普及が遅れるB2B ECの現状と今後の展望

2019.12.10

株式会社Dai
取締役
B2BソリューションDiv. マネージャー

鵜飼 智史氏

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 業務効率化や販路開拓を期待できるB2BのECが注目を集めている。その一方でB2C向けのECサイトと比較すると、B2B向けのECサイトを導入し、自社の販売に生かしている企業はまだ限定的だ。企業のB2B取引のEC化の現状と、今後の普及へのポイントを、国内での運用実績トップを誇るB2B ECプラットフォーム「Bカート」を運営する、株式会社Daiの鵜飼 智史氏に話を聞いた。

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導入が進んでいないB2B取引のEC

 我が国でもGAFAの一角を占めるAmazonや、楽天、Yahooショッピングなど、B2C市場におけるECの存在感はかなり高まっています。その一方で、B2B市場におけるECの普及、とくに中小企業への導入はまだまだ進んでいないと言わざるを得ません。当社のB2B ECプラットフォーム“Bカート”は、おかげさまで国内での運営実績が1位とされていますが、それでも導入企業は600社ほどで、発注企業は30万社程度です。日本には約359万社(中小企業白書2019)の中小企業があると言われていますので、B2B取引をEC化している企業はほんの一握りだということがわかるかと思います。

 

 

普及を阻むのはこれまでの常識?

 これまで、B2BのECプラットフォームというと、パッケージをカスタマイズしたり、フルスクラッチで開発する、つまり「作る」ことが常識でした。しかし、あまりにもコストがかかりすぎて中小企業にとっては負担が大きすぎます。これが普及を阻む1つ目の理由だと考えています。この点、クラウドサービスの多くは、既成のシステムを「使う」形です。開発やカスタマイズをしないので、開発コストがかからず、定額制のサービスもあるので、初期コストを抑えることができることから、中小企業に向いていると言えるでしょう。

 

 ところが、そのクラウドサービスの導入につまずく点があります。それはカスタマイズです。先に述べたとおり、クラウドサービスの多くはカスタマイズを想定していません。ところが日本の企業の多くは、カスタマイズを求めてきます。当社のサービスを導入検討されるお客様からもカスタマイズがどこまでできるのか?というご質問をいただくことも多いです。

 

 それに対する当社の答えは「No」です。カスタマイズ対応をしないことによって中小企業でも採用しやすい料金体系が実現でき、結果としてスモールスタートすることができるのです。

 しかし、自分たちの業務は特殊でカスタマイズができないとEC化できないと思いこんでいる企業も少なくありません。

 

 

EC化が業務改革を進める

 さきほど、Bカートではカスタマイズ対応をしていない。と述べました。

実はご相談を受けるカスタマイズ内容のほとんどが、その機能は本当に必要であるかどうか、定かではないものであることが多いのです。

 

 このような相談を受けた場合、「本当にそれは必要なものなのでしょうか」と伺うと、「顧客とはこのやり方でずっとやってきたから」とか、「社内のルールがそうなっているから」と言われることが多々あります。

 

 ところが、第三者の視点から見ると、そのカスタマイズが必要な業務とは、往々にして効率を悪くしている業務であることが大半です。そして、その業務は面倒だと考えていたりします。つまり、顧客側でも、社内でもだれも幸せになっていない業務フローやプロセスをわざわざカスタマイズによって追加しようとしているわけです。

 

 ECに限らず、多くのクラウドサービスは「ベストプラクティス」、つまりその業務を最適に遂行するフロー、プロセスで構築されています。したがって、従来のような「システムを業務に合わせる」のではなく、「業務をシステムに合わせる」ことによって、業務効率化を図ることができるのです。これこそがクラウド化、EC化の鉄則です。

 

 EC化をきっかけに、顧客や社内で取引に関する業務のあり方をしっかり話し合い、見直してみてください。コストをかけずに、効率の良いB2BのECサイトが導入できるはずです。

 

 

EC化100%をいきなり目指すのではなく、少しずつECへ移行していく

 EC化においてもう一つ間違った「認識」として、一気にすべてをEC化しないといけない、と考えられている企業が多いように感じます。本当にそうなのでしょうか。

 

 これも答えは「No」です。

例えばこれまでFAXや電話で受注していた取引先が、明日からいきなりECサイトで発注することができるでしょうか。それこそ、すべての顧客にいきなりのEC化を強制するのは無理があります。

 

 しかし、先程も言いましたように、FAXによるやり取りに対して潜在的な不満を持つ取引先も少なくないはずです。そのような顧客は徐々にECに移行してくれるはずです。その数が増えていけば、従来受注にかけていた人員がより生産性の高い仕事に取り組むことができるようになり、業務効率化、コスト削減ができるはずです。

 

 他方、EC化することによって、従来の業務フローでは取引がなかった・できなかった新規の販路開拓を期待することもできます。

 

 このようにEC化の効果測定は、既存顧客の取引業務効率化と、新規販路開拓の両面で評価すべきでしょう。両方が年々増加していけば、利益率を改善しながら売上を上げるということはそう難しくはないと考えています。

 

 

この5年でECを取り巻く環境は大きく変わる

 まだまだ普及が進んだとはいい難い我が国のB2B ECですが、いくつかの要因により、この5年間で大きく普及が進むと予測しています。

 

 一つは2023年に導入される「インボイス制度」です。2019年10月の消費税増税とともに、導入された軽減税率制度を踏まえて、2023年10月から売り手が買い手に対して消費税率ごとに税額計算を行って、書類で伝える必要が出てきます。こうなると、いちいち手で計算していては煩雑すぎるので、システム化をせざるを得ません。

 

 さらに2024年には、EDIで多く使われているISDNのサービスが終了します。つまり、何らかの形でEDIに変わるシステムが必要となってきます。これまでの延長線でインターネットを使ってEDIを行う導入する企業もあると思いますが、これを期にオープンな取引が可能となるECに移行する企業も増えてくるのではないかと見ています。

 

 また、2025年には2025年問題として知られるSAP ERPの保守終了問題があります。SAPを導入している企業にとっては、ECを含めた基幹システムの見直しを行わなくてはなりません。巨大なシステムをカスタマイズして導入するよりは、クラウドサービスを組み合わせ、APIでデータ連携するようなシステム構成に移行する企業も増えてくるのではないでしょうか。

 

 このように、ポスト2020年の5年間はECにとって大きな変革期が来ると言えるでしょう。

 

 

課題にしっかり向き合い、すぐに行動に移すこと

 大企業に比べIT化が進んでいない中小企業ですが、必要な情報をうまくキャッチアップできていないだけで、必要性を判断すればすぐにアクションをとることができるのも中小企業だと思います。既存の商習慣や慣習を言い訳にせず、しっかり向き合い、すぐにB2B取引をEC化することが、企業力の向上と今後の発展に繋がると思います。

 

 最後に、当社の顧客の事例を紹介しましょう。

創業100年を超える衣料品メーカーであるその企業では、FAX受注からEC化を行いました。取引先には街の衣料店も少なくなく、それこそシニア世代が店主をやっている店もありますが、B2B ECの導入に際して全面的なサポートを行いました。

 

 ある地方の街の衣料店店主である高齢の女性から、FAXで注文できなくては困るとクレームを受けたので、担当者がPCのセットアップからブラウザの使い方、そしてB2BのECサイトのブックマークまでおこない、発注方法も指導。その後も電話サポートを行うなどして対応するうち、ECサイトからのオーダーが来るようになったそうです。

 

 このようにしっかり向き合うことで、古い商習慣が残ると言われる業種でもEC化を実現できます。

 

 まだB2B取引のEC化に躊躇している企業の方々。ぜひ、うまくECを活用して、業務改革と販路拡大を実現してください。

 

 

 

 

 

 

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