見直そう、日本の伝統的食文化 「和食の日」特集

 今日11月24日は「和食の日」。日本の伝統的な食文化について見直し、保護・継承していくために制定されました。生活様式が大きく様変わりし、この大切な食文化についても改めて考えてみるべき時が来ています。

 

和食文化の保護・継承に向けて

和食文化国民会議 専務理事・事務局長  武田 尚樹氏

注目増す「和食=健康食」
 昨年から続くコロナ禍により、外食、特に飲酒を伴う外食産業は甚大な影響を受けています。一方、リモートワークの拡大もあって家庭での喫食機会が増加し、冷凍食品をはじめ加工食品の売り上げは好調のようです。
 コロナ禍は、私たちの食生活にも変化を及ぼしました。高齢者や生活習慣病患者が重篤な症状になったことで健康への関心がより一層高まり、一汁三菜を基本とする和食に注目が集まっています。昆布やかつお節による「だし」のうま味をベースにした和食は、洋食や中華料理に比べると油脂の使用が少なく、多種多彩な食材を使うため栄養バランスの良さも抜群。また昨年改訂された日本食品標準成分表(八訂)では、主食である米飯類の食物繊維の含有量が増加しています。この新しい知見について今年10月開催の「和食と健康」シンポジウムで解説いたしました。


活発化する和食普及活動
 和食文化国民会議は2015年の設立以降、様々な和食普及活動や食育活動を行っています。毎年「和食の日」を中心に「だしで味わう和食の日」企画を実施。小中学校や幼稚園・保育所などで、和食献立の給食に合わせて和食に関する教材配布や出前授業を行い、味わいの基本となる「だし」について知ってもらう機会を提供しており、本年度は1万3000を超える学校などで300万人以上の子どもたちにご参加いただきました。13年12月4日に「和食」がユネスコに無形文化遺産登録されたのを記念し、毎年この日には「全国『和食』連絡会議交流会1204和食セッション」も開催しています。

 またSDGs(持続可能な開発目標)を重要なテーマととらえ、組織内に「和食とSDGs」検討委員会を設けて具体的な取り組み内容の検討を行っています。省庁とも密接な連携を図っており、農林水産省や文化庁などと和食文化振興事業についての周知活動や和食に関連する民俗文化財登録に関する意見交換などを行っています。現在、文化庁で準備中の和食文化機運醸成のための企画にも協力する予定です。

 和食文化の保護・継承にとって、家族や親しい人との共食の機会はとても大切です。まだ外食には幾分の注意が必要ですが、これからの季節、鍋を囲むなどして「和食」を存分に楽しんでいただきたいです。

 

 

伝統を「変えずに変えていく」

蛇の市本店 代表取締役社長 五代目  寳井 英晴氏

 蛇の市は1889年(明治22年)に日本橋で創業。131年の間には、食材、調味料、流通といった商のすべてが変わり、コロナ禍など社会情勢の変化にも柔軟な対応力が求められてきました。蛇の市が5代にわたり伝統を守ってこられたのは、「変えずに変えていく」という作業だと思います。無くなったり変わってしまったものを各代にわたり変えずに変えていく。そして新しいものを取り入れ、より良いものしていく。そのためには常に、新たなメニュー開発はもちろん一緒に提供するお酒の研究が欠かせません。そうした中で私が今最も注目しているのが日本生まれのワインです。
 ワインは、料理の作り手がそのワインが生まれる土地の特徴、気候、風土などを理解することで、提供する料理に合わせることが可能になります。そういう意味で日本ワインは、「和食をやっている我々がその可能性に挑戦しないで誰が挑戦するのか」という気概で向き合うべき楽しみなジャンルです。日本らしいワイン造りに挑む人たちが造りあげる新たな魅力を、伝統的な和食と一緒にお客さまにお届けすることで、その良さに気づいてもらえるものと確信しています。

 131年を超え、変えずに変えていく作業の一つとして「日本ワイン」というジャンルを取り入れ、さらに良い和食を皆さまに提供していきたいと思います。

 

 

栽培技術確立し品質向上

日本ワイナリーアワード協議会 事務局長  山本 光子氏

 

 21世紀に入り日本ワインは急成長し、2018年度末で果実製造免許場数は466場。生産あるいは出荷実績があるワイナリーは、331で1999年の168から倍増。2018年以降20年まで毎年30以上のワイナリーが誕生しています。

 この20年で造り手の意識が大きく変わり、世界水準を超える上質なワイン造りをめざす生産者も増えています。ワイン専用品種の栽培、北海道など雪の多い冷涼地での栽培、甲州など日本固有種に合わせた栽培などの技術確立も大きく進み、日本ワインの品質の向上につながっています。和食にも抜群の相性です。日本ワインをオンリストする飲食店や販売店でぜひお試しください。

 



 第4回日本ワイナリーアワード2021®HP
 https://www.japanwinery-award.jp