日経MJフォーラム「ECソリューションピッチ」~課題攻略と競争力強化の突破口~  ECと連携 商機つかむ

 コロナ禍で顧客の行動が変わり、電子商取引(EC)サイトの重要性は高まっている。ECサイトから顧客を離脱させない工夫として、顧客に合わせたきめ細かな情報提供や、より高精度で利用しやすい検索機能が求められる。実店舗とオンラインを連携させるオムニチャネルも進化を続けている。ECと実店舗のポイント統合をきっかけに顧客情報も統合す

ることが可能だ。オンラインのツールにより実店舗の顧客体験(CX)を拡張する試みも始まっている。

 

 

オンラインでCX拡張

オープニングセッション
イケア・ジャパン カントリーデジタルマネージャー 野崎 智子氏

 当社は郊外型店舗で日本に進出したが、2017年から都市部へ、そしてオンラインへと進出した。店舗とオンラインをシームレス化しつつある。オンラインに進出したことでお客様のデータが集まり、不満の内容なども見えてきた。

 顧客行動、カスタマージャーニーには欲求を持ち想像する「インスピレーション」、商品情報を「探る」、「購買」、「アフターサービス」の各段階がある。それぞれの段階で複数のチャネルを連携し、経験をより良くし、拡張し、あるいは補う施策を進める。例えば、ウェビナー(オンラインセミナー)はお客様の経験を拡張する。「原宿ARアプリ」では店舗に置いていない商品の情報もQRコードを読み拡張現実(AR)で補って見ることができる。

 

 お客様が最初に触れるタッチポイントが、我々がコワーカーと呼ぶ従業員だ。そこでテクノロジーやツールに通じた従業員、オムニコワーカーと呼ぶコンセプトを推進している。

 

 

自社アプリでECを

ソリューションピッチ①
ヤプリ マーケティングスペシャリスト 島袋 孝一氏

 当社はノーコードのアプリ開発プラットフォームを提供する。
 ECではアプリの存在感が非常に大きい。調査によれば、3分の1の買い物客がショッピングアプリの利用が増えたと回答している。2割のファンが8割の売り上げをつくるといわれる。アプリはファンになってもらう良い手段だ。

 事例を紹介したい。ある子供服ブランドはアプリからの流入が49%になり、ECの売り上げが11倍に成長した。お客様の動向を見ながらアプリをリニューアルし、鮮度をもってお客様とコミュニケーションした成果だ。


 別の女性服ブランドはアプリの通知の開封率40%を達成した。通知は、お客様の手のひらの中へブランドメッセージを届けられる強力な手段だ。

 

 アプリへの取り組みは、今からでも決して遅くない。我々のツールを使えば1〜3カ月と短期間でアプリをローンチできる。ぜひトライしてほしい。

 

 

検索改善はECに必須

ソリューションピッチ②
ビジネスサーチテクノロジ 営業部 課長 三澤 健太郎氏

 ECサイトの検索機能は重要な機能だ。当社はそのための検索エンジンを提供する。導入実績は約850社にのぼる。

 購入する確度が高いお客様はよく検索を使う。検索経由のコンバージョン率は、そうでない場合より5倍も高い。検索精度や使い勝手を向上させれば大きな効果が見込める。

 お客様は商品名を正確に入力するとは限らない。検索でヒットせず情報にたどり着けないと、多くのお客様がサイトを離脱してしまう。そこで表記の揺れに対応させ、入力ミスを防止するなどの工夫によりヒット率を高める。「ふわっとした」ニーズでサイトを訪問するお客様も多い。そこでランキング表示などで複数の商品を比較検討しやすい工夫をする。

 

 あるアパレルメーカーでは、サジェスト候補と商品提案の機能を導入し、サイト内検索のコンバージョン率を70%向上させた。ECサイトにとって検索を整えることは、走る前に靴ひもを結ぶようなものだ。

 

 

顧客に合わせ通知する

ソリューションピッチ③
プレイド Customer Experience Designer 東原 希典氏

 KARTEは、ECサイトやアプリに来るお客様を知り顧客体験(CX)をつくるプラットフォームだ。お客様に合わせたメッセージをポップアップなどで表示し、アクションを取ることができる。あらゆるデータを顧客軸でリアルタイムに解析・可視化し、あらゆる接点で活用する。

 あるECサイトでは、初回来訪時のみ会員登録を促すポップアップを表示するようにした。リピーターには表示しない。この施策により会員登録率が36%向上した。別の事例では、ECサイト内を巡回しつつ購入するかを迷っているユーザーだけにクーポンを配った。例えば、今週3回以上来訪し、1カ月は購入履歴がなく、商品情報を10㌻以上閲覧しているユーザーは購入間近で「背中を押してあげれば購入に至る」という仮説を立てた。クーポン利用率もコンバージョン率も大幅に向上した。

 

 お客様を正しく知り仮説を立てアクションする。その繰り返しが重要だ。

 

 

SNSとECを連動

ソリューションピッチ④
フューチャーショップ セールス・マーケティング部 安原 貴之氏

 当社はECサイトを自社で立ち上げるためのプラットフォームを提供する。2800店舗以上の利用実績がある。また当社製品により、多くの店舗がECサイトと実店舗を統合し、店頭稼働は2000を超えている。SNSを含め顧客接点を増やし、ECサイトとシームレスに連動することが決め手だ。

 補整下着の販売店では、当社製品を使い実店舗とECサイトでポイントを連携、会員データを統合した。オンラインの顧客接点を強化するため、インスタライブを月2回実施、オンラインでも補整下着のフィッティングを実施。また月1回のオンラインセミナーでフィッティングのポイントを聞ける場を設けた。顧客カルテの仕組みを構築して、オンラインでもECサイトでも適切な接客を可能とした。

 

 かばん、アウトドアグッズの販売店では、インスタグラムに力を入れ、お客様と活発にコミュニケーションを取った。実店舗、EC、アプリの相乗効果によりECの売り上げを伸ばした。

 

 

高精度検索で離脱防ぐ

ソリューションピッチ⑤
Nota マーケティングマネージャー 落合 純平氏

 顧客接点がオンラインへ移行し、人手によるサポートは限界を迎えている。オンラインの顧客接点を大事にしないと、穴の開いたバケツのように、新規顧客より顧客離れの方が多くなってしまう。

 そこでお客様が自己解決できる顧客体験(CX)が大事だ。70%の人が電話での問い合わせの前にFAQなどウェブページを見る。しかし見た人の75%が問題を解決できない。大きな原因は検索のヒット率が低いことだ。キーワードが少しでも違うと検索結果に出ない。


 当社の革新的な検索型FAQ「Helpfeel」は検索ヒット率98%と高い精度を誇る。独自技術「意図予測検索」によって、表記揺れや曖昧な表現、スペルミスにも対応してキーワード検索で最適なFAQページを表示することが可能だ。ある事例では導入翌月の問い合わせ件数を64%削減した。別のお客様では導入1カ月で検索ヒット率が50%向上した。バケツの穴をふさぐように、CXの最適化を進めてほしい。

 

 

自分だけの商品が届く

クロージングセッション
ユニリーバ・ジャパン・ サービス シニア マネジャー 鳥川 行雄氏

 2019年に、パーソナライズシャンプーのブランド「ラボリカ」を社内ベンチャープログラムにより立ち上げた。

 画面上で、毛髪診断士が作った20問ほどの髪診断を受けてもらい、約2万通りの処方から1つを選び出す。香りを替えるなど、さらにカスタマイズすることも可能だ。研究所がオーダーメードで製造し、2週間ほどで届ける。手作りのボトルに、ニックネームが入った自分だけの製品が、髪の診断書と一緒に届く。C では顧客理解が重要だ。コロナ禍で顧客の生活様式は変わり、購買行動も変わった。趣向として、自分に合ったものを望むお客様が非常に増えた。把握するにはデータが欠かせない。ECは消費者のデータが直接手に入る。

 

 データだけでなく質的な理解も重要だ。インタビューを定期的に実施し、顧客をより深く理解するよう努めている。問い合わせも顧客理解の大事なインプットだ。顧客との対話、顧客の理解が大事だ。

 

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