業はまだ多い。ECではリアル店舗とは異なるマーケティング戦略が必要となり、ECとリアル店舗の連携も重要となる。

 

 

オープニングトーク

いつも 取締役副社長

望月 智之氏

 

 

デジタル販路を開拓せよ

 日本のEC市場は全消費の6〜7%といわれていたが、コロナ禍を背景に購入者が急増している。デジタルトランスフォーメーション(DX)やD2Cが注目されるようになってきた。

メーカー各社がD2Cブランド立ち上げに注力している。

 

 EC・D2Cへ取り組むメーカーは増えているが、苦戦する場合も多い。物流、販路拡大、ブランディングなど様々な課題がある。ECの勝ちパターン、失敗しやすいパターンはいくつもあり、同じやり方が常に通用するわけではない。

 

 ここで重要なのは、どの製品をどの販売チャネルで売るかだ。私たちは「デジタル販路」と呼んでいる。EC支援をする我々の経験と、ポーラ、花王という有力プレーヤーの事例から、ぜひ大切なポイントを学びとってほしい。

 

 

先進事例講演

ポーラ ブランドマーケティング部 部長
日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構 代表幹事
中村 俊之氏


顧客自身の物語を大事に
 当社のEC事業は2020年に飛躍を遂げた。背景にコロナ禍はあったが、それ以前からデジタルを通した顧客とのコミュニケーションに注力していたことが大きい。実店舗とECの両方を重視し、デジタルで支援するのが当社の考えだ。

 

 当社のコンテンツにスタッフリコメンドがある。店舗の名前や、販売に携わる美容スペシャリストの名前や顔を出しながら美容情報を伝えている。商品の情報だけでなく、人の個性も伝えている。

 

 コロナ禍を背景にPOLAのオンライン発信を増やしているが、同時に店舗独自のオンラインワークショップも開催している。

 

 ご来店いただくと、カウンセリングやエステなどオンラインでは得られない店独自の体験がつながる。リアルでのサービスは大事なコミュニケーションだ。顧客と直接つながることで聞ける声がある。

 

 今や顧客接点は、広告宣伝、ECサイト、実店舗での体験、アフターフォローと多様化している。各接点で顧客からどう評価されているかを把握できるよう、NPS(ネット・プロモーター・スコア)、PSJ(プロモーター・スコア・ジャパン)といった指標を中心にプロセスの評価を行っている。

 

 当社がこれから目指す方向性は、ナラティブ(語り)とボーダレス。顧客を理解して「おもてなし」していく。顧客自身が体験を選んで、物語をつくれるようにする。そしてデジタルとオフラインの境目のない顧客体験を提供する。

 

 

特別講演

いつも 取締役副社長
望月 智之氏


ECモール出店を急げ
 当社はブランドメーカー向けにECマーケティング支援を提供する。今までに約9800件のプロジェクトを手がけてきた。例えば大手ECモール上の化粧品ブランド公式ショップの運営を手がけ、短期間で急成長させた。

 

 日本でのECプラットフォーム(大手ECモール)と自社ECサイトを合わせた市場規模は、富士経済の調査によれば20年に約10兆円とみられる。その約7割はECモール。自社ECサイトは横ばいか微減だ。新規顧客を獲得するにはECモールに取り組むべきだ。

 

 意外なことに大手メーカーの51%はECモールに未出店である。売り上げが自社ECサイトに偏重している企業は92%に及ぶ。ECモールに出店はしても思うように売り上げられていない企業がまだ多い。当社が最近セミナー参加者に対して実施したアンケートでも、自社ECに取り組む企業が47%なのに対してECモール出店の比率は低かった。

 

 なぜ未出店の企業が多いのか。大きな理由は社内事情だ。例えば基幹システムや物流インフラの整備に費用も時間も人員も必要だが、いずれも不足している。

 

 そこで当社はメーカー販路DXサービス「ハンロー」を提供している。ECのための物流インフラ、システム、公式オンラインショップ運営などを、当社が経費を負担して行う。最短4カ月でシステムを構築可能で、短期間で出店が可能となる。デジタル販路の開拓に成功してほしい。

 

 

先進事例講演

花王 DX戦略推進センター ECビジネス推進部 部長
生井 秀一氏


話題づくりから売り上げへ
 経済産業省の調査によれば、19年に日本のEC化率は6・8%に達している。コロナ禍によりEC市場は急成長し、時代が2、3年早く回ってきた印象だ。ECは生活インフラへと変化していく。

 当社のECへの取り組み事例として、化粧品「LUNASOL」の先行発売がある。狙いは3つ。認知拡大と話題拡散、商品ポテンシャル見極め、売れ行きデータの生産数への反映だ。テスト販売により売れ残りを減らすことができた。

 

 先行販売では、午前10時の販売開始にアクセスが集中した。リアル店舗では入場制限などが必要で集客数は限られる。短期間に集中する顧客に対処できることはECサイトならではの強み。ソーシャルメディアで話題が拡散し、ECモールの売り上げランキングでも1位を取れた。これが再び話題化につながり、スパイラルがうまく回った。

 

 PCやスマートフォンなどのデバイス別の購入率を見ると、約7割がスマホ経由だ。購買転換率を高めるため、スマホに表示する画像やデザインのテストパターンを複数用意し、ターゲットに合わせて訴求するストーリーに変えた。

 

 日本のEC市場には様々なプラットフォーマーが台頭してきた。出店・出品戦略が重要だ。また、Z世代など若い世代は購買行動の入口がオンラインとなった。その一方で「香り」などの体験はリアル店舗でなければ得られない。環境の変化を見極めつつ、オンラインとオフラインを連携させていくことが重要だ。

 

 

クロージング講演

いつも アカウントグループ グループマネージャー
石川 雅人氏


EC未参入はリスク
 今や、ECへの未参入で起こることはブランド力の減衰だ。有名ブランドがECプラットフォーム(大手ECモール)に出店する事例も増えている。ECモール側でもブランドメーカー向けの販促メニューを追加する取り組みを進めている。一流ブランドがECモールに出店することは当たり前になるだろう。

 EC展開を卸や小売りに任せきりにすると値下げ競争に巻き込まれる恐れがある。販売するプラットフォームによっては、意図せず価格が変動する場合もある。適切な価格、適切な露出によりブランド力と利益率を確保するため、ECモール上のメーカー公式ショップの形で出店することが望ましい。

 

 EC未参入の理由は大きく3つある。まずリスクを考慮して判断できない。ブランド価値への配慮、取引先とのしがらみ、他の販売チャネルの売り上げ減少の懸念などから参入していない。2番目が社内事情。基幹システム改修、ECモールの規約、ECのための銀行口座新規開設、個人情報管理などがネックとなる。3番目は資金と時間だ。このうち2番目、3番目を解決するのが当社のサービス「ハンロー」だ。

 

 ECモールへの出店による既存流通の売り上げ減少を気にする企業は多い。私たちが見てきた企業の例では、出店直後に15〜20%程度の流出はあるが、通年では10%、少ないと3〜5%程度の減少にとどまる。むしろ90%以上は新規ユーザーとの出会い、売り上げ向上に結びついている。

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