ニューノーマル時代の 定番焼肉&お庭ごはん 売場提案で内食需要を囲い込む

 新しい生活様式が広がり、家庭で楽しむ食事の機会が増加している。消費者の心をつかむための「ニューノーマル時代の定番焼肉&お庭ごはん」について、食品コンサルタントの海蔵寺りかこ氏が提案する。

 

 

焼肉の動向を探る

 まず、この一年の焼肉関連商材の動向を振り返ってみたい(データコム社データより)。

 グラフ1は、焼肉用輸入牛肉の年代別購買動向を示している。20歳代では値ごろ感のある解凍ハラミの味付けが1位、その他の年代では定番のカルビ( バラ)が1位となっている。解凍ハラミは年代を追うごとに比率が下がり、代わりに生ハラミが上昇している。ただし60歳代以降になると、肩ロースとバラのセットものが伸びており、「おいしいものを少しずつ」というニーズを捉えているようだ。

 

 

 次に焼肉用の肉と一緒に買うものの傾向を、表1のリフト値で見ていく。リフト値とは、商品Aを購入した人が、商品Bも一緒に購入する確率がどれほど高いかを示す数値だ。一般的には2以上であれば、両商品の相関関係が高いとみなされる。

 

 焼肉のたれやサンチュなど、リフト値が高くなることが自然なもの以外にも、注目すべきものがいくつかある。まず、たこ焼きなどの「粉もの」やピザ関連など、「多人数での食事に向く商品」のリフト値が高い。また「ムニエルの粉」や「糀(こうじ)系調味料」も上位となっていることから、値ごろ感のある食材を、より軟らかくおいしく、かつ簡便に食べようと考える消費者群の存在が想定される。

 

 野菜関連では新ジャガ、アスパラガスなどが上位に入っている。これらを総合的に見ていくと、やはりホットプレートを家族で囲み、焼きながら楽しむスタイルが、定番として強いということがいえるだろう。

 

 

 

新スタイル・お庭で煮込み料理

 このように定番の焼肉でも相関関係の高い商品とあわせたアピールが可能だ。とはいえ、やはりニューノーマル時代らしい新しいスタイルも創出したい。そこで煙を出さず、大きな肉を豪快に調理できる「お庭ごはん」として「ブロック肉と野菜の煮込み料理」を提案する。

 

 BBQのように手早く焼いて楽しむだけでなく、鍋で少し時間をかけて、じっくり調理することで非日常感を演出できる。もちろん当日下ごしらえから始めてもいいのだが、「お出かけ気分」を満喫するために前日から準備するのも楽しい。「チャック付きポリ袋」で、肉に下味をつけて一晩寝かせてみよう。

 

 肉はうまみを存分に堪能できる「厚切り肉」を使いたい。臭みを消しうまみを引き出すハーブ類、野菜ならトマト、玉ネギ、セロリなど、それ自体がうまみを出すものに加え、ゆでたけのこ、アスパラガスなど、旬のものもあえて丸のまま使いたい。それらが一つの鍋の中で、お互いの長所を引き立たせるだろう。

 煮込み料理は待ち時間も楽しい。弱火で煮込む間、隙間からおいしそうな匂いがフワッともれ、「うーん、まだか」と食欲を刺激してくれる。そろそろかとふたを開けた瞬間、パーッと広がる湯気に思わず歓声が上がる。青空の下で食べればおいしさも倍増だ。

 

 

豊かさも演出する売場でありたい

 このような「お庭ごはん」のアピールも盛り込んだ売場は、どんな展開が望まれるだろうか。

 定番の焼肉商材が主力であることは間違いない。そのまわりに、厚切り肉、野菜、それらを引き立てる調味料やスパイス、チャック付きポリ袋などをそろえたい。もちろん食事を楽しく演出する飲料や酒類も種類を豊富に用意しよう。それらの売場をアウトドア感を押し出したデザインやPOPで統一すれば、消費者に新たな楽しみをアピールできるはずだ。

 ニューノーマル時代に消費者は今までとは異なる豊かさを求めている。バラエティーに富んだ商材をそろえ、心を豊かにしてくれる売場があるお店こそ、「わざわざ行きたくなるお店」として選ばれていくのではないだろうか。