日経MJフォーラム 「ロイヤルカスタマー戦略」 ~個客理解とデジタル強化で磨くビジネスイノベーション力~

2018.3.05

記事概要イメージ画像

 多様化する消費者の行動に対応するためにオムニチャネル戦略を進める企業が増えている。デジタル化が進む消費者に対応し、より多くのロイヤルカスタマー(忠誠心の高い顧客)を創出するのが目的だ。日本経済新聞社は2月9日、都内でロイヤルカスタマーをどのように創出し、そのために何を強化すべきかといった課題について考えるフォーラム「ロイヤルカスタマー戦略〜個客理解とデジタル強化で磨くビジネスイノベーション力〜」を開催。先進企業の取り組みを紹介した。

  • 1

オープニングセッション

オムニチャネル時代のマーケティング戦略

お客様との時間を共有する

新しいEC=Engagement Commerce

 

オイシックスドット大地 

執行役員 統合マーケティング部 部長 

奥谷 孝司氏

 

チャネルシフトがカギ

 楽天とウォルマート・ストアーズの提携が話題だが、背景には米アマゾン・ドット・コムの動きがあると考えている。アマゾンは顧客とのつながりを重視し実店舗を増やしている。オンライン店舗とオフラインの実店舗で顧客とつながるのがオムニチャネルだが、それを超えるチャネルシフトが重要なカギだ。

 

 アマゾンは「アマゾンダッシュ」「アマゾンGo」などレジのない新しい買い物体験を提供している。小売業では無人店舗のオペレーション効率向上に注目しているが、アマゾンなど米企業は実店舗というチャネルを販路としてだけではなく顧客との接点として活用している。

 

 接客が不要になるのではなく接客が高度化すると考えるべきだ。重要なのは顧客の購買行動のデータを把握しプロモーションを変えることだ。顧客は品物の選択と購入をネットだけで行うとは限らない。今後、オンラインを起点とした企業が実店舗で顧客を獲得する戦略が増えていくだろう。

 

 アマゾンは実店舗に並べた本に価格を付けず端末で調べる仕組みで、プライム会員と非会員で価格を変えている。アマゾンGoにおいてはアプリに登録されているクレジットカードアカウントとの連動で、センサー搭載の店内で、レジを通過することなく自由に買い物をすることができる。キンドルでどの本がどう読まれているかも把握している。顧客の読書体験を把握するためあえて実店舗を造りパーソナライズしている。

 

 このほか衣料レンタルの「ル・トート」は、定額で借り放題にし、買えば半額という商法だ。客が借りたものから何を着て何を着なかったのか好みのデータを取り、データの精度を上げる。日本ではゾゾタウンがゾゾスーツというサービスで似た戦略をとり始めた。

 

 同じくアパレルのボノボスは実店舗にはサンプルしか置かず、商品の在庫があれば店員の端末から購入し後日商品が送られてくるというシステムだ。購入後も顧客からデータを収集している。大量に商品を陳列するのではなく、もっと良い体験を提供する時代が来ているのではないか。買って終わりではなく、その先にある顧客満足度を見ていく必要がある。

 

 

セッション 1 

成功企業に学ぶロイヤルカスタマー育成手法

 

SCSK 

流通システム第三事業本部 流通・CRMサービス部 副部長

西谷 友宏氏

 

「忠誠度」測定が重要

 ロイヤルカスタマーを購入額上位者と考える企業が多い。だが、これに加えサービスや商品をどれだけ好きでいてくれているか、いわゆる「忠誠度」も高い顧客が真のロイヤルカスタマーだ。では忠誠度をどう把握し管理するのか。

 

 あるアパレル企業は、購入回数を増やすため実店舗来店客にもお礼や新着情報のメールを送付している。ECサイトではお薦め情報だけでなく買い忘れの確認メールも送り、カートに入れたが買わずに帰るいわゆる「カゴ落ち」を防ぐなどコンタクトの質を上げるよう努力した。

 

 ポイント施策では当初1年間としていた有効期間を3カ月に変更。失効前にプロモーションを増やしたり、誕生月限定ポイントを有効期限付きで贈呈したりするなど、来店頻度を増やす工夫で接客の質と頻度を上げた。

 

 ある飲料メーカーは、自ら商品を推奨し情報を発信してくれる顧客をロイヤルカスタマーと定義。顧客リストがないため、CMや雑誌などのキャンペーンでダイレクトに顧客とつながる会員組織を作り、メルマガやウェブの閲覧者にポイントを付与。貯まったポイントでプレゼントに応募できる仕組みだ。

 

 ウェブをポイント制と組み合わせることで商品への理解を深め忠誠度を上げる。こうした忠誠度を定量的に把握するには、イベント来場、交流サイト(SNS)でのコメント、アンケートや行動ログなどから測定する。この忠誠度と購入金額によりロイヤルカスタマーを管理できる仕組みが、SCSKの統合顧客基盤「eMplex」である。

 

 

セッション 2 

顧客接点・顧客価値をAI×機械学習×マーケティング

オートメーションで最大化するプラットフォーム

 

アクティブコア 

代表取締役社長 

山田 賢治氏

 

AIでマーケティング自動化

 機械学習を取り入れ、人工知能(AI)でマーケティング業務を自動化できる。電子商取引(EC)や販売時点情報管理(POS)のデータをクラウドに入れ、顧客行動を分析して可視化、メールやウェブを通じたレコメンドまでをオールインワンで行う。

 

 ニューラルネットワークで実店舗訪問、キャンペーンページ閲覧、メルマガ購読など顧客行動を分析するが、今まではデータの重みを人間が判定していた。ディープラーニングではネットワークを多層化し、複数の重みを計算に加えて誤差も考慮しながらデータを更新、正解率を向上させる。

 

 分析して終わりという従来の統計とは違う。 AIではデータから購入回数、来店時間、年齢や性別などの特徴から重要なデータだけを抽出できる。購買確率の高い顧客を抽出し、最適化した時間にメール配信することで開封率を高め、コンバージョン率を高めた。

 

 送料無料と500円オフではどちらがいいのかといった結果の優位性も自動で判断できる。レコメンドのマッチング率も向上した。自然言語処理を使用すれば、履歴がない新規の顧客に一致率の高い商材をレコメンドすることも可能だ。

 

 ウェブルーミングが大半で実店舗の顧客が多い場合は顧客の行動を予測。ウェブから実店舗に誘導するメールを配信し、10日以内の来店と購買につながった。アプリの行動を分析して広告を配信できる。プラットフォーム構築の際、顧客データ統合、分析とアクションの一体化、アクションの結果が学習されること、効率化・自動化が実現できることが望ましい。

 

 

セッション 3

ロイヤルカスタマーへの〝おもてなし〞を実現する自社アプリとは?

 

ヤプリ

マーケティング マネージャー 

佐藤 裕子氏

 

自社アプリでファンつくる

 当社は、「モバイル戦略を成功へ導くアプリプラットフォーム」をテーマに事業を展開している。当社のアプリ「ヤプリ」の特徴は「プログラミング不要」「直観的UIの管理画面」「クラウド型のサービス」の3つだ。

 

 アプリ業界全体ではダウンロード数が伸び、2016年に1473億件、20年に2843億件になる見通し。 AI、拡張現実(AR)、IoTなど次世代テクノロジーが組み込まれ、今後はアプリの時代を迎える。

 

 利用者数は、ウェブの方が3倍多く、滞在時間はアプリが20倍長い。それぞれの特性を生かし、新規顧客はウェブ、ロイヤルカスタマーはアプリでと使い分ける企業が増えている。

 

 アプリを使うときに押さえておきたい3つのフェーズは「集客↓アクティブ化↓ファン化」だ。集客とはダウンロード。顧客との接点を見つけ、壁紙、ゲーム、限定商品、先行予約、セールなどの仕掛けと合わせてダウンロード数を伸ばしていくことが重要。

 

 アクティブ化にはコンテンツがポイントになる。アクティブ率向上につながるコンテンツは、クーポン、ポイント、バーコード、スタンプの4つ。オムニチャネルの実現には、これらを押さえることがカギだ。

 

 ファン化には個人の興味や行動に合わせてサービスをパーソナライズしていくことが重要だ。アプリの場合、プッシュ通知が効果的で、「セグメントプッシュ」「リアルタイム行動プッシュ」「iBeaconプッシュ」「オートプッシュ」などがある。アプリ開発から運用までワンストップで引き受けている。ロイヤルカスタマー育成における自社アプリの可能性を探っていただきたい。

 

 

セッション 4

カスタマードリブン・マーケティングへの転換は現場から!

成功企業の取り組み

 

ビービット 

ソフトウェアサービス コンサルタント 

生田 啓氏

 

顧客視点でデジタル行動観察

 当社はデジタルマーケティングのコンサルティングやデジタルマーケティングのPDCA(計画・実行・評価・改善)支援を行うソフトウェアの開発、提供をしている。

 

 セッションテーマであるカスタマードリブン・マーケティングは、「お客様を見てマーケティングをしていこう」という本来、当たり前の話だ。その際、「どうやってデータをうまく使って顧客中心のマーケティングを実践していくのか」という視点が大切だ。

 

 デジタルマーケティングでは「いかにデータを整備するのか」に主眼が置かれることが多いが、成功している企業は少ない。一般的なデータ活用によるマーケティングは、分析スキルを持った人が分析した定量的な結果をもとに、効率的に施策を行う。だが、カスタマードリブンを実現するには、メンバー誰もが顧客を理解した結果をふまえ施策を行うことが重要だ。

 

 当社の提唱する「デジタル行動観察」という新しい分析アプローチでは、「データを1人ひとりの行動に分解して観察する」ことで顧客理解を可能にする。ユーザー情報とデジタル上の行動ログを組み合わせることで、顧客の姿が生々しく浮かび上がる。

 

 また、メンバーが理解した顧客の課題を社内でシェアすることで、大きな課題を発見できることもある。現場で発見した課題の種を収集する仕組みや、部門を横断した会議体を設計するとよい。チームでのフィードバックも数値だけでなく、顧客観点で行うことが大切だ。

 

 当社が提供するデジタル行動観察ツール「ユーザグラム」は、現場のメンバー誰もが使える仕様になっている。

 

 

クロージングセッション

どうやってお客様と向き合うか?機能から始めない、データ分析から始める

オムニチャネル構築からのロイヤルカスタマー成長戦略

 

ロクシタンジャポン 

デジタルマーケティング部 部長 

吉屋 智章氏

 

情報統合で複数のアプローチ

 「ロクシタン」は、コアターゲットの8割に認知され、「購入あり」は3 割、「購入なし」が4割を占める。一方、購入なしでもブランドに好意的な女性は約446万人と想定している。ビジネスモデルの方向性は「顧客情報管理(CRM)を活用して購買頻度を上げる」「新客へのアプローチを強める」の2つに絞った。電子商取引(EC)だけでなくリテールも含めた形で市場規模を広げるためオムニチャネル化へも乗り出すことになった。

 

 2014年当時、当社のECは顧客データ、リテールはPOSシステムを中心とした顧客データで管理し、データベースは一元化されていなかった。オムニチャネル化しようにもパーソナライゼーションや在庫の一元化へ向けたベースがない状態だった。

 

 そこで、データの量や質をビジネスモデルを軸に定義し直すことにした。その際、「誰もが正しいデータをベースに正しいビジネスアクションをとれること」としたが、立ち上げ当初は現場からの反発もあった。

 

 力を入れたのはデータ一元化のメリットを社内に説明することだ。その結果、課題が正確に把握され、その後のアクションがより効果的になると説明した。統合したデータを基にアクションを起こした結果、ECでは購入頻度がアクションを取ってないリテールと比較して12%向上する結果を出せた。現在は、ECでの成功パターンをリテールへ展開している。

 

 アドビのマーケティングソリューション「キャンペーン」がデータ管理、分析、アクションの起点だ。顧客の検索ワードをベースにサンプルを送付し、購入につながらなかった顧客にリターゲットしたところ、5倍の反響があった。

 

 ロイヤルカスタマーと新規顧客、アクティブな顧客とスリーピングの顧客、アクションの可否といった一人ひとりの顧客に寄り添ったビジネスモデルをつくる試みを進めている。ロイヤルカスタマーの購買ステップを洗い出し、新規顧客の類型化を行いながら、複数経路でアプローチしていきたい。

 

 

 

  • 1