「オムニチャネル・リテイリングへの進化を急げ」  ~店舗から全ての顧客接点へ~

2012.9.06

野村総合研究所
主席コンサルタント

藤野 直明

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 行政(経済産業省、財務省、国土交通省、総務省他)へのシンクタンク業務(政策研究等)に加え、幅広く多数の民間企業のコンサルテーションを担当。企業レベルはもとより、業界間レベルでのSCM(サプライチェーン・マネジメント)改革コンサルテーションなど、幅広い分野でのSCM改革コンサルティング業務に従事。
 公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会 フェロー
 東京工業大学MOT サプライチェーン戦略スクール 講師 シニアフェロー
 経済同友会 2011年度 ものことづくり委員会/産業懇談会 講師
「サプライチェーン経営入門」(日経文庫)
「サプライチェーン理論と戦略」(ダイヤモンドハーバードビジネス)
「サプライチェーン・マネジメント」(共著、朝倉書店)

顧客を取り巻くIT環境の変化

 インターネットはもとより、スマートフォン、そしてTwitter(ツイッター)、Face book(フェイスブック)などのSNSが消費者の購買行動に、大きな影響を与え始めている。

 

 昨年の調査であるが、米国では、10代後半から40代のスマートフォン保有率がすでに40%以上に上っている。また、SNSの利用率は、20代で85%以上、また高齢層の利用率も上昇している。スマートフォンやSNSの利用は、必ずしも若い世代だけの話ではないのである。日本でも携帯電話の新規機種のかなりの割合は既にスマートフォンである。

 

IT環境の変化が購買行動へ与えるインパクト ~ 多様な顧客接点 ~

 この結果、顧客は例えば、メールマガジンで商品を知り、スマートフォンで商品スペックを確認、Twitterの口コミを参照したのち、店頭で実物のサイズや色を確かめ、自宅のパソコンからネットで注文し、翌日に店頭で受け取るというように、購買に至るまでの多様なプロセスにおいて小売業との多様な接点(タッチポイント)を自由に使いこなすようになってきている。

 

 統計としてわかる範囲では、主に服飾の分野ではあるが、購入者全体に対し、「ネットで探し、実店舗で購入」(34%)、「ネットで探し、実店舗で確認後、ネットで購入」(21%)「実店舗で探し、ネットで購入」(9%)「実店舗で探し、ネットで確認、店頭で購入」(9%)など、商品探索、確認、購買という一連の購買行動において、ネットと実店舗の双方を効果的に組み合わせて活用している割合が、併せて73%にも上っているという分析結果も報告されている。逆に、探索から購入までネットのみ(14%)、探索から購入まで店舗のみ(11%)の割合は少ない。 ※1

 

多様な顧客接点(タッチポイント)を利用する顧客は、重要な顧客である

 欧米や日本での各種調査を総合すると、「多様な顧客接点(タッチポイント)を利用する顧客は、①商品の検討に多くの時間をかけ、②購買確率(チャネル接触件数に対する購買件数の割合)が高く、③購買額金額が大きい」ということが、わかってきた。

 

 これらの事実は、店頭とカタログ、各種オンラインが非常に密接に結びつき、販促における相乗効果が大きいこと、多様な顧客接点(タッチポイント)を利用する顧客は比較的ロイヤルティも高く継続的な顧客になりうる可能性が高い顧客だということを示している。

 成熟市場の中での生き残りをかけた戦いをしている小売業にとって、競合他社に当該顧客層を奪われた時の損失は甚大である。

多様な顧客接点を利用する顧客は、最も重要な顧客であるといえるのではないだろうか。