【日経MJフォーラム】「グローバルEC最前線」~課題解決ノウハウが成功の鍵~   海外市場開拓へ期待 課題克服が鍵

 訪日外国人(インバウンド)の急増で、海外で日本の商品や文化への関心が急速に高まっている。国境を越える「グローバルEC(電子商取引)」も拡大する一方だ。縮小傾向の国内市場を補完する意味でも越境ECへの期待は大きい。だが、言語の壁や法規制など克服すべき課題も多い。日本経済新聞社は8月下旬、都内でこうした問題を考えるフォーラムを開催。EC企業のトップや実務担当者が最新動向や先進事例を紹介した。

 

基調講演  第二ステージに直面するグローバルEC

 

スタイルビズ 代表取締役
村山 らむね氏

第2次越境ECブームが到来

 クロスボーダー(越境)ECの市場規模と外部環境が変化している。特に中国の変化は激しく、スマートフォンの普及とともに利用が急増し既に定着したといってもよい。1(独身者の意)が4つ並び、バーゲンセールが盛り上がる11月11日(独身の日)の売り上げ93億㌦のうち、65%がモバイル経由だった。  

 逆に欧米は安定し、米イーベイとアマゾンが二強だ。計測サイトでみるとイーベイの4割、アマゾンの3割が、海外の訪問者で、越境ECのプラットフォームとして、事業者の海外展開に対し丁寧なサービスを提供している。

 

 経済産業省の試算では2013年の段階で250億㌦だった世界の越境EC市場は、20年には1300億㌦になる。ある民間コンサル会社は、20年に9940億㌦に達すると予測する。全事業の30%を越境ECが占めるという。

 

 日本企業に実感はないかもしれないが、世界の潮流はこのように動いている。中国の越境EC利用経験は現状で30%を超え、日本からの購入額も大きくなっている。

 

 一方、円安傾向と訪日外国人観光客の増加で、国内でも越境ECに興味を持つ企業が増え、第2次越境ECブームだといえる。越境ECを取り巻く環境として、3つの逆風と2つの追い風がある。逆風は、「中国の税制改革」「国際スピード郵便(EMS)の値上げ」「円高」だ。追い風は、「海外サイトの攻勢による越境ECの盛り上がり」「越境EC向けサービスの充実」だ。

 

 中国は既に米国を抜いて世界一の市場規模となっている。昨年からはBtoC(企業と消費者の取引)が、CtoC(個人間取引)を抜いている。BtoC市場の内訳を見ると、二強は天猫、京東だ。即日配送など物流インフラの整備も進んでいる。

 

 新たに越境EC市場に参入する場合、サービスを知ってもらう努力と価格設定、各国事情に合わせた集客戦略が必須だ。日本企業は、攻めなければ攻められるという状況下にあることを認識すべきだろう。

 

セッション①  グローバルEコマース フルアウトソーシングサービスのご紹介〜海外向け運用負担軽減と初期投資の回収を1年目に達成する方法〜

 

デジタルリバージャパン エンタープライズコマース
シニアセールスマネジャー
高橋 実氏

共通化で運用負荷減らす

 当社は、グローバルECに的を絞ってビジネスを展開している。自社ECにフォーカスし、eコマース支援、プラットフォーム構築、決済サービス、デジタルマーケティング、カスタマーサービスなどを世界規模で進めている。

 

 グローバルECは国内ECとは勝手が異なり、一筋縄ではいかない。言語の壁、決済・多通貨・為替、税金処理、詐欺対策、現地の法律準拠、膨大な初期コスト、など、様々な障壁がある。

 

 国ごとにビジネススキームを考える必要はあるが、共通化できるところは共通化して、運用負荷を減らすことが成功のカギを握る。グローバルECの要諦は、テクノロジーではなく運用だ。運用スキームの選択が重要なのだ。

 

 グローバルECのスキームとしては、「完全自社管理型」「自社管理型(現地SI/グローバルSI)」「アウトソース型(現地特化/グローバル)」がある。

 

 それぞれ長所と短所があるが、弊社は「アウトソース型(グローバル)」だ。長所としては、構築・運用負荷とコストが最小限で済むこと、複数国である程度共通の運用基盤を構築・運用できる点が挙げられる。短所としては、国により最適化できない場合もある。

 

 グローバルECには「クロスボーダー」と「オンショア」のビジネスモデルがあるが、弊社が扱う取引では、主要な国はオンショア、周辺の国はクロスボーダーと使い分けているケースが多い。

 

 ワンストップソリューションの最大のメリットは、グローバルECの煩わしさを緩和し、クライアントが事業に専念できる点にある。弊社は、グローバルな決済代行機能を自社で持っており、多通貨で煩雑な料金回収まで引き受けている。

 

 弊社のビジネスモデルは端的にいえば、クライアントの販売代理店になる仕組みだ。金融債務の責任を負うと同時に、販売責任も負っている。グローバルECのリスクを弊社が負うことで、本来のビジネスに専念できる企業が増えることを望む。

 

セッション②  世界134ヵ国へ販路拡大!越境BtoBを手軽に始められる「SD export」とは

 

ラクーン  代表取締役社長 
小方 功氏

ECで海外市場を開拓

 当社はBtoBのEコマースを中心に、現在、4つの事業、8種類のサービスを提供している。4つの事業は、「スーパーデリバリー」、BtoBの決済「ペイド」、インターネット上の受発注システム「コレック」、企業間の売り掛けを保証する「T&G売掛保証」だ。

 

 スーパーデリバリーはBtoBに特化したEコマースで、簡単にいえば、インターネット上の問屋サービスだ。1100社が参加し、扱う商品は50万種類以上にのぼる。全国で5万2000店が会員登録し、流通額は95億円だ。

 

 BtoBに特化している理由は、①まとまった量の注文がある②連続性を持った取引ができる――という2点。国内での取引は、6カ月以内に93%がリピートするという実績がある。

 

 スーパーデリバリーは02年から国内展開し、海外では15年8月に英語のサイトを立ち上げて始めたばかりだ。海外からの問い合わせは5年以上前からあったが、会員企業の大半は中小企業で、本格展開は難しいと考えていた。しかし、取引の量も増え、認知度も高まったことから、越境BtoBに乗り出した。 

 海外小売店の登録数は7000店を超えている。国・地域別登録比率は、台湾が30%、香港が25%、米国が16%。アジアのみならず北米にも利用が広がっている。

 

 人口減少社会では、国内市場は縮小する。企業が規模を維持したいのであれば、海外に目を向ける必要がある。だが、中小企業が単独で世界を相手にするのは難しいだろう。そこでEコマースの出番だ。

 

 Eコマースは新しい事業ではない。以前は手や足を使ってやっていたことをシステムで解決し、コストや手間、時間を大幅に削減しているにすぎない。

 

 「SD export」は、メーカーが海外展開をする際に行っていたすべての手続きをEコマース化したものだ。メーカーは煩雑な輸出手続きをすることなく 世界各国の小売店・企業と手軽で安全な取引ができる。

 

セッション③  世界最大級の越境ECプラットフォーム「eBay」を活用した海外販路の拡大について

 

イーベイ・ジャパンビジネス開発部
部長
岡田 朋子氏

複数国で出品しリスク回避

 イーベイは21年前、オークションサイトとして米シリコンバレーでスタートした。現在は200カ国以上で約2500万人のセラーと1億6400万人のバイヤーがいる。前年の取引高は約10兆円。このうち25%が越境ECだ。

 

 スタートはオークションだが現在は80%が固定価格出品になっている。利用者は北米や欧州を中心に、オーストラリアや中国、インドも伸びている。なお、日本では08年より越境ECの支援を開始している。

 

 取引製品では中古携帯電話が人気だ。日本と違い海外では、通信会社を自由に選べる「SIMフリー」が基本なので、買い替え時にイーベイで売買する人が多い。中古のバイクパーツも強い。車検がない米国では修理やカスタマイズを自分で行うため需要がある。

 

 ファッション関連も根強い。日本の中古ブランド商品は「日本のセラーは偽物を売らず状態がいい」という理由から世界中で売れている。日本からは9割以上が米国サイトに出品しているが、米国経由で欧州やアジアに販売している人も半数いる。米国サイトにもかかわらず、世界中に販売できることがメリットになる。

 

 出品時に日本と海外の需給バランスの違いを知ることが大事だ。日本ではありふれた商品でも海外では高値が付く場合もある。値付け前のリサーチが肝要だ。

 

 サイズや好む色・デザイン、季節や市場ルールも違う。さらに日本の大手ECの多くはセラー保護だが欧米はバイヤー保護が基本。理不尽なバイヤーがいても、セラー側が責任を負うのが一般的であることを理解する必要がある。

 

 セラーの中には米国サイト以外に英国や豪州に同時出品して売り上げを伸ばしたケースもある。中国人はドイツにも出品している。為替変動などのリスク対策のためにも複数国で出品するのは有効だ。円高を危惧するセラーも多いが「円高だから不利」という単純なものではない。仕入れ・販売・円転換という3つのタイミングがあることも留意してほしい。

 

セッション④ 中国向けEC成功の鍵はSNSにあり!「微博」「微信」のインフルエンサーを活用した広告配信サービス「WEIQ」とは

 

アライドアーキテクツ
事業企画室 室長
小川 裕子氏

インフルエンサー活用が有効

 越境ECを始める際には、「配送体制」「決済」「言語の壁」「カスタマーサポート」の4つが主な課題になるが、商品を売るためには集客施策とプロモーションも不可欠だ。当社は日本最大規模の交流サイト(SNS)マーケティング専門会社で、中国、台湾、東南アジアなどの現地企業と提携しSNSプロモーションを支援している。

 

 日本は少子高齢化を迎え、長期的に見ればEC市場は収縮する見通しだが、中国人は購買意欲が旺盛で、中国向け越境市場規模は約8000億円にも上る。これは訪日中国人の買い物消費額とほぼ同額で、19年には3倍近い成長が見込まれている。

 

 中国では若者を中心に6億人がモバイルでSNSを利用しているという統計も出ており、日本にとっては越境ECの最重要国といえるだろう。ただし日本で普及しているSNSや動画プラットフォームは利用できないので中国独自のサービスを使い、国内ルールに則ったプロモーションが必要になる。

 

 中国人は口コミを重視する傾向が強く、ネットユーザーに支持された影響力のある発信者(インフルエンサー)の情報への信頼が厚い。集客施策には動画を使ったインフルエンサーの活用が有効だ。当社は北京のネット企業と提携し、広告配信サービスを始めた。様々なカテゴリーに属する60万人のインフルエンサーが登録、中国大手企業500社、中小企業3万5000社がこのサービスを導入している。

 

 近年急拡大しているのが動画市場だ。現地の動画インフルエンサープロジェクトに参画し、インフルエンサーの発掘・育成にも取り組んでいる。母親に人気のインフルエンサーにマタニティー用品を紹介する動画を流してもらい、翌日の売り上げが2倍になった例もある。認知度の低い製品を宣伝するにはインフルエンサーの活用が効果的だ。日本の高品質製品を多くの人に知ってもらうことは意義があると考え、情熱をもって取り組んでいる。

 

特別講演  日本のモノづくりの現場から、グローバルブランドへ

 

ライフスタイルアクセント Factelier(ファクトリエ)代表 
山田 敏夫氏

ものづくりの現場にこだわる

 国内外問わずインターネットを通じて工場から直接販売する通販サービスを手がけている。特長はものづくりの現場へのこだわりだ。Tシャツ1枚でも綿の産地まで追いかけてリサーチしている。アパレル業界を見ると日本製の割合は、1990年には5割だったが2016年には3%を切った。負のサイクルが常にあるが、この悪循環を断ち切ることが我々の事業の目的だ。

 

 20歳のころパリの有名ブランドで働いていた時「日本には本物のブランドがない」と言われ、ものづくりを他国に任せず、日本の工場で成し遂げたいと考えたのが会社設立の動機だ。設立4年半で約500工場を直接訪問し、一流の工場40社のみと提携している。その中には世界的有名ブランドの商品をつくる工場も含まれている。

 

 提携工場の9割は人口10万人未満の小さな町にある。我々の目的は地方創生ではないが、工場が成長すれば結果的に地方活性化にもつながるだろう。

 

 製品には工場名をつけ、小売り側が販売決定権を持たず、値段も工場が決めている。自社ブランドなので工場はプライドをかけ技術をすべて注ぎ込もうとする。この結果、質の高い製品に仕上がる。

 

 工場ツアーを毎月開催し、生産者と消費者の交流の場も設けている。若いつくり手のモチベーションが上がり、離職率を抑える効果もある。工場に変革は求めず、誇りを尊重しつつ改善してもらう。それが高品質な製品を消費者に継続的に届ける仕組みにつながる。

 

 グローバル戦略としては翻訳ツールの利用や多国籍のスタッフを雇うことでサイトを多言語化し、現在100カ国以上からアクセスがある。日本のメディアを通じて海外発信し、現地メディアには直接出向くなど積極的にアプローチしている。東京五輪大会の日本選手団ユニホームを「オール・メード・イン・ジャパン」で担う目標を掲げ成長を続けていきたい。

 

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