日経MJフォーラム 「EC事例2019」 実践企業に学ぶ売上拡大の秘策

2019.7.19

記事概要イメージ画像

 電子商取引(EC)を巡る課題は、規模や商品ジャンル、システムや人員配置など企業によって様々だ。消費者を取り巻く環境の変化と顧客の需要に応えつつ売り上げ増を図るのは難しい。日本経済新聞社は6月中旬、ECを巡る課題を解決するためのフォーラムを都内で開催。豊富な事例を紹介し、EC活用へのヒントを探った。

  • 1

スペシャルセッション

LOHACOのeコマースオープンイノベーション

 

アスクル 

執行役員 BtoCカンパニー 

プラットフォーム本部 本部長

川村 勝宏 氏

 

 

共創で新たな価値を創造

 

 LOHACOは、アスクルの個人向けECサービスだ。顧客の購買プロセスはサイト内で実施されるデジタルマーケティングの領域とロジスティクスやデリバリーで実施されるサプライチェーンの領域がある。私たちは、その双方のオープンイノベーションを考えている。

 

 ビッグデータを活用した新たなマーケティング手法の研究と迅速な実践のため、2014年から「LOHACO ECマーケティングラボ」を設置。食品、日用雑貨、医薬品、システムなど140社が参加している。ラボでは、顧客データ、購買データなどを分析し、販売促進や商品開発などの実践につなげている。共創による新たな価値創造の実現だ。

 

 物流の世界は今、第4次産業革命の物流版ともいえる「ロジスティクス4・0」に向かっている。当社は、物流を大幅に効率化できる倉庫の自動化と配送の自社化を通じて、テクノロジーによるイノベーションを進化させている。

 

 最終的にはシェアリングによるオープンイノベーションで、生活者・社会にとって無駄のない便利なお届けサービス実現を目指している。

 

 

セッション

大手化粧品企業2社、ヘアケアのラサーナなどが狙う

ECプラットフォーム Amazon・楽天+ブランドEC戦略と参入事例

 

いつも.

グローバルEC事業部 部長

立川 哲夫 氏

 

 

デジタルシェルフを取れ

 

 当社のサービス領域は、ECでシェアとチャネルを拡大する「デジタルシェルフ・ソリューション」だ。

 

 ECでは、デジタル上の棚(デジタルシェルフ)をどう獲得するかが経営課題だ。現在、デジタルシェルフ獲得はプロ同士の競争になっている。知らないことがマイナスに直結する情報戦である。

 

 今年のテーマは、①楽天、アマゾン、ヤフーモールの完全攻略②Wowma!、Qoo10の活用③自社EC+交流サイト(SNS)の次世代モデルチェンジだ。

 

 大手化粧品企業の高級スキンケアブランドは、新規に参入した楽天市場において、広告枠、検索表示の両方でデジタル棚を獲得している。企業が取り組んだのは、モールのルールに沿ったファンづくりである。国内最大手の化粧品企業は、新商品をSNSで拡散やレビューを意識した消費者に受け入れられやすいパッケージ作成の工夫を行った。

 

 各プラットフォームのルール、商品特性を理解し、プロの運営担当者によってPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを着実に繰り返すことが大切だ。プロを活用したデジタルシェルフ獲得が成長のポイントになる。

 

 

 

セッション

アルペン、釣具のキャスティング、丸井の事例からみる、アプリで進化する購買体験とは

 

 

ヤプリ 

コミュニケーション部 マーケティングスペシャリスト

島袋 孝一 氏

 

 

アプリで変わる購買体験

 

ヤプリは、スマートフォンアプリを素早く開発・運用することができるアプリ開発プラットフォームだ。ファッション、スーパー、メーカー、ECなど導入企業は300社以上。アプリダウンロード数は3500万件で、月間2億7千万件のプッシュ配信をしている。

 アプリ経済圏は2021年には1390億円規模になるとみられる。アプリは非ゲームの時代に突入し、アプリ決済、インスタグラム上でのショッピング、動画配信をしながら物販を行うライブコマースなど、ショッピング新時代が訪れている。

 スポーツ用品販売のアルペンは、会員証をデジタル化し、公式オンラインストアなどを統合するプラットフォームとして導入した。

 丸井は、リアルで見てオンラインで買うショールーミングへの対応として導入。店舗で商品体験をし、QRコードを読み込んでECサイトで購入する流れがスムーズになった。

 釣り具のキャスティングは、商品情報や釣りにまつわる動画などコンテンツを一元化して提供している。いずれもプログラミング知識不要で運用できるのが特徴だ。

 

 

セッション

この手があったか! インテリア雑貨のダルトン、カタログギフトのリンベル事例に見る顧客視点の検索ナビゲーション改善

 

ビジネスサーチテクノロジ 

営業部 部長

石川 雅洋 氏

 

 

検索機能改善で離脱予防

 

 当社は主にサイト内検索サービスを提供している。導入事例のギフト販売サイトではフリーワード検索を強化。ふるさと納税のECサイトでは、グーグルアナリティクスの数値を基に「おすすめ順」が自動で表示される機能などを追加して好評だ。

 

 一般的なECの利用者アンケートでは、商品が見つからない不満が多くみられる。入力ミスしただけで検索結果がゼロになると、それだけでサイトからの離脱の原因になる。購買につなげるには、ユーザーと商品の接触機会を増やすことがポイントだ。

 

 当社が提供する「ポップリンク」は画像付き検索アシストツールで、検索キーワード入力時に候補語のほか、商品画像と詳細ページへのリンクを表示する。JavaScriptのタグ設置で実装可能だ。「ポップファインド」ではキーワード検索結果の最適化や絞り込みなど少ない操作で商品ページへ導くほか、類似商品の比較表示も可能になる。

 

 ランキングを自動表示する「ポップランキング」も提供している。使いやすい検索窓やランキング、比較機能などを使い、売り上げ向上につなげてほしい。

 

 

セッション

阪急交通社とブックオフコーポレーションの事例にみる

ECサイトの売上を向上させるための施策とその秘訣

 

アクティブコア 

代表取締役社長

山田 賢治 氏

 

顧客の好みを自動抽出

 

 当社はクラウド上でオールインワンのサービスを提供している。当社の人工知能(AI)エンジン「ピタゴラス」は見込み客発見、行動パターン可視化、顧客の好みを自動抽出するレコメンド機能などを備える。

 

 ECのトレンドは、顧客との接点データを数多く収集、行動を可視化してシナリオへ落とし込む流れになる。休眠顧客へのアプローチは1年も待たず、半年で行う方がいい。売り上げ向上には、顧客ごとにシナリオを作りメールを出し分けることも大切だ。

 

 旅行会社のサイトでは、トップページのレコメンドをパーソナライズ。マイページでは検討中、予約済みなど状況に合わせてレコメンドを変えることでクリック率も4倍になった。

 

 ニーズに合った商品提供は顧客満足度向上につながる。データが非統合で会員軸での分析ができないという課題があった中古販売・買い取りサイトでは、統合したデータをクラウドで管理し、会員データを可視化。メール内容も工夫してリピート客増加につなげた。

 

 業務効率化・PDCA高速化で効果・検証の時間を確保し、新しいことに挑戦すると他社に差をつけることも可能になる。

 

 

セッション

お客様とつながる差別化はどこに? 米のさくら屋 ゴルフギフトアスキューなど中小Eコマースの3つの戦略

 

フォースター 

代表取締役

川連 一豊 氏

 

 

接客・サプライズで差別化

 

 中小EC戦略のポイントは「データ」「ファンづくり」「おもてなし」の3つ。最も重要なのがデータをどう取りどう作るかだ。顧客とのつながりを重視したエンゲージメントでは、カスタマージャーニーを作成、作成後の検証・修正を加える。オムニチャネルやコミュニティーづくりも重要だ。

 

 おもてなしは、初めから最高を目指すのではなく、小さなサプライズを用意し、ホップ・ステップ・ジャンプで仕組み化することから始めるべきだ。例えばゴルフボールの名入れサービスのような工夫も大切だ。

 

 短期的な売り上げアップのために差別化しやすいのは人である。接客品質を上げる仕組みづくりや、商品のファン、コミュニティーづくりも大事。例えば影響力のあるインフルエンサーを使って彼らのファンになってもらうのも有効だ。

 

 インフラは意識的に上流から構築、セキュリティーはAIで行うと効率がよい。顧客の購入理由を知るには、購入最終画面にアンケートを設けるのも効果的だ。

 

 データを取ればデータを基にした斬新な発想が生まれやすくなる。コミュニティーから生まれる文化ができれば事業は安定する。

 

 

セッション

コメ兵など成長通販500社から学ぶ、CRMを成功させた共通点とは 

〜自社EC成長の必須テーマ:CRM/MAの失敗しない活用法〜

 

プラスアルファ・コンサルティング 

執行役員

カスタマーリングス事業部 副事業部長

山崎 雄司 氏

 

 

CRM施策数・実感が重要

 

 当社が提供するツールの強みはデータ分析・活用支援で、成長EC通販を中心に約500社の導入実績がある。EC市場にはデータがあふれ、顧客の好みも多様化、動きが捉え難い時代になった。慢性的な作業負荷やPDCAが回らないなど課題も多い。我々が提案したい解決策は、データを扱える環境の構築、データの見える化、MAを駆使した作業の自動化などだ。

 

 活用事例にリサイクルショップがある。ここではメールマガジン全配信から脱却、顧客接点の最適化を優先した。ECと店舗のデータ融合による接客力強化を進めることで成功している。某化粧品サイトでは、メール配信のトリガーを出荷日から配達完了日に変更することで顧客の状態を統一化。また、SMSを使いアンケート回収率を上げる効果なども出している。

 

 他社との差別化のポイントはテクニックから企画力に移行している。今後大切なのは、データを統合して顧客を定義し提供価値を磨くこと。顧客とのコミュニケーション、販促ノイズの抑制、顧客情報管理(CRM)を意識することなどだ。CRMの成功には施策本数と実感数の積み上げも重要だ。

 

 

セッション

ECでは「当たり前」のレコメンド、まだまだ工夫できます! 

伊勢丹オンライン、マガシークも実践する「レコメンド活用レシピ」

 

ナビプラス 

セールス&マーケティング部 アシスタントマネージャー

辻上 潤二朗 氏

 

 

画像解析レコメンドを開始

 

 EC事業者向けに、サイト内検索エンジンやレコメンドなどのツールを提供している。多くのECサイトがレコメンドを実装しながらも活用し切れていない。

 

 レコメンド活用には、ユーザーの好みに合わせたレコメンド表示、特定のブランドや価格に絞った表示等のロジックのポイントがある。デザイン、レイアウトなどのインターフェースも重要で、表示件数や枠数を増やすことなども効果がある。商品に限らず、読み物やブランドのレコメンド活用、さらにメールや実店舗など外部チャネルのレコメンド活用方法もある。

 

 当社はNTTドコモの技術「類似画像検索システム」を用いた画像解析レコメンド機能の提供も開始。ディープラーニング技術を活用して画像の特徴を解析、データベースから類似度の高い画像を高速に検出するシステムだ。

 

 ファッションECでは、種類、柄、色といった切り口で解析。例えばボーダー柄のシャツの画像で検索すると類似度の高い商品の画像を抽出するという具合だ。このサービスにより、サイトの利便性や購買率向上だけでなく、顧客の潜在的ニーズを引き出すことも可能になる。

 

 

スペシャルセッション

EC限定商品「キリン 生姜とハーブのぬくもり麦茶moogy(ムーギー)」開発秘話 〜暮らし起点で考える〜

 

キリンビバレッジ 

マーケティング部ブランド担当

寺島 愛子 氏、遠藤 楓 氏、嶺岸 秀匡 氏

 

 

 moogyは、「日常の暮らしに馴染む」をテーマにしたイベントに出品したのを機に商品化した健康ブレンド麦茶だ。ターゲットは30~40代の働く女性でEC限定販売。ボトルは四季ごとに絵柄が変わり、飲む生活雑貨と考えている。

 

 戦略としてスモールマスをつなげて価値を広げるコンセプトが基本にある。SNSやイベントで顧客との接点を増やし、ファン獲得に成功した。

 

 画像投稿SNSでは楽しさを伝え、ワークショップでは人気投票や贈り物のアイデアも募集する。インターネットラジオの配信など、開発者と顧客の距離の近さを強みにしている。

 

 SNS上ではmoogyならではの価値も浸透し、プチギフトや結婚式など様々な場面での投稿数も増加。ファンがSNSで発信し、徐々に広がることがSNS戦略成功のポイントだろう。「暮らしベース」「ファン第一」「探してもらえるブランド」の3つが最大の魅力と考えている。

 

 

 


<協賛>

いつも.、ヤプリ、ビジネスサーチテクノロジ、アクティブコア、フォースター、プラスアルファ・コンサルティング、ナビプラス

  • 1