【SCSK】 スーパーマーケットへの流通BMS導入をけん引するクラウドEDIサービス「スマクラ」

SCSK株式会社
クラウド事業本部
シニアエンジニア
堀口 尚之氏

 

 大手と中小の両極化が進んでいるスーパーマーケット業界。大手GMSを中心に流通BMSを導入する企業が増える一方、地域に密着した中小のスーパーマーケットにまではすそ野が拡がっていないのが現状だ。危機感を抱いた流通4団体は、中堅・中小のスーパーマーケットでも低コストかつ簡単に導入できるスーパーマーケット・クラウドEDIサービス「スマクラ」を用意し、流通BMSの積極的な導入をサポートしている。
そこで今回は、同サービスの提供事業者であるSCSKの堀口尚之氏に、その概要と2012年9月にリリースした無償のポータルサービスについて話を聞いた。

 

 

流通4団体共同で「流通BMS普及推進事業」

 

 流通BMSは、多くのスーパーマーケットが参加してこそ、最大の効果を発揮する――。こうした考えの下、日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、新日本スーパーマーケット協会、日本ボランタリーチェーン協会の流通4団体は、共同戦線を張って流通BMSの普及に向けた取り組みを推進している。

 


 堀口氏は普及推進事業の進行状況をこう語る。「流通BMS普及推進事業の柱は、普及推進事業とサービス提供事業の2つです。普及推進事業としては、2012年1月から7月にかけて、全国6都市で流通BMS普及推進説明会を開催。流通BMS導入企業の成功事例を紹介するとともに、未導入の小売業が抱く不安の声に答えてきました。サービス提供事業では、流通4団体が推奨サービスとして、スマクラを選定し、技術支援を含む導入サポートを提供しています」と堀口氏は説明する。

 このスマクラは、安価なシステム導入と利用コストの低減を実現するクラウド型のEDIサービスで、IT企業11社が提案したソリューション群の中から流通4団体推奨サービスとして採用された経緯がある。流通4団体に加盟するスーパーマーケットは、スマクラを採用することで流通BMSの導入に立ちはだかるハードルをクリアできる。すでに、セイミヤ、サミット、ヤオコーが同サービスを利用して流通BMSに移行済み。この他にもカスミ、東急ストア、与野フードセンターが採用を決定し、本稼働に向けて準備を進めている段階だ。また、導入を検討している企業は数十社に上っており、スマクラが流通BMSの本格的な普及を後押ししていることは間違いない。

 

 普及推進活動の成果は、アンケート結果を見ても確実に現れている。12年1月から7月にかけて、小売業のEDI担当者および関係者に実施したアンケートでは、流通BMSを「導入済み」「導入予定」と答えた企業が、11年10月の31%から48%に増加。「導入するつもりはない」と答えた企業も17%から1%に減少し、流通BMSの導入に対する意欲が高まっていることは明らかだ。

 

 

導入企業の声に裏付けされた3つの特長

 

 共通のインフラ基盤を複数の利用者で共有するクラウド型サービスのスマクラについて説明したが、その大きな特長には「ローコスト」「短期間」「高品質」の3つがある。実際、導入によって成果を上げているスーパーマーケットも少なくない。

 

①ローコスト

 流通BMSを導入する際、独自にEDIシステムを構築すると、最低でも数千万円の初期投資が必要になる。受発注データの整備や交換にも数多くのスタッフと作業工数を割かなければならず、予算に限りがある中小スーパーマーケットにはハードルが高いのも確かだ。

 共同利用型のスマクラなら、自社で大がかりなシステムを開発する必要がなく、人件費や作業時間もわずかで済む。月額コストもリーズナブルで、月々数万円でスピーディーなデータ交換が実現する。ヤオコーでは「共同利用型だからこそ、初期費用・運用費用の低減が実現できた」とコメントしている。

 

②短期間

 流通BMSを自社構築型で導入する場合、設計から開発、構築・内部テスト、取引先拡大までに6カ月程度を要するのが一般的だ。サービス利用型のスマクラならば開発工程を丸ごと省けるため、短期間で開発が終了する。11年11月にスマクラを利用して流通BMSに移行したサミットでは、自社の担当2人とベンダーのSE4人の少人数体制にもかかわらず、約4カ月ですべての導入を終え、そのメリットを最大限享受している。

 

③高品質

 多くの小売業者は、取引先とのデータ交換手段を流通BMSに一本化することに不安を抱いている。その理由は、取引金額の少ない取引先や、街の豆腐屋さんなど、即座に対応してもらえないが重要な取引先があるからだ。スマクラは、こうした不安を解消するため、流通BMS対応の「スマクラ for BMS」以外にも、流通BMSの補完手段であるWeb-EDIに対応した「スマクラ for Web」。その他、様々な通信手段やフォーマットに対応しているので、対応準備が整った取引先から順次に流通BMSに移行していくことも簡単だ。

 セイミヤでは「流通BMSを中心に、Web、従来型EDI、FAXを含めた統合サービスだからこそスマクラを採用し、EDI化率を伝票枚数の70~80%にできた」とコメントしている。

 


流通BMS導入時・稼働時の運用負担を最小化する「スマクラ ポータル」を無償提供

 

 中小のスーパーマーケットが流通BMSを初めて導入する際、小売業の本部担当者には様々な不安がつきまとう。「導入に必要な資料は、いつどのように取引先に渡すのか?」「テストデータはどのように準備をするのか?」「取引先からの問い合わせには、どのように答えればいいのか?」など、分からないことは多い。

 

 こうした移行に関する悩みを解消し、必要な情報を一元的に管理するツールが「スマクラ ポータル」だ。堀口氏は「本部の担当者、取引先の担当者、SCSKの3者が同一の情報基盤上でコミュニケーションを取りながら、流通BMSへの移行に関する疑問を解消し、負荷を軽減するサポートツールです」とその役割を説明する。

 

 


 今まで、取引先との書類交換や、問い合わせなどは、メールや電話で個別に行っているケースがほとんどだ。しかし、流通BMSに対応する取引先数が増えると、同じ内容の情報を何度もやり取りしなければならず、手間がかかる。しかし、同ポータルを利用すれば、資料の交換も問い合わせ対応もポータル上で一元化されるため、煩わしい手間から解放される。

 

 ポータルの主要機能は「情報管理」「業務支援」「コミュニケーション」の3つだ。まず情報管理では、複数の取引先情報や進捗状況の一元管理が実現し、取引先への資料提供も容易になる。業務支援では、事業継続計画(BCP)対策として発注業務を止めない機能や、テストデータのセルフチェック機能を提供。取引先に送信した資料が読まれているかなどの状況確認もその場でできる。コミュニケーションについては、掲示板、FAQ、問い合わせ機能を提供。問い合わせや回答の内容を共有するだけでなく、履歴情報を蓄積することでノウハウが獲得できるなど、そのメリットは大きい。

 

 12年9月にリリースされた「スマクラ ポータル」は、スマクラの無償オプション(※)として提供され、スマクラユーザーならいつでも利用できる。同ポータルの機能は、今後もユーザーのニーズに応じて拡張していく予定という。12年10月時点で、東急ストアやヤオコーがポータルを活用して導入負荷を軽減しており、サービスリリースから間もないながらも確実に成果を積み上げている。

 

 最後に堀口氏は流通BMSの導入に踏み切れないスーパーマーケットの担当者に対して次のようなメッセージを送った。

「VANの時代から30年近くにわたってサービスを提供してきたSCSKにとって、流通業界の発展に貢献することは重要な使命です。そのために、大手から中小まで、小売事業者が手軽に流通BMSに移行するためのソリューションとして、スマクラおよび「スマクラ ポータル」を用意しました。サプライチェーン全体最適化を業界全体で進めるためにも、本サービスを活用して早期の移行をお願いします」

 


※無償オプション

基本サービス(スマクラ for BMS、スマクラ for Web、スマクラ for レガシー)のいずれかを利用する場合、「スマクラ ポータル」は無償提供となる。