お店における音づくり スペシャルインタビュー①  「意識させない音楽」でブランドをつくる

シップス
社長

三浦義哲氏

 

2015年、創業40周年を迎えた「SHIPS」。その歴史は、音楽によるブランドづくりの歴史でもあった。セレクトショップの草分けともいえるSHIPSを育てた三浦義哲社長に、ブランドづくりと音楽へのこだわりを聞いた。

 

 

店頭のラジオから始まった雰囲気づくり

 SHIPSの起源は、1950年代に、東京・上野のアメ横に出店した米軍放出品の店だ。三浦氏は、その当時から、音楽を生かした雰囲気づくりに取り組んでいたという。「それこそ近隣の鮮魚店の臭いが鼻につくような立地でしたが、店頭に小さなトランジスタラジオを置いて、FEN(※1)を流していました」

 

 まだ音楽を主体としたFM局も少なく、日本のラジオ放送が歌謡曲一辺倒だった時代、アメリカの輸入商品を扱う店に、英語のアナウンスと英語の歌が流れる。確かに、それは、音を生かした雰囲気づくり、ブランディングの始まりといっていいだろう。

 

 もともと、ファッションと音楽は親和性が高い。75年、アメリカを提案する「MIURA&SONS(ミウラ&サンズ)」を渋谷にオープンし、77年、銀座に「SHIPS」1号店をオープンさせた頃、SHIPSでは、スタッフが音源を持ち寄ってBGMに使うというスタイルができあがっていた。

 

 「ちょうど、アメリカ建国200年で、アメリカ文化が一気に日本に入ってきた時代です。アメリカのファッションを扱う私たちのショップで、日本で知られていない最先端の音楽を紹介するというのは、当然のことのように思えました。あの時代、ファッションと音楽は、とても近い関係にあったように思います」(三浦氏)

 

 

店舗の雰囲気を形づくるBGMは重要な要素

 SHIPSは、現在、MEN、WOMEN、KIDS、LIFESTYLEのそれぞれのカテゴリーで、複数のブランドを展開。ショップや取扱店は全国で80店舗以上にのぼる。「店舗は、売り場であると同時に、ブランド観を訴求する場として位置づけています」と三浦氏がいうように、外観や内装、調度などが共通の意匠で展開されるなか、BGMだけがスタッフの趣味でセレクトされるのでは、統一感が損なわれてしまう。「そこで、DJ、音楽プロデューサーとして活躍する松浦俊夫氏(※2)に選曲を依頼し、ブランドごとに共通の音源を用意して、BGMとして使うようにしました」(三浦氏)

 

 松浦氏へのリクエストは、毎月、意識して聴こうとしないとわからない、自然に流れるような音楽をセレクトしてもらうことだという。聴こうと思わなければわからない曲、なんとなく春の雰囲気とか、秋の雰囲気が感じられるような曲が、BGMとしての理想だとの考えに基づくものだ。

 

 SHIPSでは、店舗づくりの際、スピーカー配置などもこだわって、音響設備を導入している。三浦氏は、「スピーカーなどお客様の目に触れるものは、デザインにもこだわりたかったし、音質面でもベストなものを選びたかったからです」という。こうした条件を満たす設備としてSHIPSがセレクトしたのがBoseだった。音響の専門会社ならではのカバーエリアの考え方など、様々なアドバイスも役に立ったという。

 

 

服を体験する場として店舗づくりにこだわる

 現在、店舗設計に携わる専任のスタッフは4人。SHIPS各ブランドの店舗の特徴の一つであるアロマディフューザーによる香りの演出なども含め、SHIPSらしさの具現化に取り組んでいる。「服を見る、服に触る、そんな場所である店頭でBGMや香りの演出を行うことで、お客様には、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感のうち、味覚以外の四感でSHIPSらしさを感じていただけることになります」と三浦氏。服の見え方に大きく影響する照明についても、ブランドごとに照度を変えるといったアレンジを行っているという。

 

 インターネットでの通販が一般的になった時代だからこそ、店舗での体験は、重要になる。SHIPSの店舗づくりでは、デザイン事務所に依頼しても、内装などでは、社内の考えを優先することが多いという。デザイナーの個性が見え過ぎないようにしているのは、あくまでも服が主役だと考えているからだ。

 

 「SHIPSが、これからもずっとお客様に選ばれるブランドであるためにも、香りや音響、照明など、様々な視点からSHIPSらしさを提案することに、こだわり続けたいと考えています」(三浦氏)

 

 

 

間接光による演出にもこだわった店内。BGMは、店頭に並ぶアイテムの季節感に合わせて構成される。お客様に質問されることもあるため、曲目リストは全店舗で共有している。

 

 

 

(※1)FEN/Far East Network(極東放送網)の略。45年当時に放送開始された在日米軍向けの放送局。

(※2)松浦俊夫/90年、UNITED FUTURE ORGANIZATION(U.F.O.)を結成。2002年独立。DJを続ける傍ら、ファッションブランド等のコンピレイションやブティックの音楽の監修などにも携わる。

 

 


 

三浦義哲(みうら・よしのり)

株式会社シップス代表取締役社長。1940年生まれ、早稲田大学卒業後、教師を経て、東京・上野アメ横の三浦商店を引き継ぐ。70年、屋号を「ミウラ」に変更し、ファッション業界へ転身。75年、有限会社ミウラを設立し、現在のセレクトショップの原点としてのMIURA&SONS(ミウラ&サンズ)渋谷店を、77年にSHIPS 銀座店をオープン。その後、SHIPS以外のブランド展開も行う。

 

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