日経MJフォーラム「BtoB ECで稼ぎ方改革!」~EC化がもたらす生産性向上~ 営業力アップ、業務効率化に直結

 国内電子商取引(EC)市場は200兆円を突破し成長を続けている。だが、その80%以上は依然、電話やファクスなどのアナログが占め、生産性が上がらない要因にもなっている。今後、人手が不足するなかで営業力や業務効率の向上が求められることから、BtoB取引のEC化が注目されている。そこで先月開催したMJフォーラムでは、BtoB ECを成功に導くポイントやソリューションにスポットを当てた。

 

オープニングセッション

 

「アマゾンビジネス――購買調達の効率化と即効的なBtoB Eコマース戦略」

アマゾンジャパン 
アマゾンビジネス事業本部営業部長、工学博士
小野田 哲也氏

法人に特化した機能 海外への販路も開拓

 

 昨年9月、法人・個人事業主向けに「アマゾンビジネス」を開始した。このサービスには2つの側面がある。企業による購買調達と、販売事業者による企業向けの販売・販路拡大である。消費者向けの簡単で便利な機能を持つアマゾンに、ビジネス購買で必要な機能を加えたものだ。

 

 利用登録が無料なので、初期導入コストが不要の購買システムといえる。品ぞろえは数億種類を超え、法人限定の商品もある。また、月末締めの請求書払いに対応し、複数の販売事業者からの購買にもアマゾンがまとめて請求・支払いをすることに加え、期間限定で無料の配送特典などの利便性も提供。さらに消費者向けよりも安い法人価格や数量割引もあるほか、複数の販売事業者の価格を比較・検討できる。

 

 企業購買に特化した機能として複数のグループやユーザーに決裁などの承認ルールを設定し、部門や商品ごとに購買を分析しリポートが作成できる。さらに、専任のカスタマースタッフが9~18時まで年中無休で電話やeメールで対応する。

 

 米国では約3年前にアマゾンビジネスを始め、法人・個人事業主の登録数は100万社を超え、販売登録社数は8万5千社に上る。販売事業者はアマゾンビジネスに商品を出品するだけで24時間365日、顧客にアプローチできる。契約・受注はシステムで自動処理し、出荷・配送・顧客対応から与信審査確認・請求書発行・代金回収、さらに経費処理までアマゾンが代行する。アマゾンビジネスは現在6カ国で利用でき、海外への販路拡大も容易になる。費用は月額4900円(税別)の登録料と商品販売時の販売手数料のみだ。

 

セッション① 【EC構築】

 

「中堅・中小企業にこそ、BtoB ECが生産性向上を実現する〝最有力ツール〟となる背景と成功事例」

アイル 
WEB推進チーム課長 
江原 智規氏

基幹システムで実績 連携を視野に導入を

 

 当社は創業27年、社員約600人。東証ジャスダックに上場し、5000社以上にシステムを導入している。BtoB、BtoC双方のソリューションを自社開発し、各システムを連携した提案ができるのが特徴である。BtoBでは基幹業務パッケージアラジンオフィスをはじめ、BtoB ECの専用パッケージアラジンECがある。

 

 日本のBtoBのEC市場は200兆円を超えるが、その80%以上が依然アナログの商取引であり、企業の生産性の低さの要因にもなっている。こうした背景もありBtoB向けEC市場が急成長している。BtoB専用ECシステムでは、取引先ごとのきめ細かな契約内容などをシステムに反映させるといった業務視点を持つことが重要になる。

 

 これを踏まえたBtoBECの導入によって売り上げや利益を向上させた成功企業が何社もある。例えばシューケア用品の卸・小売会社は、受注業務を電話・ファクスからネットに変え、最大5時間を要した確認・入力作業を30分に大幅短縮した。ウェブ画面上で様々な商品が閲覧できることで新しい注文も増えた。またモバイルアクセサリーの卸・販売会社は、在庫・入荷予定情報や商品画像をEC上で公開し、人を増やさずに販路拡大と顧客満足度の向上を図れた。

 

 ECを導入する際にはシステムの全体像を常に意識し、社内の基幹システムとの連携を重視しないと後から色々な問題が生じてくる。当社は27年間、基幹システムを開発してきた実績があり、システム連携を踏まえたBtoB専用ECの構築に強みを発揮する。

 

セッション② 【EC構築】

 

「成功・失敗事例から学ぶ! BtoBマーケティングの具体的な成功メソッドとは?」

ecbeing 
常務執行役員 
富永 成幸氏

失敗する要因は3つ 利用者の立場で開発

 

 当社の強みはECサイト構築、マーケティング支援、強固なセキュリティーのデータセンター事業を兼ね備える点にある。これまでに1000サイトを超えるEC構築を支援してきたが、失敗する際の要因は大きく3つに分かれる。①目的が不明確②ユーザーニーズがくみ取れていない③全体的なスキル不足、である。こうした失敗から学び成功へ導いた事例が数多くある。

 

 例えば、BtoBサイトの構築で営業成績の低下を懸念して営業現場が反対することがある。そこでA社は営業担当者ごとにコードを発行。チラシの裏などに印字し、新規受注なども担当者の評価に結びつくことでサイトの活性化と売り上げの成長につなげた。

 

 サイトを構築したものの利用頻度が上がらないこともある。B社のある得意先では現場や本社が別々に発注して誤発注などが発生し無駄な業務が生じていた。そこで得意先の組織に合わせた承認ワークフローを用意し、利便性を高めてB社サイトの利用を促進した。

 

 C社では得意先から価格や在庫、納期などの照会があると、常に基幹システムを操作して対応していた。そこで業務を整理しつつ基幹システムとウェブシステムとの間でデータ連携を図った。従来の事務作業が効率化され本来の営業活動に力を割けるようになった。

 

 また当社は次の4点に配慮したEC構築で新規顧客の獲得にも成功してきた。①顧客ニーズに合う商品をすぐに理解し提案する②利用イメージを喚起し興味から購入モードへと促す③時には顧客の業務領域までサポートし、ニーズ自体を作る④新規顧客や見込み顧客も呼び込む、ことである。

 

セッション③ 【グローバルEC構築】

 

「デジタルプラットフォームで営業改革!」

JSOL 
流通・サービスビジネス事業部 営業
大東 祐輔氏

製造業をデジタル化 売り上げ向上に成果

 BtoBの現場では、顧客は商談に至るまでに製品の比較検討や資料請求など一連の購買プロセスの半ば以上を済ませているとされる。多くの買い手がインターネットで情報を収集しており、ECで購入したいというニーズも高い。売り手が競合に差をつけるには、買い手が求める情報をオンラインで的確に発信するとともに、見積書の発行から納期確認、購入に至るまで、購買プロセスのセルフサービス化をサポートする視点が必要だ。

 

 同様の動きは製造業でも広がっており、デジタルを活用した売り上げ向上の仕組みづくりなど、稼ぎ方改革が進んでいる。

 

 例えば大手電機部品メーカーA社は、マーケティング部門と営業部門の業務をデジタル化。両部門の情報をグローバルなデジタルプラットフォームで有機的に連携し、効果的な営業施策を実施できるようにした。休眠顧客の掘り起こしや成約確度の高い見込み客の選定、顧客満足度の向上などに成果を上げている。

 

 大手機械部品メーカーB社は、グローバルなデジタルプラットフォーム上に各国代理店のECサイトを構築。用途別の製品絞り込み検索機能なども提供し、買い手が自ら製品を選定、購入できるようにした。ニーズの高い製品を準標準品化して短納期の品目を増やすなど、買い手の利便性向上と代理店の営業力強化を図り、全体の売り上げ増につなげている。

 

 デジタル化による稼ぎ方改革を検討する際は、当社のデジタル化クイック診断フレームワーク「デのべ場」を活用してほしい。どの業務領域をデジタル化すれば効果的か短期間で診断できる。利用は無料だ。

 

セッション④ 【決済】

 

「BtoB ECによる請求業務の効率化について」

ヤマトクレジットファイナンス
物流金融事業部 マネージャー
新宅 良樹氏

決済方法に掛け取引請求業務を一括代行

 BtoB ECでの決済方法として、掛け取引を希望する企業は少なくない。掛け取引を可能にすると、代金引換や前払いの場合に比べ注文単価が上がることも知られている。そこで最近は当社のような決済代行業者を利用し、BtoB ECで掛け取引を可能にする企業が増えている。

 

 当社が提供するBtoB決済サービス「クロネコ掛け払い」は、掛け取引の与信管理や請求業務、集金、売掛金の保証まで一括で引き受けるサービスだ。導入企業は売掛金の未回収リスクや面倒な請求・入金確認業務から解放されるだけでなく、新規取引先でも最短数分で与信結果が出るため機会損失を防げる。

 

「クロネコ掛け払い」はBtoB ECを新規に立ち上げる際だけでなく、既存のサイトにも追加導入できる。最近は遠隔地や小口取引先の決済業務を代行業者に任せることで、中・大口取引先の営業に注力したいと導入を決める例も多い。

 

 BtoB ECで掛け取引を推進するには、オンラインで告知するだけでなく、電話や対面できめ細かく利用を促すことが求められる。値引きやポイント付与など決済方法の切り替えを促す施策も有効だ。

銀行やコンビニが近くにないという企業も少なくないため、口座引き落としに対応できる決済代行業者を選ぶと利用率が上がる例もある。「クロネコ掛け払い」は銀行振込やコンビニ払いだけでなく、口座引き落としにも対応。口座引き落とし手数料も無料だ。

 

 こうしたBtoBならではの商習慣を踏まえたサービスを提供できる決済代行業者を選ぶことも、掛け取引推進のポイントといえるだろう。

 

クロージングセッション

 

「BtoB EC導入Before&After ~現場目線で本音を語る~」

サントリーマーケティング&コマース
市場開発本部 企画開発グループ 通販企画チーム
坂内 宏輔氏

受発注業務を効率化自然流入で新規獲得

 

 酒類関連備品の販売などを手掛ける当社は、BtoB ECサイト「PROTOOLS WEB」を開設した。酒販店や飲食店向けの備品を集めた総合カタログをEC化したものだ。

 

 従来使用していた受発注サイトは、カタログを見て商品コードと数量を打ち込んで発注する簡易的なもので利便性が低かった。決済方法は代金引換が基本でクレジットカードは使えず、モバイルからの利用もできなかった。開設から10年以上が経過し、改修費用が高額になることから、ECパッケージでの全面刷新を決めた。

 

 新しいサイトは画面が見やすくなり、新商品の案内や売れ筋ランキングなどタイムリーな情報発信が可能になった。カタログと異なり顧客にいつでもアプローチでき、季節やテーマごとに特集を組むなど効果的な販促施策も実施できる。

 

 自然流入で会員登録、購入に至る例も少なくない。注文から納品まで1~3日とカタログに比べ短納期であることも受注率の向上につながっている。

クレジットカード決済にも対応した。既存顧客のために旧受発注サイトと同じ画面を用意し、商品コードと数量で発注できる環境も残している。

 

 発注と同じ画面で見積書を発行できるのも特徴だ。利用者自ら卸値・上代どちらの見積書も作成でき、営業現場の負担軽減につながっている。ビアグラスの容量など条件を細かく設定した検索を可能にしたことで、コールセンターへの問い合わせも大幅に減少した。

 

 このサイトの立ち上げ後、受注件数・売り上げともに増加した。まだファクスで受発注している顧客にECの利便性を訴求し、切り替えを促したい。

関連記事

関連リンク