流通BMSの普及を加速する「基本形Ver.1.3」がリリース

 流通業界のEDI標準メッセージである「流通ビジネスメッセージ標準(流通BMS)」。2007年4月にVer.1.0が登場してから対象業種・業態を拡大し、実証などを経てバージョンアップが行われてきた。そして、このほど流通システム標準普及推進協議会より、基本形メッセージVer.1.2と生鮮版メッセージが統合され、10月末に流通BMS 基本形Ver.1.3がリリースされた。Ver.1.3の登場によって、スーパー業界を始めとする小売業とその取引先企業の利便性がさらに高まり、流通BMSの本格的な普及を加速するものと期待されている。

 

 

「流通BMS 基本型Ver.1.3」で生鮮版が基本形メッセージに結合

 

 流通BMSの大きな目的は、異なる業種や業態を越えて同一のメッセージによるEDI取引を可能とすることにある。その核となる標準メッセージは、基本形が2007年4月にVer.1.0がリリースされたのを皮切りに、対象業種・業態・業務の拡大検討と実証を経て、2009年4月に現在のVer.1.2が登場した。


 この間にも、生鮮品やアパレルへの適用拡大版が策定され、同一のメッセージを目指したが、生鮮品は取引方法に特徴があり、青果・食肉・水産といった取り扱い品目による違いが予想されたことから、現状での一本化は困難と判断。暫定的に生鮮版のメッセージ群を分けて管理する方式を選択したという経緯があった。


 だが、小売業と取引先企業双方からなるべく早期にメッセージ統合を望む声が強く、2008年度には青果・水産業界で検討が進み、青果の共同実証も実施されたことから、当初の方針通りに生鮮版メッセージを基本形メッセージに統合し、このほど一本化した基本形Ver.1.3が正式にリリースされた。

 

 

普及の妨げとなっていた課題の解消が大きく進む

 

 メッセージ統合の意義はとても大きいと考えられる。実際、流通BMSの導入を検討していた企業の中でも、基本形と生鮮版の2本立てが続く間は、様子見をしていたところも少なくなかったからだ。また、バージョン違いも普及の妨げの一つと言われていた。


 メッセージのバージョンアップは、機能拡張や新たな業務要件(安全・安心への対応等)への対応に必要不可欠だ。しかし、自社サーバーで流通BMSを運用している場合、取引先とバージョンが異なると個別対応が必要で、運用負荷も少なくない。これが流通BMSの導入効果を限定的にしているという指摘もあった。それも、本当の意味で標準化された情報共有基盤を用いることで、こうした課題の解消も大きく進むだろう。今後は、スーパー業界を始めとする小売業とその取引先企業の利便性が高まり、流通BMSの本格的な普及が期待できる。


 流通システム標準普及推進協議会では、流通BMSの利用が拡大する前に統合を行うことで、今後の負担を減らすことも、今回のタイミングで統合した大きな要因としている。

 

 

百貨店に特有の取引形態のため、あえて基本形への結合を見送る

 

 なお、今回、百貨店版が基本形Ver.1.3から除かれているが、流通システム標準普及推進協議会の事務局を務めている(財)流通システム開発センターの研究開発部長 坂本尚登氏は、「流通BMSはビジネスプロセスごとにメッセージを決めており、そのビジネスプロセスは細かく見れば会社ごとに異なっています」と前置きし、次のように解説する。


 「類似した取引はなるべく同一のメッセージにすることが標準化です。その結果、基本形はスーパーを始め、ドラッグストア、ホームセンター、生協、Aコープなど、類似する取引プロセスを持つ小売業が使用しています。一方で百貨店には、特に、消化取引というスーパーなどにはあまり見られない取引形態があります」


 百貨店の取引形態は大きく「買取取引」と「消化取引」に分かれる。商品を仕入れる際に商品をいったんは買い取る買取取引に対し、消化取引は販売された時点で仕入れを起こす仕入形態をいう。


 「最近、スーパーでもアパレルなどは消化取引が増えているようですが、百貨店型の取引形態がそのまま当てはまるかというと、簡単にはいきません。そこで、標準メッセージの維持管理と普及推進のし易さを考えて、現実的な方法を取っています。標準化は仕様の一本化が理想かも知れませんが、一本化することで却って普及を阻害するという側面もあるのです」と坂本氏は強調する。

 

 

「流通BMSフォーラム&ソリュージョンEXPO」が開催 支援開院28社が参加する初の流通BMS関連機器展示会

 

 今後の流通BMSの普及を促進するため、流通システム標準普及推進協議会では、さまざまな取り組みを進めている。その中でも、今年度の活動の大きな目玉となるのが、11/11に東京・ベルサール六本木にて開催する「流通BMSフォーラム&ソリューションEXPO」だ。


 「流通BMSフォーラム」では、協議会の活動報告をはじめ、事例、パネルディスカッションを予定。一方、「流通BMSソリューションEXPO」(主催:流通システム開発センター)では、協議会の支援会員28社が参加する初の流通BMS関連機器展示会として、流通BMS関連のアプリケーション・パッケージやASPサービスなど、流通BMS導入の鍵となるツールやソリューションが一堂に展示される予定だ。

 

 

 

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