【インテック】 第2弾 : ドラッグストア業界における流通BMSソリューション

株式会社プラネット
取締役 執行役員
営業本部副本部長兼ユーザーIT支援室長
黒岩昭雄氏

 

 これまでスーパーマーケット業界で先行して普及が進んできた流通ビジネスメッセージ標準(流通BMS)も、今後は様々な小売業での導入が拡大していく。そこで今回は、ドラッグストア業界に焦点を当てる。インテックがITシステム構築面で支援している株式会社プラネットは、長年にわたり日用品、化粧品業界に共通インフラを提供している。流通BMSの共同実証を通じて明らかになってきたドラッグストア業界における導入メリット、普及への展望や望まれるソリューションなどについて、プラネットの取締役 黒岩昭雄氏に聞いた。

 

 

インフォメーションオーガナイザーとして業界標準の確立に積極的に関与


 プラネットは、1985年に日用品、化粧品業界の流通システム最適化のための業界共通インフラの構築(VAN)を目的として、同業界の有力メーカー8社の合意で設立された。プラネットが提供するVANのユーザーは、化粧品・日用品業界などのメーカー・卸売業、資材サプライヤー約1,000社に上り、多くの業界のEDIを支え、データベース、プラットフォームサービスを提供。流通ネットワークを支える「インフォメーションオーガナイザー」を標榜している。

 

 経済産業省が「流通サプライチェーン最適化事業」の一環として流通業界とともに進めてきたGDS(国際的な商品情報の同期化)の推進においても、プラネットは実証事業に参加し、業界標準の確立に積極的に関与してきた。

 

 

共同実証で大きな導入効果 全体で約85%の伝票レスが可能


 ドラッグストア業界における流通BMSの共同実証は、小売3社と卸6社が参加して、2008年11月~2009年2月に実施され、同2月に成果報告書がまとめられた。
「このドラッグストア業界での共同実証は、流通BMSを基本として業界の商慣習を盛り込んだもので、主な検討ポイントはメッセージに関わるものでした」と黒岩氏。

 

 具体例の一つをあげると業界特有の「店別発注-総量納品」プロセスがあった。これはチェーン店においても発注は各店別に行うが、卸側から物流センターへの納品は総量のため荷姿(ケース、ボール、バラ等など)が異なるというものだ。店別決済において、データが店別出荷データであると物流センターでの検品が出来ないという問題が起こる。そこで既存の流通BMSに存在しない「出荷荷姿メッセージ」を新規メッセージとしてリクエストして承認されている。この他、「返品受領メッセージ」の追加、メッセージ項目の変更を行ったほか、スーパー業界版の運用ガイドラインに、チェーンドラッグストア業界検討分を変更・追記したチェーンドラッグストア業界版の運用ガイドラインを作成している。

 

 「共同実証を通じて、業務プロセスにおける適応はほぼ問題なく、流通BMS導入による効果が確認できました。チェーンドラッグストアの売り上げのうち、約4割を日用品・化粧品が、約2割を加工食品が占めており、商材の取引先がスーパー業界と共通していることもプラスに作用しているようです。実際、一般用医薬品における伝票レスでは小売3社平均で約95%、グロサリを含めた全体でも約85%の伝票レスが可能という結果となりました。また、従来のJCAとの比較で95%の通信時間を削減できるという結果が出ています」と黒岩氏は成果を強調する。

 


共通インフラを一貫して提供する運用センターでドラッグストア業界の流通BMS導入を促進

 

 共同実証に参加した企業の中には、すでに実験段階から本番稼動へと移行している企業もあり、順次導入が進もうとしている。ただ、共同実証の流通BMSモデルは1対Nを採用しているため、小売側と卸側のそれぞれがVAN機能やセキュリティ機能を用意する必要がある。実証に参加した企業は大手のため1対Nモデルに対応できるが、中堅・中小小売企業の割合が高いとされるチェーンドラッグストア業界の普及を考える上では、導入の妨げになりかねない。

 

 こうした問題に対処するためプラネットでは、ドラッグストア業界共通の基盤を提供する標準EDIネットワーク(運用センター)の提供をこのほど開始した。従来よりプラネットのITシステム構築等を担当し、流通BMSに関する実績も豊富なインテックがシステム面でバックアップした。

 

 「当社が提供する運用センターは、VAN機能、セキュリティ機能、標準間(流通BMSバージョンの相違)の変換機能を一括して提供します。これにより、個別のEDIシステムを開発し運用する必要がなくなり、小売側、卸側共に自社システムと流通BMSとの変換機能を用意するだけで済みます。運用センターを経由すれば小売、卸はもちろん、さらにメーカー間とも効率的なEDIが最小のシステムコストで実現します。中小の企業はもちろん、大手にとっても、多くの取引先への個別対応が必要ないため運用センターを利用するメリットは大きいと思います」(黒岩氏)と解説する。

 

 この他にも、自社でシステムを用意するとなれば、24時間稼動、システム障害時の適切な切り分け、災害時のデータ保全やBCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)」などにも配慮する必要があるが、こうしたシステム運用の手間を一括して委託することで、運用コストを最小化できる。

 

 「現在、ドラッグストア業界は六月施行の改正薬事法への対応で大変だとおもいますが、この改正薬事法施行をきっかけにドラッグストアのあり方は大きく変化していくと思います。こうした変化の時代に向けて、運用センターを核に利便性を向上するサービスを拡大し、ドラッグストア業界の流通BMS導入に貢献していきます」と黒岩氏は今後の展望を語った。

 

 

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