広大な農場で大豆生産を体感 ~ソイオイルマイスター検定資格取得者が研修ツアーに参加~

 アメリカ大豆輸出協会(USSEC)は、2023年5月24日から29日までの6日間、「U.S.Soy International Oil Masters2023」と題した研修ツアーを実施した。ソイオイルマイスター検定の資格取得者が参加し、アメリカでの生産、加工、流通の現場を体験してきた。

ソイオイルマイスター アメリカへ研修視察

 USSECはソイオイル(大豆油)の体系的な知識の啓発と、情報を発信するアンバサダー養成を目的に「ソイオイルマイスター検定」を毎年実施している。2017年にスタートし、これまで計468人のソイオイルマイスターが誕生。21年からは、上位の資格である「ソイオイルマイスタープロ」検定もスタートした。

 また、日本での成功事例をもとに、18年から韓国、その翌年は台湾、またその翌年はメキシコ……と、日本発のソイオイルマイスター検定が海外進出を遂げている。そのため、今回のアメリカ研修は、そんな世界中のソイオイルマイスターの資格取得者を対象とした特典企画だ。コロナ禍の影響で2年間見送られていたが、3年ぶり3回目の実施となった。

 研修には、第3回ソイオイルマイスター検定以降の上位合格者から選抜された11人が参加した。日本からは、食用油脂メーカー、加工油脂メーカー、関連卸業、管理栄養士など各職種の参加者が集まった。ソイオイルや食品分野の関係者に加えて、油の神様で親しまれる離宮八幡宮(京都府)の神職の方が参加するなど、バラエティーに富んだ顔ぶれとなった。また、海外からは約11カ国から100人近くのソイオイルマイスターや、大豆業界関係者が集結した。

 

大豆の未来をつなぐアンバサダーに

 現在、日本に輸入される大豆のうち7割はアメリカ大豆だ。豆腐、納豆、豆乳、ソイオイルなどの大豆加工食品の多くには、厳格に品質管理され環境を守る方法で生産されたことを示すSSAP認証大豆が使用されている。世界的にSDGsへの目標達成の意識が高まる中、ソイオイルマイスターには、持続可能な方法で生産されているアメリカ大豆についてより深く知り、大豆及びソイオイルが結ぶ、日米の食のパートナーシップのアンバサダー役となることが期待されている。

 

 USSECでは参加者に対し、「安心・安定供給/品質管理」「サステナビリティー」「最新技術・研究開発(高オレイン酸大豆など)」のアプローチから、原料に対する知見、背景ストーリーへの理解を深めてもらうべく現地開催の研修に招待した。そしてその知見を周囲と共有することで、日本の食市場・食文化に、新たな価値を創出し、社会課題の解決に貢献することを期待している。

 

Welcome to U.S.A 大豆生産農場や先進施設をめぐる

種子会社であるベックス・ハイブリッド社、広大なケビン・ケリー農場、アメリカを代表する穀物メジャーのブンゲ社、パデュー大学、コルテバ社などを訪問した。

 

ベックス・ハイブリッド社は1937年に設立された、アメリカで3番目に大きな種子会社。生産効率を上げる種子開発だけでなく、将来の市場トレンドを踏まえた新たな種子開発にも取り組む。

 

アメリカの大豆生産者の多くが家族経営で、見学ツアーが設けられている。風力タービンを100基ほど設置できて、巨大なトラクターが数台ある広大な農場で大豆が育まれる。

 

アンモニアで動く巨大な肥料用トラクターの費用は70万ドル。インディアナ州にあるパデュー大学では、大豆収量・品質向上を目指す最先端研究発表などを聴講した。

 

研修では、大豆の品種・農法研究を通じた、収量アップやサステナビリティー推進への取り組みを実感。大豆の品質管理、安定供給に対して持続的に注力していることがうかがえた。

 

 

アメリカ研修視察でソイオイルの知識を深める





[油脂卸売] 
幸商事
フード・ケミカル事業部
名古屋営業部
横井里奈さん

 今回の研修視察で印象的だったのは、アメリカの農業のスケールの大きさです。生育途中に害虫や雑草から守るために人工知能(A I )を活用するなど、技術革新も進んでいました。サステナビリティーや環境に配慮した新たな農業技術が、生産者を支援していることを実感できました。アメリカ大豆の生産者はもちろん、様々な企業の努力のおかげで、安心・安全なアメリカ大豆が日本に届いていることを改めて実感しました。

 

 





[食品メーカー]
キユーピー
研究開発本部
市田大樹さん

 キユーピーで調味料の開発業務を担当しています。マヨネーズなど調味料の設計開発では、植物油に関する知識が必要です。ソイオイルの原料である大豆に関して直接的に学ぶ機会は少なかったため、ソイオイルマイスターの資格を取得。研修に参加して大豆のサプライチェーンを体系的に学べました。印象的だったことは、サステナブルなアメリカ大豆によって、日本国内の豊かな食生活が支えられていることでした。

 

 





[食用油脂メーカー]
J-オイルミルズ
東京支社 業務用販売部
安藤みなみさん

 当社はアメリカ大豆などから搾油して、食用油を製造しています。私は業務用油脂の営業担当として、お客様に原料のアメリカ大豆をご案内する立場ですが、生産農場や様々な施設を見学できたことは、大変貴重な経験になりました。また、高オレイン酸大豆から搾油されたソイオイルは、長持ちで油の交換頻度が下がる、臭いが少ない、賞味期限が長いなど、多くのメリットがあり、日本でも今後関心が高まると感じました。

 

 





[食品メーカー]
昭和産業 
フィード事業部
堀 眞二さん

 研修に参加して、現地搾油工場、種子製造・販売会社、大豆生産者を訪問しました。今回の訪問において現地の生産者の方がステップアップされていると感じました。農作物による収入が穀物相場によって上下する中、サイロのキャパシティーアップや農作物売却以外の収入確保により、安定的かつ大きな収入を得るための努力を続けられていました。あらためてアメリカ大豆の持続性、競争力を確認しました。

 

 




[食用油脂メーカー]
日清オイリオグループ
技術本部 生産技術開発部 
生産技術課
田島真梨絵さん

 業務では大豆の品質に主に着目することが多かったのですが、研修では種子の開発、栽培地、農薬開発など、全体のプロセスを視察できて勉強になりました。農地の大きさはもちろん、大豆生産者の多くが家族経営で営まれ、少人数でオペレーションしていて、巨大な農耕機械にも圧倒されました。また耕作地のリースや風力タービンの設置など、環境にも配慮しつつ新たな収益につながる複合経営にも感銘を受けました。

 

 





[神 社]
離宮八幡宮
禰宜
津田定豊さん

 私が奉職する離宮八幡宮は、平安時代に神官が「長木」という搾油機を考案。製油発祥の地として多くの油脂関係の方々に参拝いただいています。研修参加に当たって、日本での油生産の歴史を海外に伝えたいと思い、「長木」のミニチュア模型を持参し生産者や協会の方と話をしました。アメリカ大豆の生産現場、ソイオイルの製造プロセスを勉強し、日本の油生産の歴史を海外に伝えられたことは貴重な機会となりました。

 

 


アメリカ大豆輸出協会
U.S. Soybean Export Council
https://ussoybean.jp/