お家で過ごす ハロウィンの消費者動向を探る

 長く続くコロナ禍によって、イベントの形が変化しているハロウィン。早くも8月から商戦がスタートしているが、最近の消費動向やトレンドから商機を見つけるために、シンクタンクの食未来研究室(日本食研ホールディングス)に聞いた。

食未来研究室(日本食研ホールディングス)
室長 
松永桂一 氏

 

今年のハロウィンの過ごし方に大きな変化

 自粛が続く現在、さまざまなイベントが新たな局面を迎えている。毎年、大きくニュースで取り上げられるハロウィンの消費動向はどう変化したのだろうか。

 

 食未来研究室室長の松永桂一氏は、「グーグルトレンドの検索のされ方を見ると、一昨年よりも昨年のほうがハロウィンに対する関心度は上がっています」と語る。
 

 「2019年までは、大人数が集まるパーティーに参加するための準備として、事前にコスプレ、お菓子など、ハロウィンの関連キーワードを検索する傾向がありました。しかし、昨年は少人数で楽しむ人が増えたことから、直前や当日の検索が増えました」

 

  さらにネットやSNS上で見られたもう一つの傾向がある。これまでの10月ごろのシーズンには、レシピサイトで「おもてなし」というキーワードがよく検索されていた。これに対し昨年は「夕食」という家庭向けのキーワードでの検索が多かったという。

 

「クリスマスもそうですが、会社の友人、ママ友、家族と、これまで数回開催していたイベントを、コロナ禍では主に家族中心で楽しむようになりました。その傾向は今年も続くでしょう」

 

 

ハロウィンで人気のカボチャ料理はシチュー

 それではハロウィンでは、どのような料理が人気なのだろうか。ハロウィンを象徴する食材といえばカボチャだ。コロナ禍の昨年は、例年以上にカボチャがよく売れたという。
 

 「一年を通して、カボチャが最も売れるのは冬至、2番目がハロウィンです。昨年のハロウィンは10月31日当日に跳ねました。ハロウィンに反応するのは、若年層、そして、子どもを持つ世代ですが、硬いカボチャを丸ごと調理するのはなかなか大変です。スーパーでは、角切りのものもよく出ていたようです。ほかの野菜と比べ、カボチャを嫌いな子があまりいないことも強みでしょう」

 

 

 カボチャとともに購入されリフト値(買われやすさ)が高かったのは、シチュールーやパイシートに加えて、ブロッコリーやニンジンといった野菜類だ。この傾向からはシチューやグラタン、パイなどを作っていることが見てとれる。

 

 「レシピサイトにアクセスして、カボチャで検索すると、カボチャグラタン、カボチャシチュー、パンプキンパイなどのレシピが上位に出てきます。その影響も大きいでしょう。ニンジンなどの具材を、お化けなどのシルエット状に型抜きをして、トッピングするだけで見栄えがよくなります」

 

 また、カボチャと一緒に、ベーコンやウインナーを購入する人も多かったという。「シチューやグラタンの具材として使用するのでしょう。若年層の間では、昨今、厚切りベーコンを使ったシチューが人気になっており、その影響もあるのかもしれません」

 

 

ハンバーグに加えクッキー、ホイップクリームも需要有り

 大規模なパーティーはできない状況だったが、20年のハロウィンはそれなりの盛り上がりを見せた。なぜなら、子どもと一緒に楽しめるイベントは貴重だからだ。気軽に外出できない日々が続く中、ハロウィンは、「家で子どもと楽しく料理や飾り付けを作る」というニーズに当てはまる。

 

 「昨年はカボチャとともに、デコペンやクッキーの材料、ホットケーキミックス、ホイップクリームなどがよく購入されました。子どもと一緒に作るという需要があるのでしょう。また、ハンバーグの材料やギョーザの皮も売り上げを伸ばしました。ハンバーグは、チーズを型抜きして上に載せるとハロウィンらしい見た目になります。ギョーザの皮は、白いお化けのチップスやトッピングとして人気です」

 

 コロナ禍で2度目となる今年のハロウィンはどのようなものとなるのだろうか。消費動向の観点から「昨今、手作り疲れの傾向が見て取れます」と松永氏は語る。

 

 「コロナ禍当初は料理に凝る人が増え、野菜や肉が売れて総菜の売れ行きが停滞しましたが、徐々に総菜が前年割れを脱して回復してきています。今年のハロウィンでは、即食や総菜、家庭用オードブルのような手軽なものも売れそうです。一方でカレー用のスパイスや、圧力鍋の売り上げも引き続き好調で、自粛を機に料理に力を入れる層は厚くなっています。手軽な食品も食卓に並びつつ、ハロウィンならではの凝った料理なども、引き続き人気となるのではないでしょうか」

 

 では、今年はどのようなアイテムを強化し、売り場を展開するべきなのだろうか。

 

「昨年はマフィンカップや型抜きなど、料理用具も販売数を伸ばす傾向がありました。今年は、ハロウィン当日が日曜ですので、子どもと一緒に作るメニューのニーズはより高まるのではないでしょうか。ハロウィンでは、見栄えのする頑張った感が出る料理が喜ばれます。華やかな食卓をサポートするような商品展開、売り場づくりが求められると思います」

 

 さらに、ハロウィンの消費の主役が若年層であることを前提に、松永氏はこう続ける。

 

 「若年層は高齢者に比べ、メーカーやスーパー側の提案を受け入れやすい傾向があります。高齢者はシチュールーなど料理の素を買っても、使う具材は好みで選びがちです。一方、若年層は箱に書かれているレシピ通りに、素直に材料を購入する人が多く見受けられます。カボチャ売り場の近くに、調理例のリーフレットやPOPなどを置くとよいでしょう」

 

 

 今年は、自宅で楽しむハロウィンを後押しするために、若年層やファミリー層にアピールする料理レシピの提案をしてみてはいかがだろうか。