流通効率化の推進とインバウンド需要獲得に向けた活動成果を報告 ~2015年度 製・配・販連携協議会 総会/フォーラム~

 大手消費財メーカー・卸・小売55社が参加する「製・配・販連携協議会」の活動と成果を報告する総会とフォーラムが、2016年7月15日、青山ダイヤモンドホール(東京都港区)で開催された。15年度は、従来からの加工食品ワーキンググループと日用品ワーキンググループに加え、インバウンドを見据えた商品情報多言語ワーキンググループが新たに活動を行ってきた成果について報告を行った。さらに、今年度から導入された「サプライチェーン イノベーション大賞」の発表と表彰も行われ、活気あふれる総会/フォーラムとなった。

 

実行フェーズに移ったワーキンググループの活動

 

 開会の挨拶に続き、経済産業省の商務流通保安審議官 住田孝之氏が主賓挨拶を行った。挨拶の中では5年間の協議会の活動を評価するとともに、今後の情報共有を進めていくうえで、製・配・販の連携が益々重要になっていくとの認識を示した。そして、16年に発生した外国のクレジットカードを使ってコンビニATMから10数億の現金が盗まれた不正引き出し事件の例を挙げて、カードや端末のIC対応の重要性を指摘。消費者の安全性確保のためにも今後の情報共有と対応への協力を要請した。

 

 続いて、主催者挨拶に立った流通システム開発センターの林洋和会長が、「これまで取り組んできた加工食品と日用品の返品削減が、単純な効率化やコスト削減という目的だけでなく、社会的要請からも高まりつつある」と話し、「これからは実行フェーズが重要になる」との認識を示した。さらに、訪日外国人の増加に向けた商品情報の多言語化も継続的課題であると語り、今年度実施した3つのワーキンググループ(以下、WG)の活動意義を理解して欲しいと呼びかけた。

 

加工食品WG報告

 

 加工食品WGでは、味の素 食品統括部長の羽賀俊弘氏が1年間の成果を報告した。

 返品削減は、製・配・販連携協議会の初年度から取り組んでいるテーマであることから、羽賀氏は「15年度は本格的な実行に向けた移行フェーズと捉え、加工食品の返品削減の手引書と、配送効率化の手引書をそれぞれ作成し、普及の加速に向けて新たなステップを踏み出した」と説明した。

 返品削減の手引書については、メーカー・卸売業4社と小売業9社の計13社のベタープラクティス(成功事例)を共有。それをもとに、「企業内の取組み」と「取引先との取組み」の2つに分けて整理したという。「企業内の取組み」では、まず意識改革・意識啓発が重要であるとの認識から、「経営層や役員の理解と意識改革や社内への継続的な意識啓発がポイントになる」と羽賀氏は語った。また、返品の実績を把握することも必要不可欠であり、経営と現場が情報を共有することの重要性についても訴えた。

 

 「取引先との取組み」についても同様で、羽賀氏は「関係者と情報を共有して各段階の発注・在庫精度を高めることで、残在庫の抑制につながっていく。また、納品期限・賞味期限についても事業者自らが過剰な鮮度志向を改め、納品期限を見直すことや、メーカーによる賞味期限の延長、賞味期限の年月表示化が有効である」と説明した。作成した手引書には取組み実施のチェックリストを付けてあることから、「各社で是非活用して欲しい」と呼びかけた。

 

 配送効率化の手引書についても、返品削減と同様にベタープラクティスの共有から始め、「配送ロットの拡大」「車両回転の向上」「物流経路の最適化」「モーダルシフトの推進」の4つに分けて整理して作成したという。

 

 今後について羽賀氏は「返品実態調査を進めるとともに、返品削減の方策の進捗についても確認していく。そして、15年度に作成した手引書の普及と利用促進を図りながら、返品削減と配送効率化の双方の取組みを拡大していきたい。そのためにも業界団体や関連組織と連携しながら業界全体で普及促進を進めていくことが重要だ」と訴えた。

 

日用品WG報告

 

 日用品WGでは、ライオン ヘルス&ホームケア営業本部 副本部長 兼営業統括部長 流通政策部長の加藤直樹氏が報告した。

 日用品の返品削減対策については、14年度に策定した返品削減と配送効率化の手引書を再検討し、内容の更新を行ったという。「企業内の取組み」には加工食品WGと同様、「意識改革・意識啓発」の項目を新たに追加。返品ルールを告知するポスターを作成し、小売りや卸売りの商談室などに掲示することで意識改革を促す方策を提示した。

 「取引先との取組み」については、発注・在庫を適正にコントロールするため「リニューアル商品の計画的な入れ替え」を項目に追加し、切替え時に返品が発生しないように計画的な在庫調整を進めると説明した。また、返品処理のコスト負担が大きなカテゴリーについては、返品をなしにする無返品制度を導入。「まずは無返品の徹底が実施しやすい紙製品と洗剤の2つを当面の無返品カテゴリーに設定して、段階的に進めていきたい」と加藤氏は語った。

 

 配送効率化の手引書についても加工食品WGと同様、メーカー・卸売業6社と小売業5社の計11社のベタープラクティス(成功事例)を共有。「配送ロットの拡大」「車両回転の向上」「物流経路の最適化」「モーダルシフトの推進」の4つに分けて整理した。

 

 「配送ロットの拡大」の拡大では、1回あたりの発注ロットを大きくすることで発注頻度を下げること、荷台の空きスペースをなくして積載率を高めることなどの指針を示した。「車両回転の向上」についても配送トラックの納品待機時間の短縮、帰り便を利用した引取物流による空車時間の短縮など、6つの対策を設定。「物流経路の最適化」についてもメーカーの工場から物流センターに直接配送する工場配送や、混載配送が有効であることを示した。「モーダルシフトの推進」では長距離・大量輸送には鉄道や船舶の利用を積極的に推進する方法もあると説明した。作成した手引書には取組実施のチェックリストが付き、各社が独自にチェックできるようになっているという。

 

 最後に加藤氏は今後について「引き続き返品実態調査を進めるとともに、手引書に基づく取組みを推進していく。そして、15年度に作成した手引き書の普及と利用促進を図りながら、返品削減と配送効率化の取組みを拡大していきたい。また、業界団体や関連組織と連携しながら業界全体で普及促進を進めていく」と語った。

 

商品情報多言語対応WG

 

 15年度に新たに立ち上げた「商品情報多言語対応WG」の1年間の活動について、花王グループカスタマーマーケティングの流通開発部グループリーダーの浜崎賢三氏が報告した。

 浜崎氏はまず「訪日外国人観光客は15年には約2,000万人に達し、20年には4,000万人、30年には6,000万人を目指している。旅行消費額に占める買い物の割合は35%を占め、今後大幅な増加が予想されるだろう。こうした中で、訪日外国人は言語の問題(説明や価格表示)で不満や不安を抱いていることから、商品情報多言語対応WGではこうした不満点を軽減する考え方をまとめることにした」と背景を説明した。

 実際の検討に際しては、既に多言語化を実現している小売業・製造業の研究や各種調査結果、有識者の講演内容などを参考にしたという。さらに、製・配・販が連携したインフラの構築・運用を検討し、実際にインフラを構築して実証実験を実行する計画を取りまとめることまでを実施したことを報告した。

 

 具体的には商品情報の多言語化を進めるための課題整理を実施。全体フローとしては、約15万件の商品情報が保存されている既存の「業界DB(プラネット、ファイネット、ジャパンインフォレックス)」をベースに、新たな「多言語対応用商品DP」を構築。加えて商品バーコードの読み取りと、多言語化対応済みのメーカーのHPからも商品情報を取得して商品情報DPを強化していくとした。浜崎氏は「完成した商品情報DPに蓄積された商品情報は一般に公開し、業界アプリや小売業者が作成する個別アプリや、小売業の店頭端末などで利用できる流れを作っていきたい」と語った。

 

 次に、商品情報多言語提供を進めるうえでの課題を整理。必須項目の初期設定として言語は日本語と英語が必須であること、対象アイテムは外国人観光客の買物対象商品分類を優先することなどを定め、データアクセス方法にはGTIN(JAN/EAN/UPCコード)を基本としたという。また、ガイドラインを作成するために実証実験を実施することとし、16年6月から要領の作成に入っていることを明かした。浜崎氏は「実証実験は、協賛の小売事業者2、3社の数店舗で、実験店舗の全商品を対象に実施する予定だ。まずは16年9月から10月にかけて第1クール、16年12月から17年2月までで第2クールとして17年4月からは実運用に移行していきたい」と語った。

 

 商品情報多言語対応WGは、基本的な考え方の策定が終わった15年度の活動で終了するが、今後は実証実験参加企業による有志企業が活動を継続し、ワーキングメンバーを募集しながら進めていく方針を示した。実証実験には16年6月末時点で小売業・卸売業・メーカーを含めて17社が参加を表明しており、日本OTC医薬品協会や日本TCGFほか各種団体の協力も受けていくとしている。

 

 今後について浜崎氏は「実証実験に参加する有志企業を継続的に募集しながら、実運用に向けたマスター登録や収益モデルの検討を進めていきたい。さらに、実証実験を実施するためのデータプール環境の開発と実験店舗の選定、評価基準の策定などを進めていく」と語り、「フィジビリティ・スタディ・プロジェクトでよりよい成果が出せるよう継続して進めていきたい」と訴えた。

 

「サプライチェーン イノベーション大賞」をイトーヨーカ堂が受賞

 

 続けて、製・配・販連携協議会の今後の運営体制について、流通経済研究所専務理事の加藤弘貴氏が説明。16年度の方針として、「加工食品WG・日用品WGの活動は普及期に入った。今後は業界団体等と取組内容を共有し、普及啓発に力を入れていく」と語った。また、商品情報多言語対応WGが策定した指針に則り、商品情報多言語のフィジビリティ・スタディ・プロジェクトを進め、製・配・販が連携した共通インフラの構築・運用のあり方を具体的に検討していく考えを示した。

 最後に、15年度から設けられた「サプライチェーン イノベーション大賞」の表彰式が行われた。「サプライチェーン イノベーション大賞」とは、協議会活動の活性化、加盟企業のモチベーションを図るために、優秀な取組みを年度総会で表彰するもので、協議会加盟企業から選ばれる。各社からエントリーされた内容は、事務局と有識者から構成される表彰選考委員が、「新規・創造性」「継続性・課題克服性」「業界への啓発・普及効果」「協議会への貢献度その他の事項」の4つの基準で審査し、平均得点の最も高かった企業を大賞、得点の高かった企業の中から複数を選んで優秀賞とするものだ。

 

 その結果、15年度は大賞にイトーヨーカ堂、優秀賞に花王グループ、国分グループ、マツモトキヨシグループの3社が選ばれた。大賞を受賞したイトーヨーカ堂の亀井淳社長は表彰後「受賞を励みにムリ・ムダ・ムラをなくし、消費者の利益、さらには国益に貢献していきたい。そして今後も製・配・販連携協議会で培ったチームワークをベースに課題解決に取組みながら流通業界を発展させていくことを約束する」と挨拶した。

 それに続いてイトーヨーカ堂 物流企画開発部 マネジャーの大谷貴史氏が大賞を受賞した「イトーヨーカドーの物流効率化への取組み」を紹介した。同社では、ビールメーカー、帳合卸、飲料・菓子メーカーと連携して納品期限と販売期限を緩和し、低回転商品のセンター集約在庫を実現することで返品を削減。さらに、センター再編とそれに伴う配送・作業スケジュールの変更、商品調達における車両積載アップや個あたり配送単価の低減などによって配送を最適化したという。大谷氏は「今後はセブンイレブンとの協業体制、さらには7&iグループ各社との連携強化によって効率化を目指していく。そしてゆくゆくはグループの枠にとらわれず、サプライチェーン全体の最適化が図れるよう、各社との協力体制を図りたい」と語った。

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