国内で広がりを見せる 植物由来の新しいフードスタイル

 健康管理や環境意識の高まりを受けて、近年世界中で拡大しているプラントベースフード市場。最前線の取り組みについてプラントベースブランドを手掛ける企業経営者と、植物性料理研究家に話を聞いた。

 

ビーガンとは異なる新しいコンセプト

 プラントベースフードについては、国内の市場推移を見ても分かる通り、近年、さまざまな企業の市場参入があり、こうした製品・メニューを扱う小売りスーパーや飲食店が増加。その存在感が大きくなっている。プラントベースフードブランド「2 foods(トゥーフーズ)」を立ち上げ、都内5店舗のほか、オンラインショップを展開しているT W O の代表取締役CEO・東義和氏。同氏は、プラントベースフードの打ち出し方について、「ビーガンという概念があり、皆迷っていたのではないか」と語る。

 

 「ビーガンの市場は世界的にはすごく大きいのですが、市場の成熟度が欧米とは全く異なります。そのまま日本に当てはめると、アンチお肉というような極端な印象を与えかねません。プラントベースフードをビーガン向けに限定してしまうと、クローズドな市場となる可能性があると感じています。そうなると、プラントベースフードが持つ健康訴求という機能が伝わりません。例えば、昨日焼き肉を食べた人が、今日はちょっとヘルシーな食事にしたいと、植物性の食材を選んでもいいわけです。そこで我々はビーガンとは全く違う視点で展開できたらと思い、『ヘルシージャンクフード』というコンセプトを掲げました」

 

 

環境へのリテラシー向上と若年層による市場拡大

 「2 foods」の顧客は主に若年層で、その味への評価も高い。来店した顧客の中には、最後までプラントベースフードだと気づかずに店を後にするケースもあるという。このような経験が広まれば、プラントベースフードが当然という社会が到来する可能性もあるのだ。若い世代は気候変動や食糧危機も含め、持続可能な開発目標(SDGs)が象徴する持続可能な社会への関心が高い。その意味では今後、プラントベースフード市場については、電気自動車(EV)市場同様に伸びしろが期待できるだろう。

 

 「スウェーデンの大学の研究者の発表では、地球に対して貢献できることのトップ5の中に自動車をEVに変えること、そして食事をプラントベースに変えることとの報告があります。取り組みやすさや貢献度という面で考えると、今後は国としても食に注力することになるでしょう。そうなると、トレンドというレベルを超えて、達成しなければならない数値目標などが生まれる可能性があります。世界的には環境へのリテラシーが求められる中、欧米ではプラントベースフードを選ぶ背景として、環境が一番大きな理由となっています」

 

 また、健康意識の高まりも見逃せないポイントだ。ヘルシーなメニューを考えたときにプラントベースフードはその候補になるため、そこで存在感が出てくることも考えられる。お肉を選ぶ日もあれば、植物性のメニューを選ぶ日もあるというライフスタイルだ。

 「そうやって一つのオプションとして楽しく選択できる日が、そんなに遠くないところまで来ていると思います」

 

 

アレルギーへの対策からプラントベースフードへ

 植物性料理研究家であり、豆乳パティシエでもある鵜野友紀子氏も、プラントベースフードへの高い注目度を実感している。もともと、プラントベースフードにかかわったのは、アレルギーがある子どもの保護者からの依頼だったという。

 「動物性食品がほとんど食べられず、植物性のケーキを作ってほしいという依頼でした。依頼内容に頭を抱えましたが、アレルギーがあっても食べる喜びを感じてほしいと思う一心で、その子が食べられるケーキを作り上げました。このことで、自分の中の固定観念が変わりました」


 当時はプラントベースフードの需要は少なく、アレルギー対策の相談がほとんどだった。しかし、近年は、環境意識の変化から、その注目度が高まり、全国から注文が入るなど大きな変化を感じている。プラントベースフードというと、何か新しい概念だと考えてしまいがちだが、鵜野氏は「昔の日本の食に戻ればいい」と語る。

 「日本人は農耕民族で菜食中心の食生活をしていました。昔ながらの食事、例えば、お米と昆布出汁の味噌汁、漬物というような食事が、既にプラントベースフードなのです。私が生まれ育った京都にもお豆腐や精進料理など、地域に根づいた食べものがあります。難しく考える必要はなく、むしろプラントベースフードの普及が、我々の食生活を見直すきっかけになるのではないでしょうか。野菜を食事メニューに多く取り入れると体がすっきりする方も多いので、週に1回程度から野菜中心の食生活をおすすめします」

 

 そこでもっと植物を使った料理のおいしさを知ってほしいと願う鵜野氏から、プラントベースフードを食事に取り入れるポイントや調理のコツを教えてもらった。


 「例えば、葉野菜と根菜類、豆類などを複合的に使うことで、十分なうま味が出ます。最初は濃い味付けをしてみると食べやすいのでおすすめです。一例として、大豆ミートを使ったジャージャー麺のレシピをご提案させていただきました。スパイシーで濃い味付けになっていますので、大豆ミートを使ったことがない方も、気軽に取り入れていただけると思います」

 


植物由来のフード市場の需要がますます高まる

 プラントベースフードを販売する小売りスーパーや飲食店に、拡大する市場への対応や店舗での最新の取り組みについて聞いた。

 

 

◆ マルエツ

プラントベースフードで健康・サステナブルへの取り組みを強化

 

 今年2月26日に千葉・船橋市にオープンした「マルエツ 船橋三山店」が話題だ。「鮮度」「商品との出会い」「ストレスゼロ」「繋がり」という4つの価値を提供することにより、お客様が笑顔になれる、また、サステナブルな社会の実現に貢献できる店づくりを目指している。

 

 「コロナ禍において、食生活や健康を見直す機運が高まっています。また、CO₂削減やSDGsへの関心や理解が深まっています。私たちの使命は、喜ばれる商品、おいしい商品をお客様に提供すること。その中の一つが、健康や持続性社会にも配慮したプラントベースフードです」と語るのはマルエツの執行役員 MD本部副本部長の釜萢直人氏。

 

 マルエツは船橋三山店開店を機に、スーパーマーケット業界の中ではいち早くプラントベースフード商品を取り入れた。店舗により取り扱う種類は異なるが、大豆ミートを用いた商品などを全店で販売。『Plant Based―プラントベース―』という共通の販促物を作成することで、分かりやすいようにアピールをしている。

 

 「社内データによると、購買層は45〜65歳代の女性が中心となっていますが、認知度が高まってきており幅広い年代層で購入されています」

 

 デリカで扱う大豆ミートを使用したお弁当は、4〜6月にかけて累計約6万パックを販売。また、大豆ミートを使用したハンバーガーやドッグは、同期間で累計約10万個を売り上げるなど好評である。

 

 「プラントベースとしての訴求はもちろん重要ですが、おいしさにこだわった商品を開発し、支持され続けていくことが一番のポイント。健康軸を基本として、多くのお客様に手に取っていただけるおいしい商品を開発していきます」と今後の展望を語る。

 健康な生活とサステナブルな社会の実現に向けて、マルエツの挑戦は続いている。

 

 

プラントベースをPOPでアピール

 

大豆ミートを使用したハンバーガーを販売

 

◆ ライフ

半調理の総菜商品を展開トライアル需要を促す

 

 ライフコーポレーションは、今年4月に大豆ミートを使用したオリジナル商品の「発芽豆からつくったおにく」シリーズの販売を首都圏店舗で開始した。春巻き、ギョーザ、メンチカツのチルド食品や冷凍食品など、計6アイテムを展開している。

 「まずは手軽に召し上がっていただけるように、後は焼くだけ・揚げるだけの簡単なプラントベースフードの半調理総菜商品を販売しています。その先に、ひき肉タイプなど食材としての商機があると考えています」と語るのは首都圏畜産部課長の針生智之氏。

 

 まずはトライアルを促すために、毎月1〜2回の広告投入を実施。7月はリーズナブルな価格で提供した。

 「現状はひき肉の代替商品にとどまっています。しかし今後は唐揚げなどの鶏肉、牛肉、豚肉など正肉の代替品としての開発を計画し、リピート客を取り込んでいきます」と意気込む。

 

「発芽豆からつくったおにく」シリーズ

 

◆2foods

リーズナブルでくせになる自然なおいしさが普及の鍵

 

 ヘルシージャンクフードをコンセプトとしたプラントベースフードブランド「2foods(トゥーフーズ)」。都内で同ブランドを展開する東義和氏は、普及に当たってはジャンクフードのように、リーズナブルでくせになる要素が必要だと語る。

 

 「プラントベースフードが限られた人だけに食べられるものでは、今までと変わりません。そこで『2 foods』は幅広い客層への普及を念頭に、最初から多店舗展開を前提にした設計をしました。間接コストを下げ、お客様に伝える重要なこだわり以外は安価な材料を仕入れ、価格設定を工夫しています。また、いくらエシカルや100年先のためとは言え、おいしいと思えないものは食べたくないですよね。そのため、心からおいしいと思って食べていただけるメニュー開発に力を尽くしています。プラントベースフードは、味が重要です。ヘルシーなものをヘルシーだと気づかずに自然に食べられることが、我々の目指している体験です。そうすればプラントベースという非日常感は、薄まっていくのではないでしょうか。ブレークスルーするポイントはそこだと捉えています」

 

 ゆくゆくは世界に通用する日本発のブランドを目指す「2 foods 」では、メニュー開発にあたりフードテックにも着目。渋谷ロフト店に併設されている「FOOD TECH PARK」では、世界中から選びぬかれた最新フードテックブランドに触れることができる。

 

 「当店のメニュー開発には、実はかなりフードテックが絡んでいます。商品開発をする際に海外や国内も含めて、フードテック企業とのコラボレーションは必須だと考えています。消費者に受け入れられるかどうかを検証する場として、連携する企業側からもこの場所は重宝されています」

 

 

渋谷ロフト内にある店舗とメニュー

 

◆The Vegetarian Butcher

ターゲットはZ世代複数の要素でかっこいいライフスタイルを表現

 

 オランダ発のプラントベースドミート(PBM)ブランド「The Vegetarian Butcher(ベジタリアンブッチャー)」。ヨーロッパでは、2500店舗のバーガーキングとコラボをするなど、注目度も需要も上昇中だ。日本では総代理店であるベジタリアンブッチャージャパンが、ブランドコンセプトストアを手掛ける。代表取締役社長CEOの村谷幸彦氏は、主にZ世代への普及に力を入れていると語った。

 

 「ブランドの世界観や、プラントベースフードとサステナブルな要素の結びつきを、五感で体感する場としてコンセプトストアを開きました。Z世代をターゲットにしたのは、グローバルな考え方を持ち、新しい食生活を受け入れやすい点がポイントでした。PBMを選ぶことを、かっこいいライフスタイルとして捉えてもらえるように、複数の要素でアピールをしようと考えています」

 

 村谷氏が取り組んでいるのは、以下の3つだ。「有名シェフとコラボしてPBMのおいしさをアピール」「消化吸収が早いプラントベースフードのメリットを生かして、アスリートの体づくりに貢献する」「ファッション事業を立ち上げる」。実際に、プロサッカーチームとは、コーポレート契約が決まっている。

 

 「オランダ本社の創業者の意向は、肉好きを満足させること。それだけに味の再現度がプロダクトの強みです。だからこそ日本では非菜食者を狙ったプロモーションをした方が、菜食の方を増やすより効率がいいと思っています。お肉を食べている方が少しその量を減らすことで、結果として環境面でもかなりの効果が見込めるはずです」

 

 

池袋にあるブランドコンセプトストア

 

 

 

 

Sustainable U.S. Soybeans Contribute to the Planet and Environment

サステナブルなアメリカ大豆が地球と環境に貢献

 プラントベース(植物由来)フードの需要増を受けて、原料となる大豆に注目が集まる。そこで日本でも多く使用されているアメリカ大豆のサステナビリティへの取り組みについて紹介する。

プラントベースフードをささえるアメリカ大豆は安心・安全でサステナブル

 近年、欧米を中心に世界的なプラントベースフード製品への関心が高まっています。2029年までに、植物性代替食品市場は、約1400憶㌦(日本円で15兆4000憶円)に達すると予測されますが、その背景にはSGDsへの関心の高まりがあります。食品原料も注目され、持続可能な方法で生産されているかも含め、消費者によるチェックが厳しくなってきています。


 食の安全性や健康、環境意識の高まりがクロスオーバーしてきたことが、昨今の世界的なプラントベースフードブームにもつながっているといえます。さらに気候変動による異常気象により、自然災害や農産物への被害が増えていることから、そうした消費者ニーズは今後も拡大していくことでしょう。

 プラントベースフードの原料として、代表的な食材が「大豆」です。豆腐や納豆などの大豆食品、大豆たんぱくも含め、日本ではアメリカ大豆が多くの食品の原料として幅広く使用されています。日本で使われる大豆のほとんどが輸入大豆で、そのうちの7割はアメリカ大豆なのです。そしてアメリカ大豆生産者の97%が家族経営で農場を営み、安心・安全な大豆を日本に届けるために取り組んでいます。限られた土地と資源を大切に、次世代に継ぐ事業目標を立て、日々努力を重ねています。

 

 また、アメリカ大豆輸出協会(USSEC)は、アメリカ大豆の新しい価値をより広くお伝えするために「サステナビリティ認証プロトコル(SSAP)」制度を取り入れています。今年の4月時点で、日本に輸入されているアメリカ大豆のうち、約9割強にあたる約144万㌧が、SSAP認証付きの大豆となっています。

 

 

 

SSAP認証やSDGsへの取り組みで地球環境に配慮した原料を安定供給

 SSAP認証とは、アメリカ大豆がサステナブルな方法で生産・管理されていることを証明する認証制度です。「生物多様性と生態系の維持」「サステナブルな生産活

 

動」「生産農家の労働環境改善」「生産活動と環境保護の継続的改善」という4つのルールがあります。

 これは大豆生産者による日々のサステナブルな生産慣行や、保全プログラムへのコミットメントの見える化の取り組みともいえます。

 

 さらに世界でSDGsの目標達成への関心が高まる中、アメリカ大豆生産者はS D Gsに取り組み、次の6つを最優先目標としています。それは「大豆の生産性向上・2 」「水利用効率・6」「資源の持続可能な管理 ・12」「気候変動対

策・13」「土壌の回復・15」「パートナーシップ ・17」です。特に土壌の健康、水管理、CO2の削減、エネルギー使用削減、土地利用、生物多様性を改善するための日々の実践が、アメリカ大豆に変化を生み出すうえで重要と考えられているのです。

 

 そこで、環境保全の改善のために長期計画を立て、下記図のように不耕起栽培による土壌の保全、生物多様性の向上や土地・水の利用効率の改善、燃料消費やCO2の削減などに取り組んでいます。また、ドローンやGPSなどの精密技術を駆使し、広大な農場を管理し、効率のよい持続可能な農業を実践しているのです。

 

 アメリカの大豆業界は、世界第2位の主要大豆生産国として、安心・安全でより高品質で安価な原料を求める顧客の要望に応えるために、健康や地球環境に配慮した取り組みを加速していきます。また、そのレジリエントな原料供給システムについて見える化し、気候変動対策などの「取り組みの開示」が必要なお客様へのニーズに応えます。日本でも急成長を遂げるプラントベースフード市場のステークホルダーの皆様に、安心・安全でサステナブルな原料の安定供給を続けていきます。

 

 

 

 

関連記事

関連リンク