スーパーの経営を革新する流通BMS ~スーパーマーケット・トレードショー~

 2011年2月8日から10日まで、東京ビッグサイトで開催された流通業者向けの展示会「スーパーマーケット・トレードショー」(主催:社団法人新日本スーパーマーケット協会)のセミナープログラムで、「スーパーの経営を革新する流通BMS」と題した講演が行われた。
 講演では、スーパーマーケット業界でいち早く流通BMSに取り組み、一定の成果をあげているユニーの角田吉隆氏と、シジシージャパンの堀内秀起氏が流通BMSの導入実績および現状を明らかにした。講演は数百人収容のスペースが満席になるほどの盛況を見せ、流通BMSへの関心の高さをうかがわせた。

 

 

第1部「ユニーにおける業務改革と流通BMS」 (ユニー 執行役員 システム物流部長 角田吉隆氏)

 

MD改革を推進中

 愛知県稲沢市に本社を置くユニーは、東海地方から関東地方にかけて231店舗(2011年2月7日現在)を展開している。不況による個人消費の落ち込みや、大型店舗の出店に関する法規制などで、スーパーマーケット業界を取り巻く環境は厳しく、同社においても抜本的な構造改革に迫られている。ユニーは厳しい生き残り競争を乗り切るため、「マーチャンダイジング(MD)改革を支える基盤整備」を旗印に掲げ、「調達改革」「SCM改革」「運営改革」「B2B改革」の4つに取り組んでいる。角田氏は「調達改革は、自ら商品を作り出す領域であり、メーカーとの協業がテーマです。SCM改革は、店舗への商品供給のためのインフラとして、物流センターをいかに効率化するかが課題であり、運営改革では、GMSとスーパーの2業態がある中で、効率的な店舗オペレーションを行うことが重要です。B2B改革では、流通BMSによって取引先との取引をいかに効率化するかにあります」と説明した。

 MD改革の具体的な取り組みとして、同社は、2002年からシステム開発と物流センターの構築に着手。2009年には複数箇所に点在していた常温物流センターを、「犬山ドライ物流センター」および「大府ドライ物流センター」に集約して効率化を図った。また、特売商品を店舗が卸業者やメーカーと直接商談できるように独自のMDシステムを開発。特売商品の選定を店舗に任せることにより、品揃えに店舗の個性が打ち出せる体制を構築している。

 

 さらに顧客ニーズに即したプロモーションを効果的に行うための協業化にも積極的に取り組んでいる。ユニーでは、一部メーカーと共同プロモーションを行い、2009年にはユニー・イズミヤ・フジ協業による共通PB商品を開発している。こうした垂直方向の協業化を進める一方で、グループシナジーを高める観点から、グループ会社との協業化も推進し、商品の共同購入やグループ会社との共同商品開発も始めた。角田氏は「協業ではメーカーと小売業をつなぐ情報共有基盤が必要であり、その基盤として流通BMSが重要な役割を果たしています」と強調した。

 

2012年に向けて流通BMSの本格移行を開始

 同社は、2007年、2008年と日本チェーンストア協会と日本スーパーマーケット協会による合同情報システム委員会が実施した流通BMSの共同実証プロジェクトに参加。ドライグロサリーの一部メーカーや卸業者との間で流通BMSによるメッセージ交換を開始している。角田氏は「2009年に生鮮食品を含む流通BMSのVer1.3がリリースされ、スーパー業界にとってようやく完成形が出来上がりました。そこで当社では2012年にかけて本格的に流通BMSへの移行を目指していきます」と語った。


 流通BMSの導入によって同社に大きく現れた成果は、業態に依存しないインフラの実現だ。店舗からの発注情報は、発注締めサイクルごとに本部とEDIセンターを経て、取引先にリアルタイムに渡される。一方、取引先からの出荷データもリアルタイムに物流センターに送られてくるため、物流センターには実際の商品が届く前にデータが先行して届いていることになる。取引先から渡される流通BMSのメッセージには、物流に必要な項目がすべて含まれており、物流センターはJCA手順の時のような商品マスターを持つ必要がない。角田氏は「総合スーパーと中型スーパーの2業態を持つ当社からみると、業態に依存しない共通のインフラが構築できていることになります」と強調した。


 流通BMSに切り替えた1つの効果として、お菓子のユニー専用物流センターを、汎用物流センターに統合することができた。「菓子類の受発注時間が往復で3時間程度の時間短縮となり、当日納品を実現し、結果として原価の低減が実現しました」と角田氏。
また、中国を主力の生産拠点とするアパレル分野においても、国内の物流拠点で行っていた配送仕分けが中国国内の段階でできるようになり、物流コストの削減につながっているという。


 最後に角田氏は、流通BMSの特長について、①EDI化を推進することによる伝票レスなどの実現、②インターネット回線を利用することによる通信費用の削減や受発注業務の迅速化、③標準システムの利用による個別対応費用の削減、④複数企業間同士の共通SCMのインフラ利用の4つをあげ、「ユニーの生き残りをかけたMD改革を実現するツールとして、今後も流通BMSを活用していきます」と語った。

 

 

第2部「CGCグループにおける情報化戦略と流通BMS」 (シジシージャパン システムチーム チームリーダー 堀内秀起氏)

 

プラットフォームの共通化でグループの協業を強化

 中堅・中小規模のスーパーが「1社でできないことをみんなで取り組む」目的で設立されたシジシージャパン(CGC)。現在、全国に224社、3685店舗を擁し、グループ総年商は4兆1916億円に達する(2011年1月現在)。CGCの活動の柱であるPB商品の開発では、価格訴求型、品質訴求型など様々な商品によって個性を打ち出し、成功を収めている。堀内氏は「価格競争が激化する中、PB商品の育成によって競争力を高めたいという加盟店の願いもあり、協業への期待はより高まっています」と説明する。

 CGCでは「商品」「物流」「情報システム」「営業支援」の各分野でグループ活動を展開しているが、情報システムについては、プラットフォームを共通化することで全体最適化を図る方針で臨んでいるという。そのポイントについて堀内氏は「商品マスターを同期化して整合性を整えること、EDIを流通BMSによって標準化すること、基幹システムの共同利用化によってコストダウンを図ることの3つです」と語る。


 マスターの同期化については、加盟店が共用可能な商品マスターセンターをCGCが構築して提供している。「CGCのマスターセンターは国際標準のGDSに準拠し、メーカーや卸業者が業界団体毎に保有する商品データベースとも連携しています。加盟店はCGCグループ商品マスターセンターを利用することで、マスター登録の作業が効率化され、マスターの精度向上と業務の精度向上が期待できます」と堀内氏。

 

 加盟企業へ推奨する基幹システムとしては、「みんなのCGCシステム」をASPサービスとして用意している。堀内氏は「ハードウエア、ソフトウエアの共同利用で情報システムの構築と運用にかかる負担を軽減し、システムの進化にも柔軟に対応することが狙いです。ASPサービスであれば、ユーザーの要望を盛り込みながらシステムを強化でき、また、ユーザー同士が集まるユーザー会によって定期的に情報交換することで、より効果的な使い方が習得できるメリットがあります」と語る。現在は、加盟企業の30社以上が「みんなのCGCシステム」を導入しているという。

 

加盟店への呼びかけ強化で流通BMSの導入を促進
 堀内氏はCGCグループの流通BMSの導入状況について、28の加盟店が導入済みで、近々2社の導入が予定されていることを明らかにした(2011年2月現在)。CGCでは早期段階から流通BMSの導入を推進しているが、導入に向けてハードルがあることを認め、堀内氏は「独自のEDIを導入済み加盟店では、伝票レスなどのEDIとしての効果がすで に実現しているため、流通BMSに切り替えるメリットが見出しにくいのが現状です。さらに流通BMSの導入によって基幹システムの改修も求められ、さらなるコストがかかることも導入をためらわせる原因となっています」と指摘した。


 CGCは現在、EDI未対応の加盟店に対しては、EDIによる業務効率の向上効果を説明しながら流通BMSの導入を呼びかけている段階だ。基幹システムとの連携については、一番手軽な流通BMS対応の方法として、システムコストの削減が期待できる共同利用型の「みんなのCGCシステム」の導入を推進しているという。
一方、すでにEDIを導入済みの加盟店には、次期システムの入れ替え時での対応を呼びかけている。堀内氏は「流通BMSの効果は、EDIによる効果だけにとどまりません。通信時間の短縮によって発注業務や納品業務に余裕が生まれ、フォーマットが統一化されることで新規の接続も簡単になります。運用保守の手間や、システムの維持コストの削減も期待できることから導入メリットはあります」と説明した。


 最後に堀内氏は「競争関係がある以上、すべてを標準化することがいいとは限りませんが、標準化できるものでさえできていない現状があります。流通BMSは標準化できるもの。そのためにも普及拡大に向けた協力をお願いします」と呼びかけた。

 

 

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