飲食店経営の課題解決!  価格以上の価値で勝負する時代こだわりの見える化がポイント

2017.5.24

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 飲食業界全体の景況感は、決して悪くないとみられる。その一方で、求人難や人件費の高騰は続いており、飲食店にはさらなる経営の効率化や生産性の向上が求められている。繁盛している飲食店の共通点やIT(情報技術)ツールの効果的な活用法などについて、中小の飲食店を中心にコンサルティング活動を展開している飲食店繁盛会社長の笠岡はじめ氏に話を聞いた。

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分かりやすさが大切

 繁盛店に共通するキーワードは「分かりやすさ」です。その店舗のコンセプトや看板商品、価格体系などがお客様にとって分かりやすいことが基本です。
 
 分かりやすさに加え、お客様が「知っている店になる」という考え方も大切です。なぜなら今の時代は情報が多すぎるため、お客様は情報を読む前に情報遮断をする傾向にあるからです。
 
 例えば、飲食店がチラシを送ったとします。数年前であれば、キャッチコピーを工夫して本文を読みたくなってもらう流れでしたが、今はキャッチコピーを見る前に捨てられてしまうことが多くなりました。これが情報遮断です。しかし「知っている店」になれば、情報遮断される確率が低くなります。
 
 そのためには交流サイト(SNS)でよく話題になる、SNSの広告をよく目にするなど、継続的に情報発信をすること、また、ホームページやブログなどのオウンドメディア(企業自らが運営するメディア)を使いこなすことも今後は重要になってきます。
 
 節約志向の高まりが指摘される中でも、自分が価値を感じられるものには惜しまず対価を支払うというのが、最近の消費者の特徴だと思います。飲食店も価格以上の価値を生み出し、それを分かりやすく顧客に伝えている店舗は支持されています。企業規模の大小を問わず、価値で勝負する時代になったといえるでしょう。
 
 顧客に伝えるべき価値を発見するためには、「素材」と「製法(調理方法)」に注目するのがポイントです。地元の野菜や○○産の豚肉を使っている、○時間かけて煮込んでいる、ドレッシングを手作りしている、焼き鳥の串を店舗で刺しているなど、従業員とメニューブックを広げて一つひとつの事実を確認していきます。飲食店にとって当たり前の事柄も、お客様にとっては高く評価すべき価値であることは少なくありません。
 
 それに加えて、古民家を再生して使っている、夜景が素晴らしい、個室が多い、大箱で大人数の宴会に対応できる、三ツ星レストラン出身のシェフが腕をふるうなど、その店舗ならではの独自性も挙げていきます。「素材」と「製法」「独自性」という3つの視点から店舗のこだわりを見える化することが、お客様に伝えるべき価値を発見することにつながります。

 

 

ネットを活用

 人手不足は、依然として大きな経営課題です。営業時間を短縮したり、休業日を増やしたりする飲食店も増えてきました。
 
 人手不足の時代に利益を確保していくためには「ツールでできることはツールでやる。ITで自動化できるところはITを活用する」ことがポイントになります。
 
 例えば多くの来店客が目を通すメニューブックは、従業員がきめ細かく説明できない場合でも、店舗の特色や価値を分かりやすく伝えられる強力なツールです。作り方を工夫すれば商品のオーダー率を調整することもでき、オペレーションの改善や粗利益アップにつなげることも可能です。
 
 ホームページを使いこなすことも大切です。特に地方は大都市圏ほど競合が多くないこともあり、オウンドメディアによる情報発信は集客などに大きな威力を発揮する傾向にあります。
 
 例えばある飲食店は、自店の価値を分かりやすくアピールするためホームページをリニューアル。口コミサイトの評判を見てホームページを確認し、来店を決めるという顧客の流れができ、新規客増を達成しました。
 
 ほかの飲食店はマスコミ向けに情報を発信するサイト、お取り寄せ需要に応えるための通販サイト、観光客を意識してスマートフォン(スマホ)での閲覧に最適化したサイトなど、目的に応じて複数のホームページを開設。各チャネルと現場が有機的に連携することで相乗効果が生まれ、店内・店外売り上げの増加に成功しています。
 
 タブレット(多機能携帯端末)などに導入して使う予約台帳システムを利用する飲食店も増えてきました。書き間違いや二重予約などのミスが減り、従業員の負担が軽くなったという声はよく聞かれます。予約業務が省力化できたことで、集客や接客、新しい企画の立案などに力を入れられるようになったという例も少なくありません。
 
 現在はIT導入補助金が実施されているので、ITツールの導入を検討するのに良いタイミングだと思います。

 

 

従業員満足を高める

 顧客満足の向上を図るためには、従業員満足を高める必要があります。繁盛している飲食店を見ると、現場の人間関係が良好で、働いていて楽しい職場であることが共通点です。もちろん、従業員のモチベーションも高いと感じます。自身の成長を実感できる仕掛けがある飲食店も、従業員の満足度は高い傾向にあります。新人が入社したら自店で食べ放題研修を実施するなど簡単にできる取り組みから実行し、従業員が楽しく、気持ち良く、安心して働ける環境をつくることが大切です。
 
 人手不足が続く中で人材を確保していくためには、会社の将来性や働きやすさを伝える採用ホームページの拡充に加え、多様な働き方を認める制度的な改革なども必要になってきます。総合力を高め、人手不足であることを前提に価値を提供できるビジネスモデルを再構築していくことが、これからの繁盛する飲食店づくりのポイントです。

 


《繁盛する飲食店づくりのポイント》

 

①価格以上の価値を分かりやすく提供する

中小も大手も価値で勝負する時代になった。素材、製法、独自性という3つの視点から店舗のこだわりを見える化することが、顧客に伝えるべき価値を発見することにつながる。

 

②ITで自動化できるところはITを活用する

人手不足の時代に利益を確保していくためには「ツールでできることはツールでやる。ITで自動化できるところはITを活用する」ことが基本になる。業態や自店の課題に応じてうまく活用したい。

 

③従業員満足に気を配る

顧客満足の向上を図るためには、従業員満足を高める必要がある。自身の成長を実感できる仕掛けを工夫したり、多様な働き方を認めたりするなど、従業員が楽しく、気持ち良く、安心して働ける環境をつくることが大切だ。

 

 

 


笠岡はじめ氏(かさおか・はじめ)

飲食店繁盛会 社長

フレンチレストランのギャルソンやITベンチャー企業勤務などを経て、2006 年に飲食店繁盛会を法人化、社長に就任。年間500 件以上の飲食店経営者の悩みや相談に応えるとともに、改善事例やノウハウをデータベース化して全国の飲食店経営をサポートしている。業界誌での執筆や講演、著書も多い。

 

 

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