日経MJフォーラム「オムニチャネル戦略 成功の秘訣 」 ~ ロイヤルカスタマー創出とデジタル領域の強化 ~

 店舗、電子商取引(EC)などの販売チャネルやスマートフォン(スマホ)アプリ、交流サイト(SNS)といったコミュニケーションチャネルなど、全てのチャネルを連携して顧客にアプローチするオムニチャネル。消費者の行動を把握し、ロイヤルカスタマーを獲得する鍵を握る戦略といわれる。そこで先月開催したMJフォーラムでは、この分野の先進企業の取り組みや最先端ソリューションからオムニチャネル戦略を成功に導くヒントを探った。

 

オープニングセッション 【先進事例紹介】

 

「URオムニチャネルの取り組み」

アーバンリサーチ
事業本部 WEB事業部 部長 
坂本 満広氏

お客様軸にチャネル連携から新サービス

 当社は社員約1500人、店舗数280のアパレル企業でファッションを通したライフスタイル提案を目指している。年間売上高625億円のうち電子商取引(EC)は150億円。EC化率は現状24%だが、ECは事業戦略から企業戦略へと広がっている。

 

 「すごいをシェアする」を企業理念に、従来の経験に捉われず新しい発想や手法を柔軟に取り入れ、時代のニーズに合った価値あるサービスを外部とも連携して提供し続ける。そこから新たなビジネスチャンスが生まれる。オムニチャネルもその一環と考えている。

 

 オムニチャネルはお客様を中心にオンラインストアやスマートフォン(スマホ)アプリ、交流サイト(SNS)、IoT(モノのインターネット化)端末、外部メディア、会員サービスなどが取り巻く図式で捉えている。各チャネルは互いに連携し、チャネルが増えることでサービスが広がる。

 

 3月に始めた「トリおけーる」もその一つだ。オンラインストアで気になった商品を店舗に取り寄せ・取り置きできるサービスで、月に2000件以上の依頼がある。スマホアプリ「UR STYLE」ではスタッフとチャットで相談でき、チャット数は月約250件、累計ダウンロード数は52万に上る。オンラインストアの全商品を店頭でバーチャルに試着できるフィッティング端末も開発した。

 

 オムニチャネルを成功に導くにはお客様に対し会社全体で取り組むこと。当社はまず組織の評価制度を見直した。オムニ委員会を発足させ、店舗とECが定期的に協議する。今はSNSの分析やマーケティングへの活用などに共同であたっている。

 

セッション① 【マーケティングプラットフォーム】

 

「顧客アプローチの新手法――効果と効率の実現」

SCSK
流通システム第三事業本部 流通・CRMサービス部 副部長 
西谷 友宏氏

効率的な新規開拓へまず顧客データ管理

 既存顧客を100%維持していくことが不可能な中、売り上げを拡大していくためには新規顧客を常に獲得し続けなければならない。そこで、自社と接点のない人々に効率的にアプローチする新手法を紹介しよう。

 

 まず自社の顧客データベース上でセグメントする優良顧客の行動パターンを把握。それと似た行動をとる人々にウェブ広告を使ってアプローチする。Cookieを活用し、自社のIDと自社外のIDをひも付けし、人工知能(AI)で特徴的な行動を把握してスコアリングする。そのスコアを基にセグメントする仕組みだ。

 

 このアプローチには3つの特長がある。1つは自社外のデータを使うことで、知り得なかった顧客の行動を把握できること。2つ目はウェブサイトの閲覧履歴、リアル店舗やウェブでの購買傾向、移動データといった事実に基づくアプローチができること。3つ目は対象の顧客を絞り、広告やメディアを使い分けてアプローチできることである。

 

 ただし、このアプローチは自社の顧客データをきちんと管理していることが起点になる。当社の統合顧客管理ソリューション「eMplex(エンプレックス)」は、BtoCビジネス向けに開発した顧客データベース。ウェブやメール、SNS、店頭端末、ECなど顧客との接点で必要となる情報を全て蓄積し統合管理する。必要なタイミングでリアルタイムにそれぞれの顧客接点に配信できる。

 

 eMplexとMicroAd社のUNIVERSEとの間で顧客IDを連携し、新規顧客に効率的にアプローチするフルファネルマネジメントを実現する構想も今春からスタートしている。

 

セッション②  【オムニチャネルアプリ】

 

「実店舗とECをつなぐ。オムニチャネル戦略におけるスマホアプリの重要性」

ヤプリ
エバンジェリスト 
金子 洋平氏

顧客囲い込みに威力200社以上の実績

 実店舗とECを継ぎ目なくつなぐオムニチャネル戦略。スマホアプリはその重要な鍵を握っており、アプリをビジネスに活用する企業が増えている。

 

 当社のお客様で、カジュアルファッションを全国展開するライトオンもその一例。アプリ導入後、新規会員数の伸び率が50%向上した。会員はアプリから簡単に会員証バーコードを出してポイントなどを使い、店舗スタッフの業務効率も向上した。キャンペーン情報なども即時に会員に直接通知できる。現在100万ダウンロードを超え、EC売り上げの約20%がアプリから上がっているという。

 

 アプリはオムニチャネルにおける重要な顧客接点。特に既存顧客やロイヤルカスタマーの囲い込みに威力を発揮する。顧客が気にいるアプリを作るにはPDCAをきちんと回し、週1回はコンテンツを更新する。さらに、どのコンテンツが好評か確認し、改善していくことでアクティブ率が上がる。プッシュ通知は表現の工夫などで親近感が増して開封率が上がる。

 

 当社はこうしたスマホアプリの開発・運用・分析まで全てワンストップで提供するベンチャー。2013年創業だが既に200社以上の実績があり、豊富なノウハウを蓄積する。

 

 当社のアプリの主な特徴は①プログラミング知識のない人でも素早くアプリを立ち上げられる②直感的なUIを持つ管理画面で自らがアプリを運用できるので、PDCAをしっかり回せる③自動バージョンアップ機能により販促に集中できること。高品質なアプリを簡単に作れる法人向けプラットフォームには7千社超が登録する。iOS・Android版の両アプリを一括制作し、1カ月以内に公開できる。

 

セッション③ 【EC運営】

 

「速報! アメリカ視察報告「最新オムニチャネル事情」から日本・中国・台湾・米国ECの10チャネル戦略とは?」

いつも.
事業推進部 兼 グローバルEC事業部 部長 
立川 哲夫氏

ECモールを使った多チャネル戦略が鍵

 今年6月、米国で開催された電子商取引(EC)に関する世界最大級の展示会「IRCE」を視察した。米国では大手小売業の店舗閉鎖が相次ぐ一方、世界的に展開している大手ECサイトの影響力が増大。若者を中心にサイトの検索窓からショッピングが始まる傾向が強まっている。

 

 拡大が続く中国のECはモールが基本だ。メーカー系の日本企業は複数のECモールに多店舗出店して成果を上げている。当社は現地の大手ECモールなどと連携し、日本からスムーズに商品を配送できる体制を整えた。効果的なマーケティングのノウハウも蓄積している。 

 

 安定市場といえる台湾は、日本と近い手法で売れる。台湾を起点に東南アジア諸国連合(ASEAN)への進出を狙う日本企業も増えている。

 

 日本国内のECの成長率は10%を下回ったが、EC化率は8%程度だ。今後もECへの投資とチャネルシフトは加速していく。

 

 いつでも、どこでも顧客接点を持つオムニチャネル戦略では、自社ECサイトに加え国内外のECモールに複数出店する多チャネル戦略が有効だ。ECモールは検索エンジン最適化(SEO)に優れ、圧倒的な集客力があり、ロイヤルカスタマーづくりも容易。当社は国内外のECモールで売れるためのルールも熟知している。

 

 多チャネル戦略を実行するためには、ECサイトの構築から物流までシステム全体を最適化する必要がある。ECに特化して支援サービスを提供してきた当社は、ECサイトの構築から運営、受注処理、顧客対応、物流業務まで手掛け、これまで8200社の支援実績がある。気軽に相談してほしい。

 

セッション④ 【マーケティングオートメーション】

 

「オムニチャネル時代のコミュニケーション戦略のありかた~クライアントと共に歩む中で見えてきた、MA活用の本当の価値とは?」

チーターデジタル(旧 エクスペリアンジャパン)
クロスチャネルマーケティング部 部長 
遠藤 光一氏

MAの適切な活用で顧客体験の向上図る

 オムニチャネルのあるべき姿とは、情報の取得、購買、商品の受け取り、商品の利用という一連の顧客体験が、いつでも、どこでも、顧客の都合に合わせてシームレスに提供されることだと当社は考える。その顧客体験の向上に寄与することが、オムニチャネル時代のコミュニケーション戦略の基本だ。

 

 顧客と個別にコミュニケーションを図るデジタルマーケティングにおいて、その煩雑なプロセスを自動化するマーケティングオートメーション(MA)の利用が広がっている。しかし、顧客の都合を無視したちぐはぐなコミュニケーションに陥っている例も少なくない。コミュニケーションの目的が販促に偏っている、顧客情報がオンラインに閉じている、各チャネルが統合管理されていないことが主な原因だ。

 

 こうした課題を解決するためには①顧客接点全体を捉える②オンラインとオフラインのデータ統合③チャネルの統合――が必要だ。そこで、多くの企業が当社のMAプラットフォーム「CCMP」を活用し、顧客体験の向上に寄与するMAを実現している。

 

 CCMPは、オンライン、オフラインにかかわらず、多様な形式のデータを統合し、関連付けて顧客を可視化、キャンペーンを設計し、メールやLINE・アプリなど多様なコミュニケーションチャネルにワンプラットフォームでメッセージを配信できる。

 

 当社はテクノロジーの提供にとどまらず、コミュニケーション戦略の立案からプラットフォームの運用代行、効果測定までワンストップで提供。顧客企業のマーケティング戦略を共に実現していく。

 

クロージングセッション 【先進事例紹介】

 

「マルイのオムニチャネル戦略」

丸井
オムニチャネル事業本部 Webマーケティング課 課長 
中村 哲也氏

すべての人に向けて最適な買い物体験を

 当社は「共創経営」の実践で企業価値向上を目指している。共創とは顧客やパートナー企業と共に「しあわせ」を創ることだ。オムニチャネル戦略を進める際にも基本的な姿勢となっている。

 

 当社は「店舗・カード・Web」の三位一体型ビジネスを軸に、プライベートブランド(PB)や情報システムの開発、ロジスティクスまで、グループ内の資源を有機的に連携してオムニチャネル化を推進してきた。

 

 例えばECサイト「マルイウェブチャネル」への送客を図るため、当社の「エポスカード」をマルイ店舗で利用した際にECサイトの利用有無を自動判別。ECサイトで使えるレシートクーポンを発行し、年間約5万人の新規利用を達成した。

 

 2008年には店舗とECの在庫を一元化。09年にはECでの注文品を店舗で受け取れるサービスを始めた。10年にはECで店頭在庫を確認できるようにし、ECから店舗への送客を開始。15年には人工知能(AI)を活用した商品提案を始めた。

 

 ECは利便性が高い半面、実物を確認できず、試着もできない。その弱点を補う試みとして、当社は全国の商業施設などを巡回し、試着に特化した「体験ストア」を出店した。在庫は持たず、展示商品のすべてのサイズを陳列。来店客は自由に試すことができ、店頭の専用タブレットで注文すると、送料無料で自宅に届くサービスだ。16年4月からスタートし、17年6月までの間で購入客数は2万人を超えた。

 

 当社は16年に組織を再編し、オムニチャネル事業本部を立ち上げた。今後もオムニチャネル戦略を積極的に推進し、すべての人に最適な買い物体験を提供していく。

関連記事

関連リンク