日経MJフォーラム「インバウンド消費をつかめ! ~訪日客3000万人時代に向けて~」 ICTをフル活用し来日客の心をつかむ

2016.3.25

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 昨年の訪日客数は過去最高の1973万人超を記録し、今年1~2月の累計推計値で前年比43.7%増の374万人(政府観光局)。3000 万人という新目標に向け幸先の良い滑り出しとなった。訪日客によるインバウンド消費は昨年1年間で約3.5兆円。その取り込みは企業成長のビッグチャンスでもある。さきごろ開催された「インバウンド消費をつかめ!~訪日客3000万人時代に向けて~」(主催=日本経済新聞社、特別協賛=サトーホールディングス、ヴィンクス、フォースター、協賛=ユーシーカード)の模様を報告する。

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基調講演① 沸騰するインバウンド市場攻略のポイント

やまとごころ 代表取締役 村山 慶輔氏

 

素材をパッケージ化し売れる商品に仕立てよする 

 

 ポスト2020年を不安視する声があるが訪日客数は減らないとみている。訪日の動機は買い物や食事、観光であり、突き詰めれば日本人の気質、製品、生活に外国人は興味を持っている。その意味では、特色ある伝統文化などをもつ地方にも大きな可能性があり、すべての産業にチャンスがあると考える。

 

 ただ、インバウンド市場を攻略するには「変化」を知っておく必要がある。一つは、訪日客の多様化だ。訪日客の約6割はリピーターであり、そのうちの16%は10回以上訪日している。リピート率が高まるにつれて、趣味や好み、訪問先は変わる。

 

 訪問客の国や宗教も多様化している。最近目立つのはイスラム教徒だが、インド、ブラジルなどの南米からの訪日客増大に向けた取り組みをしているところもある。所得層の幅も広がっている。LCCが台頭し、静岡空港は昨年だけで国際便の中国路線が10倍以上になっている。

 

 訪日目的も多様化しており、いまやマスマーケティングは通用しない。テロや事件、伝染病でも訪日客の動向は変わる。最新情報をアップデートするとともに、「儲(もう)かる仕組み」づくりが急がれる。

 

 買い物は高級品から日用品へ、そして「メード・イン・ジャパン」ブランドに移りつつある。一方、モノからコトへのシフトも鮮明だ。訪日目的で一番伸びているのは「体験」だ。スポーツ観戦や文化体験、日本人との触れ合いなどを目的とする人が増えている。

 

 コンテンツからプロダクトへのシフトも始まっている。コンテンツとは自然や人といった「素材」だ。地方に行けば海の幸、山の幸があり温泉もある。だが、それだけではお金が落ちない。重要なのはパッケージ化して商品化することだ。外国人に売れるものに仕立てる、編集することが必要だ。いい素材は山ほどあるが、それらをいかに売れるプロダクトにするかなど、人材育成も含め、中長期的な視点でインバウンド市場に取り組むことが何より重要と考える。

 

 

基調講演② インバウンド対策のカギはガイジン目線!

ジープラス・メディア ゼネラルマネージャー  キエロン・カシェル氏

 

外国人視点でのテーラーメードのコンテンツ提供

 

 インバウンド市場は市場規模が大きいというだけでなく、非常に洗練されたターゲット層が特徴だ。質の高いマーケティング戦略とコンテンツが必要不可欠であり、国内向けのキャンペーンを英語に翻訳するだけでは時代遅れといえる。マーケティングを成功させるには、ターゲット層を正確に理解し、彼らの好む戦略を実行し好まれるコンテンツをつくることがポイントだ。ターゲット層を理解するには市場調査が有効だが、外国人を一律に捉えず、出身国やバックグラウンドによってアプローチが変わるのはいうまでもない。

 

 コンテンツ開発では、外国人による外国人のためのコンテンツ制作が大変重要だ。日本人が書き上げた文章をそのまま翻訳しただけでは意図が伝わらず、むしろ外国人の情報収集意欲を失わせるリスクさえ伴う。

 

 ある自治体では、日本人目線で制作した地域の魅力を英語に翻訳してSNS(交流サイト)で発信していたが、反響が低いことが課題だった。そこで外国人目線の内容に変更するよう当

社が提案・制作したところ、大きな反響を生むようになった。

 

 この自治体には有名な観光スポットもあるが、日本人とは違う切り口、外国人目線で投稿してイベントへの集客などを呼びかけた。外国人は日本人の良さに非常に魅力を感じているため、地域住民や商店街の店主にフォーカスするなどして好評を博している。

 

 ジープラス・メディアは1999年に在日外国人向けの英字・生活情報サイト「ガイジンポット」を立ち上げ、現在は英字ニュースサイト「ジャパン・トゥデイ」を含め、5つのウェブサイトを運用し、様々な情報を英語で発信している。外国人視点でのターゲット層に合わせたテーラーメードのコンテンツを提供することにより、「ジャパン・トゥデイ」は月間400万ページビューに達している。さらにSNSを組み合わせることで、多くの潜在顧客に訴えられる。こうした点をインバウンドマーケティングに役立ててもらいたい。

 

 

特別講演 日本のグローバル化と東京オリンピックにむけて

内閣府本府参与  斎藤 ウィリアム 浩幸氏

 

ネットワーク化で付加価値を高めることが不可欠

 

 毎年ダボス会議に参加して感じるのは、日本は世界から大きな注目を集めているということだ。欧州は難民問題を抱え、米国は大統領選で迷走している。中国経済は先行き不透明感が漂っている。それに対し日本は、社会が安定しており治安もいい。日本にいると気づかないが、世界から見ればこれは非常に珍しいことだ。それがまた、様々に日本への興味を持つ外国人が、訪日観光する際の大きな動機にもなっている。

 

 ただ、課題もいくつかある。特に指摘したいのは、マーケットが劇的に変わってきたことへの対応だ。世界第1位の広告代理店は広告制作経験のないフェイスブックであり、同じく世界第1位の小売店は在庫を持たないアリババだ。こうした変化は随所に表れている。日本企業にはイノベーション、グローバル化を加速させ、真の意味で生産性を向上させる必要がある。指数関数的に進化する半導体産業におけるムーアの法則は、あらゆる産業に及んでおり変化は急だ。

 

 訪日客が増大し、消費額も膨らんでいる現在は、インバウンド市場に参画する企業にとってまたとないチャンスだ。ただし、どのような製品も時間とともにパーツ化しやすく、インバウンドでも同じことが起こる懸念がある。このため、サービスをパーツで提供するのではなく、ネットワーク化して付加価値を高めることが重要だ。

 

 そこでポイントになるのが、ICT(情報通信技術)の活用だ。在庫を持たない企業が世界1位の小売店になったのもICTを活用したからだ。

 

 医療観光を例にとれば、これまで単体で存在していた家電業界と医療業界をつなぐネットワーク化が重要になる。インバウンドでいえば、タクシー、小売り、ホテルなどをネットワーク化して付加価値を高めイノベーションを起こしていくといった試みが重要になっている。2 0 2 0 年に向けて、これまでにない発想でインバウンド市場に臨んでほしい。

 

 

プレゼンテーション① 「インバウンド」×「おもてなし」×「プレゼンテーション」

サトーホールディングス 執行役員 最高マーケティング責任者(CMO) 小玉 昌央氏

 

おもてなしや安心安全サービスの充実不可欠

 

 今年2月、春節で訪日した複数の中国人観光客に取材したところ、訪日を楽しみにしている半面、不安も抱いていた。消費傾向はいま、モノからコトへと広がっているが、美容や医療サービスをどこで受けられるのかが分からない。レストランではなく食券で簡単に食事のできるところが分からない。それ以前に中国語が通じないのではないかといった不安を訴える声が多かった。

 

 中国人客に限らず、今後はさらに多くの国から訪日する人が増えるだろうが、日本全体でみると言葉などおもてなしの準備がまだ不十分だ。こうした不備に対して、当社はすでに複数のソリューションを提供している。

 

 その一つが、消費税免税店の現場を支援するシステムだ。免税店ではパスポート提示や免税書類の作成など、煩雑な手続きが求められ物販以外に8分程度かかる作業が生じる。当社システムを活用すれば、1〜2分に短縮できる。

 

 言語対応では昨年末に、新サービスを開始した。QRコード入りのシールを商品などに添付し、客がスマートフォン(スマホ)でQRコードを読み込めば、多言語による説明が画面に表示される。このほか食に関するアレルゲンや宗教禁忌のある客に対し、原材料をピクトグラムで表示するフードピクト・サービスも始めた。今後は街全体で情報を提供するサービスをはじめ、災害時の緊急情報提供手ぶらで買い物や観光を楽しめるサービスの提供にも取り組んでいく。

 

 おもてなしとプロモーション、そして何より安心安全であること。それらを感じてもらうことが、インバウンド消費を取り込んでビジネスを加速させると考えている。

 

 

プレゼンテーション② デバイスいらず、今すぐインバウンド決済! 〜SoftWareCATで実現するインバウンド決済〜

ヴィンクス 執行役員 デジタルサービス事業本部 副本部長 稲葉 将氏

 

導入済みのPOSで多様なカード決済が可能

 

 免税店をはじめとするリアル店舗での決済シーンで大きな力を発揮するのが、当社の「SoftWareCAT」だ。これは各種決済サービスとPOSシステムをつなぐソフトウエア製品。最小限の端末で低コスト化、省スペース化を実現するとともに、導入済みのPOSですべての入力ができ、レジ担当者の負担が軽減できる。これまでPOSといえば大きな筐体(きょうたい)のイメージだったが、近年、エステなどのサービス業ではタブレットやスマホによる決済が可能なところが増えている。こうした決済でも導入可能だ。

 

 このソフトはPOSシステムと連動する仕組みのため、非連動型でみられる決済端末とPOSへの二重入力が不要となり、入力ミスを減らせる。POS画面で決済に必要な操作をすべて簡単に行うことができ、クレジットや電子マネー、さらに中国の第三者保証決済アカウントであるアリペイや銀聯カードなどにも対応できる。新たなハードの導入も必要なく、レジ周りをすっきりさせることが可能だ。

 

 店側にとっては、マルチ決済のツールを手にすることで売り上げ増が期待でき、コスト削減が可能になる。客側からすれば、カードなど保有する決済手段を使えるメリットがある。2020年に向けて、様々なサービスや海外の新たな電子マネーの上陸が予想されるが、バージョンアップによって決済手法は追加できる。

 

 当社ではこのほか、パートナー企業とともに同時通訳など、訪日客に対する店舗の接遇サポートも始めた。決済を核に、これからも多くの企業とともにインバウンドビジネスに取り組みたい。

 

 

プレゼンテーション③ インバウンド・越境EC プラットフォーム 〜多言語、多通貨決済 レスポンシブデザインWebAPI Webマーケティングから物流までを一気通貫でサービス〜

フォースター 代表取締役 川連 一豊氏

 

手軽に20以上の多言語・多通貨決済が可能

 

 インバウンドとともに、今後の市場拡大が期待できるのは越境ECだろう。海外ではすでにグローバルECサイトで買い物をするのは日常的だ。欧米、中南米などの人は、包丁や砥石なども購入している。

 

 インドではスマホ、中国ではSNSの口コミをチェックして越境ECで購入するケースが多い。日本ではこれからだが、経済産業省では2020年には1・7兆円に達する市場と予測する。

 

 越境ECではシステムの多言語化や配送、多通貨決済など様々な問題をクリアする必要があるが、当社の提供する「トーキョーエクスプレス.JP」を活用すれば手軽に実現できる。個人客に売ることもできるし、プラットフォームとしても利用可能だ。

 

 個人向けには「インバウンド・越境ECデータベース」に当該商品のデータを入れるだけ。商品のテストマーケティングにも使える。企業規模や業種業態を問わず、一部プロモーション課金はあるが、それ以外は無料だ。出品、出店もでき、マーケティングから物流、コールセンターも用意している。

 

 プラットフォームとしての利用では、20以上の多言語・多通貨決済が可能だ。一気通貫でサービスを提供できるのが一番の特徴だ。

 

 日本には優れた製品を持つ企業が少なくないが、海外販売をしていないケースも多い。これから海外展開を考えている企業もあるだろうが、まずはトーキョーエクスプレス.JPを活用して、どの国でどんな商品が売れているかをチェックすることを勧めたい。プラットフォーム化して事業展開する方法も検討してほしい。

 

 

プレゼンテーション④ カードビジネスにおけるインバウンド戦略について

ユーシーカード 執行役員 加盟店企画部長 林 和芳氏

 

多様な決済や電話通訳など多彩なサービス提供

 

 当社調査によると、訪日客は決済に関してカードや自国通貨の利用を望んでおり、言葉の不安を抱えている。こうした要望に応えるのが、当社の3つのインバウンド向けサービスだ。

 

 一つは「銀聯カード」への加盟だ。銀聯カードの発行数は50億枚にも上るほど、中国人に浸透している。中国人訪日客は特にモノの消費から娯楽、体験へ、大都市圏から東北など地方へとシフトしつつある。銀聯カードへの加盟で彼らの消費を取り込むことが可能になる。

 

 2つ目は、多通貨決済(DCC)だ。これはカード会員の自国通貨で決済できるもので、2008年に当社が日本で初めて導入した。DCCが利用できるのは、現在マスター、ビザのブランドのついたカードだが、米ドル、ユーロ、豪ドルなど30通貨が利用できるため、利便性が極めて高く、会員・加盟店に好評である。

 

 3番目は、UC電話通訳サービスだ。店頭から専用の通訳ナビダイヤルに電話すると、担当者が店舗担当者に代わって接遇する。

 

 訪日客にとっては、安心して買い物などができるメリットがある。現在対応しているのは英語、中国語、韓国語だが、今後はさらに多言語化を図っていく。本サービスの導入により言語問題による購買機会損失の防止のほか、適切な商品説明による購買単価の向上などが期待できる。

 

 当社では店舗に来た外国人顧客の声を集約してお店に還元するサービスを実施しているほか、免税対応サービスなどの導入も検討しており、今後とも質の高いサービス提供により加盟店の売り上げ増大に寄与していきたいと考えている。

 

 

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