デジタル人材難、運用外注で克服

 個人情報保護の観点から、クッキーの規制強化が進んでいる。これにより、リターゲティングなど従来のウェブ広告のアプローチは難しくなり、その手法は大きく変わることになる。クッキー規制で追えなくなった「顧客予備軍」をどう的確に購買行動や登録に導くか。その手法が、CRO(コンバージョン・レート・オプティマイゼーション=コンバージョン率最適化)だ。

ツール導入だけでは成果は出ない

 B toC向けの顧客コミュニケーション支援を手がけるRepro(リプロ、東京・渋谷)はこの夏、デジタルマーケティングに携わる企業の役職者に対し、ウェブサイト活用状況に関するアンケートを実施した。

 

 その結果浮き彫りになったのは、①ノウハウ・人材の不足②デジタルマーケティングの成功には専任の担当者が不可欠③プロ人材の外部からの採用は、その直接的な解決策にはならない可能性がある④デジタルマーケティングツールの導入だけでは課題は解決できない⑤ウェブ接客ツールの導入で成果を最もあげているのは運用を外部委託するケース――といった点だ。

 

 自社のデジタルマーケティングの課題について、回答の59・4%が「知見があり、施策を実践できるメンバーが足りない」と回答するとともに、59・1%がそもそも人数が足りないと回答している。

 

 

 また、デジタル広告、CRO、SEO(検索エンジン最適化)とコンテンツマーケティング、CRM(顧客情報管理)の各領域で、人員配置と成果の関連性を問うたところ、専任の担当者を置いている方が、成果が上がっているとの回答が多かった。

 

 社内の他部署から異動した人材と社外から中途採用した人材のスキルレベルを比較したところ、その水準にはさほど大きな差が見られないこともわかった。

 

 デジタルマーケティングツールの代表例として、MA(マーケティング・オートメーション)、ウェブ接客、チャットボット、CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)の導入効果について問うたところ、期待通り、あるいは期待を上回る成果を得られているとの回答は、すべてのツールで50%未満だった。

 

 ウェブ接客ツールの運用では、社内だけや一部の外部委託にとどまっている場合は、期待する成果に結びついているのが約5割なのに対し、ほぼ外部委託している企業は約8割にも上っている。

 

 

 

採用も教育も困難

 では、こうした課題をどう解決すべきか。そのポイントをReproの中澤伸也取締役CMOに聞いた。

 情報技術(IT)の人材市場では、人材不足が顕著だ。特に、デジタルマーケティングに関わる人材はきわめて不足している。コロナ禍で、多くの企業がネットビジネスに参入したことも影響している。

 

 デジタルマーケティング人材が不足しているのは、工学的な知識やデータを理解する力が求められる一方で、顧客の志向を理解できる経験も必要だからだ。特に、データを見られる、扱える、理解できる人材とその教育が足りていない。

 

 しかし、市場は人材不足。採用は難しい。そこで、優秀な営業担当、店舗担当にデジタルを学ばせようとするが、教えられる人もいないのが実態だ。既存のスタッフも約半分が社内異動してきた人材で、デジタルマーケティングに精通しているとは言い難い。

 

 特に人材不足が顕著なのがCROに関わる人材だ。CROとは、サイトに来訪した顧客を購買に結びつける率を上げること。今までは、クッキーを使った広告で顧客獲得が可能だったため、CROはあまり普及してこなかった。

 

 

ツール使いこなせる人材を

 こうした状況では、たとえツールを導入しても十分に活用できない。そもそも担当者がおらずにツールが導入できないというケースもある。CROやマーケティング・オートメーション(MA)の領域は、ツールが使えるだけでは何の成果も生まない。顧客の起こした行動に対し、どのようなアプローチを設定するか、施策そのものを考えないと成果には結びつかない。しかし、そのノウハウを持つ人材がいない。経験に裏打ちされた施策を生み出せる人材が不可欠だ。それにはOJT付きの運用委託が必要になる。講義形式ではなく、実際に運用しながら、担当者が経験を積み重ねていく。

 

 マーケティングは外部委託には向かない職種だ。自社の商品と顧客を熟知しているのは社内の人間だ。だからこそ、一定期間外注し、そのノウハウを身につけた社内人材を育成する必要がある。

 

 Reproでは、顧客企業の担当者と「なぜこの施策が必要か」「どういう課題があるか」「解決方法は何か」などを一緒に取り組みながら、次にどの手を打つべきかを提案する。それは、成果を上げるための提案というだけでなく、ノウハウの移管でもある。

 

 まず、顧客の事業・顧客分析を行い、顧客にとって必要な手法は何で、どんなKPI(重要業績評価指標)で進めるのかを1社ごとにほぼフルカスタマイズする。いわゆる「テッパン」手法でのアプローチはとらない。ただし、運用受託は1年が基本。自社人材が運用することが最大の成果を生むからだ。

 

 現在、動画の研修プログラムも制作中。デジタルマーケティングの基礎から、具体的にどのように施策を考えるかまで、座学で学べるものも提供したい。OJTと座学の両面で学べる環境を整備する。

 

 このままでは、実際は「使いこなせていない」にもかかわらず、CROやMAのツールは「使えない」と言われかねない。そのために我々がOJTでノウハウを伝授する。

 

 

 

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